公務員が株式を保有をしても、原則的には問題ありません。
株式の保有は資産運用・利殖の手段ですから、公務員であっても副業制限にはかかりません。
ただ、公務員の株式保有にあたっては注意することがあります。


株式保有に関する公務員の義務

本省審議官級以上の国家公務員の報告

本省審議官級以上の職員は、毎年の株取引等についての株取引等報告書を、各省各庁の長等に提出しなければなりません。
これは株式の保有を制限するものではありません。

それに提出義務があるのは本省審議官級以上の職員、つまり次官級、局長級や局次長級ですから、大多数の公務員には関係ありません。

国家公務員倫理法
(株取引等の報告)
第七条 本省審議官級以上の職員は、前年において行った株券等(株券、新株予約権証券又は新株予約権付社債券をいい、株券、新株予約権証券又は新株予約権付社債券が発行されていない場合にあっては、これらが発行されていたとすればこれらに表示されるべき権利をいう。以下この項において同じ。)の取得又は譲渡(本省審議官級以上の職員である間に行ったものに限る。以下「株取引等」という。)について、当該株取引等に係る株券等の種類、銘柄、数及び対価の額並びに当該株取引等の年月日を記載した株取引等報告書を、毎年、三月一日から同月三十一日までの間に、各省各庁の長等又はその委任を受けた者に提出しなければならない。
2 各省各庁の長等又はその委任を受けた者は、前項の規定により株取引等報告書の提出を受けたときは、当該株取引等報告書の写しを国家公務員倫理審査会に送付しなければならない。

国家公務員倫理法

企業経営に参加し得る国家公務員の報告

国家公務員が株式会社の発行済株式の総数の1/3超または特例有限会社の発行済株式の1/4超の株式を保有する場合で、その会社がその国家公務員が在職する機関と「密接な関係」にあるときは、その国家公務員は所轄庁の長等を経由して、人事院に報告しなければなりません。

在職する機関とその会社とが次のいずれかにあたる場合が「密接な関係」です。

  1. 法令に基づく行政上の権限の対象
  2. 過去5年度以内の年間契約総額が二千万円以上
  3. 行政指導の対象

報告があった所轄庁の長等は、職務遂行上適当でないかどうかの見解や配置換等の有無等を記載した書類を報告書に添付して人事院に送付します。

株式会社の1/3超の株式や特例有限会社の1/4超の株式を保有している国家公務員もいないわけではありませんが、例外的な存在でしょう。
その公務員が密接な関係にある職場に在籍する可能性は大きくはありません。

資産家公務員は人事院に株式所有状況を報告して、株式保有か配置換等かを選んでもらいましょう。
大多数の労働者公務員にとっては知らなくてもいいことかもしれません。

仮にこうした株式を保有する公務員が密接な関係にある職場に在籍していても、必ずしも株式を手放す必要はありません。
株式保有を続けるか、配置換等になるか、いずれかを選べばいいのです。

ただ、制度趣旨を考えると、労働者公務員であっても密接な関係にある会社の株式は、保有しないほうがいいかもしれません。

人事院規則14―21(株式所有により営利企業の経営に参加し得る地位にある職員の報告等)
第二条 職員(非常勤職員(法第八十一条の五第一項に規定する短時間勤務の官職を占める職員を除く。)及び臨時的職員を除く。以下同じ。)が株式会社の発行済株式の総数の三分の一を超える株式又は会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)第三条第二項に規定する特例有限会社の発行済株式の四分の一を超える株式を有する場合で、当該株式会社又は当該特例有限会社(以下「会社」という。)が当該職員の在職する国の機関(会計検査院、内閣、人事院、内閣府、各省並びに宮内庁及び各外局をいう。)又は行政執行法人(以下「在職機関」という。)と密接な関係にあるとき(以下「株式所有により営利企業の経営に参加し得る地位にある場合」という。)は、当該職員は、株式所有状況報告書により、所轄庁の長又は行政執行法人の長(以下「所轄庁の長等」という。)を経由して、人事院に報告しなければならない。
2 前項の「密接な関係」とは、次のいずれかに該当する場合の会社と在職機関との間の関係をいう。
一 会社が在職機関の有する法令に基づく行政上の権限(単に報告を受ける等の権限を除く。)の対象とされている場合
二 株式所有状況報告書の作成の日から五年さかのぼった日の属する年度以降の年度(その日の属する年度にあっては、その日以降の期間に限る。)のうちのいずれかの年度において会社と在職機関との間で締結した契約の総額が二千万円以上である場合
三 会社が在職機関による行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第六号に掲げる行政指導の対象とされている場合
3 略
4 所轄庁の長等は、前項の規定により株式所有状況報告書が提出された場合には、次条第一項の基準に照らし職員の職務遂行上適当でないかどうかの見解、配置換その他の方法による職員の職務内容の変更の有無及びその他の参考となる事項を記載した書類を添付して遅滞なくこれを人事院に送付するものとする。

人事院規則14―21(株式所有により営利企業の経営に参加し得る地位にある職員の報告等)

公務員が株式保有をしても大丈夫

公務員が株式保有しても原則問題ありません。
上述のとおり一部の公務員には義務が課されますが、ほとんどの公務員にはそれもありません。

もちろん、法令違反や服務義務に違反するようなことがあれば処罰や懲戒処分の対象となることはあります。

ただ、公務員だからといって株式保有ができなくなることはありません。

株式保有が悩みのタネになることも

公務員の株式保有が制度的に問題となることはほとんどありません。
ただ、労働者公務員であっても、株式保有が仕事を続けていく上での悩みのタネになることもあります。

同僚の態度が変化する

株式の保有が周囲にばれると面倒なこともあります。
嫉妬されて仕事がしにくくなることがあります。
仕事の情報を回してもらえなかったり、素直に協議印を押してもらえなかったり、些末な抵抗が増えることがあります。

それとは反対に、やたらと飲みに誘ってくる職員が出てくることもあります。

上司に売却をすすめられる

時には指導と称して上司が株式の処分をすすめてくることもあります。
嘘みたいな話ですが、株式保有をやめさせようとした上司が実際にいました。
株は危ない、と思っている“まじめ”な上司もいるようです。

公務員の株式保有はほぼ問題なし

公務員が株式を保有しても問題はほぼありません。
ごく一部の国家公務員には報告義務が課されること等がありますが、ほとんどの公務員にはそれもありません。
これらの公務員であっても株式保有自体は制限されていません。