公務員が株式投資をすることに副業制限は及びません。
預貯金や国債購入等と同じく、資産運用・利殖の一手段として扱われます。
ばれたからといって、制度的な問題はほとんどありません。


公務員の株式投資はほぼ問題ない

確かに、周囲や上司に株式投資をしていることがばれると、後々面倒なことが起こることもあります。
この点については、株式投資について周囲に話さない、職場に持ち込まない、源泉徴収ありの特定口座を使って確定申告をしない等、対策をすることで、ばれないようにすることができます。

制度的な問題はほぼなく、ばれないようにすることで事実上の問題も回避できます。
だからといって株式投資を制限なく、自由にできるわけではありません。

公務員の株式投資に関する制限

公務員が株式投資をすることには、いくつかの制限がかかることがいくつかあります。
これらの制限に違反していることがばれれば、懲戒処分の対象となることがあります。

職務専念義務

職務専念義務は国家公務員法第101条、地方公務員法第35条に規定されています。
これに反すると懲戒処分の対象になります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。
勤務中に株式取引を行ったり値動きを確認したり、勤務時間外の行動であっても勤務に支障を及ぼすことがあったりすると、職務専念義務に違反になり懲戒処分の対象となります。

職務専念義務違反が、株式投資に関連した懲戒処分の理由となっている事例が極めて多くなっています。

株取引等報告書の提出

本省審議官級以上の職員は、毎年の株取引等についての株取引等報告書を、各省各庁の長等に提出しなければなりません(国家公務員倫理法第7条)。
これは直接的には株式投資を制限するものではありませんし、違反しても罰則規定はありません。
しかし、違反すれば懲戒処分の対象にはなることから、いくらかの委縮効果はあるでしょう。
もっとも、提出義務があるのは本省審議官級以上の職員ですから、大多数には関係のないものです。

営利企業等の役員等の兼務制限

株式投資の法人化は公務員の副業制限にかかることになります。
法人の役員になると、これは営利企業等の役員等の兼務にあたり、国家公務員法第103条、地方公務員法第38条に違反します。
役員等の兼務には人事院の承認または任命権者の許可が必要ですが、国及びほとんどの地方自治体では承認または許可を得ることはできません。
承認または許可を得ずに役員等を兼務していることがばれれば懲戒処分の対象になります。

他法律に違反する場合

このほか、国家公務員法及び地方公務員法以外の法律に違反した場合にも問題になります。
違反した法律に罰則がある場合であっても、これとは別に懲戒処分を受けることがあります。
この場合には、懲戒処分を受けることが社会的制裁とみなされ、刑罰が軽くなることもあります。

インサイダー取引

インサイダー取引(内部者取引)は、未公開情報を不法に共有・利用して証券市場取引を行い、情報を持たない投資家に損害を与える犯罪的行為です。

インサイダー取引規制の要件は(1)会社関係者(元会社関係者を含む。)が、(2)上場会社等の業務等に関する重要事実を、(3)その者の職務等に関し知りながら、(4)当該重要事実が公表される前に、(5)当該上場会社等の株券等の売買等を行うことです(金融商品商品取引法第166条)。

(1)会社関係者には、上場会社等に対して法令に基づく権限を有する者が含まれます。
(3)その者の職務等に関し知った者には、当該権限の行使に関し許認可権限を有する公務員等が含まれます。

公務の職場には上場会社等の業務等に関する重要事実(上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの)があり、公務員が行う株取引がインサイダー取引になる場合もあります。

ちなみに、インサイダー取引に対する制裁は重く、公務員法のそれの比ではありません。

インサイダー取引を行った行為者に科される罰

  • 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はこれらの併科(金融商品取引法第197条の2)
  • 犯罪行為により得た財産について必要的没収・追徴(金融商品取引法第198条の2)
  • 違反者の経済的利得相当額の課徴金(金融商品取引法第175条)

(なお、公務では考えられませんが、法人の代表者や従業員等が法人の業務等としてインサイダー取引を行った場合、法人も5億円以下の罰金(金融商品取引法第207条1項2号) が課されます(両罰規定)。)

未公開株の取得

公務の中で、権限の行使の対象となる会社の未公開株を取得すると、たとえ対価を支払っていたとしても贈与に当たるおそれがあります。
この場合、国家公務員倫理法第3条第3項に違反し、懲戒処分の対象になります。