公務員にも、ハンドメイドを趣味にされている方がたくさんいらっしゃいます。
せっかく作ったご自身の作品、どれだけ価値があるか確かめてみたくなるのは当然です。
ただ、作品をメルカリ等フリマアプリで販売をしようとするときには注意が必要です。
目次
公務員のハンドメイド作品を販売して懲戒処分
ハンドメイドを趣味にされている公務員は少なくありません。
中には玄人はだし、ほとんどハンドメイド作家といってもいい方がいらっしゃいます。
ただ、公務員がハンドメイド作品をメルカリ等フリマアプリで販売しようとするときには注意が必要です。
作品のメルカリ販売で懲戒処分
作品販売に関する注目すべき事例がありました。
令和元年12月、自作エアガンをメルカリ等フリマアプリで販売していた主査が、減給1/10(3カ月)の懲戒処分を受けています。
副業で自作エアガン販売 主査を処分 うきは久留米環境施設組合
福岡県うきは市と同県久留米市でつくる「うきは久留米環境施設組合」(組合長=高木典雄うきは市長)は13日、副業などを禁じた地方公務員法に違反したとして、男性主査(45)を同日付で減給3カ月(10分の1)の懲戒処分にしたと発表した。上司の事務局長(62)も管理監督不十分で文書訓告とした。
同組合によると、主査は2017年1月から19年11月にかけて、部品や中古品を購入して製作したエアガンなど169点をインターネットのフリーマーケットアプリで販売し、約260万円を売り上げたという。勤務中にもスマートフォンで取引を行っていた。取引内容を同僚に話して発覚した。主査は「副業がいけないという認識がなかった」と事実を認めている。
高木組合長は「市民に心からおわびするとともに、公務員としての意識を高めるため職員研修を行いたい」とコメントした。同組合は、うきは市と久留米市田主丸町のごみやし尿の共同処理を行っている。(糸山信)
西日本新聞 令和元年12月14日
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/568099/
自作エアガンなど169台販売 男性主査を懲戒処分 うきは久留米環境施設組合 /福岡
フリマサイトで260万円収入
毎日新聞 令和2年12月14日 地方版(有料記事一部抜粋) https://mainichi.jp/articles/20191214/ddl/k40/040/369000c
うきは久留米環境施設組合(うきは市吉井町)は13日、フリーマーケット(フリマ)サイトで自作したライフルや拳銃型のエアソフトガン169台を販売し収入約260万円を副業で得たとして、男性主査(45)を減給10分の1、3カ月の懲戒処分にした。
ハンドメイドの作品と自作エアガンを一緒にしないでほしい、お気持ちはわからなくもありません。
ただ、この事例のポイントは、フリマアプリを使っての販売が「副業などを禁じた地方公務員法に違反した」として処分されていることです。
任命権者の許可を得ないで自ら営利企業を営んだことが問題になっているのです(地方公務員法第38条)。
公務員の作品販売に関する制限
公務員は人事院の承認または任命権者の許可を得なければ、自ら営利企業を営むことができません(国家公務員法第103条、地方公務員法第38条)。
この承認または許可には基準があります(人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について、各自治体の職員の兼業許可等に関する事務取扱規程の運用について)。
作品の販売が自ら営利企業を営むことに該当する場合には、この基準を満たすことができず、承認または許可を得ることはできません。
作者が芸術性のある作品と考えていようと関係ありません。
自ら営利企業を営むことの意味
「自ら」の意味
名義が他人であっても本人がしていると客観的に判断されれば、自ら営利企業を営んでいるものとみなされます。
たとえ家族名義(夫名義、妻名義等)であっても、認められるわけではありません。
「営利企業を営む」の意味
営利企業を営むこと、つまり事業となるためには,通常、反復継続性と事業的規模の両方を満たす必要があると考えられています。
反復継続性
反復継続性とは、行為が反復継続的に遂行されていることを意味し、必ずしも反復継続した行為は必要なく、反復継続する意思だけで足りるとされています。
事業的規模
事業的規模とは、社会通念上「事業の遂行」とみることができる程度のものとされ、具体的には事業・業態等を考慮して判断されます。
判断基準は必ずしも明確ではありませんが、売上や資産・負債等が大きければ事業的規模にあると判断されやすくなるでしょう。
なお、不特定多数を相手にするか否かや営利目的の有無等は直接的には判断基準にはなっていません。
公務員が作家になろうとすると懲戒処分
結局のところ、公務員が反復継続の意思をもって作品を販売をしたと判断されれば、自ら営利企業を営んだことになります。
人事院の承認または任命権者の許可を得ずに自ら営利企業を営むことは、国家公務員法第103条・地方公務員法第38条違反で、ばれれば懲戒処分の対象となります。
公務員が、副業としてハンドメイド作家になろうとすると 、懲戒処分となるおそれがあるのです。
芸術性は判断の対象外
芸術性については基本的には関係ありません。
作者にとっての芸術性と一般的な認識が必ずしも一致するとは限らないからです。
少なくとも素人のハンドメイド作品が芸術性が高いとして例外になる可能性は極めて低いでしょう。
懲戒処分の事例からわかること
上記令和元年12月の事例では、任命権者の許可を得ずに自ら営利企業を営んだものとされ、懲戒処分を受けています。
報道からはわかりませんが、「副業がいけないという認識がなかった」としている以上、自己名義でしていたものと考えられます。
エアガン製作のために部品や中古品を購入していると考えられますから、反復継続の意思が認められます。
事業的規模の判断は基準が必ずしも明確ではありませんが、本事例では該当するとされています。
つまり、約3年間に169回の取引、約260万円の売上、1カ月当たり4.8回の取引で1回当たり約15,000円の売上は、事業的規模とみなされるということです。
国や他の自治体に照会をしたうえで処分しているでしょうから、国や他の自治体でも同様の判断になると考えらえます。
公務員には作品の販売は向いていない
利益は関係ない、自分の作品の価値を知りたいだけ、その気持ちはわかります。
作り手として当然の思いです。
ただ、公務員が作品をメルカリ等フリマアプリで販売してしまうと、懲戒処分となるおそれがあります。
しかも、1カ月当たり約5回、1回当たり15,000円の販売で、事業的規模と判断されてしまいます。
このように小規模なものであっても事業的規模とされ、懲戒処分の対象となります。
もちろん、事前に人事院の承認または任命権者の許可を得ればいいのですが、承認または許可を得ることは素人ハンドメイド作家には難しいことです。
公務員が作品をメルカリ等フリマアプリで販売をしようとすれば、ばれたら懲戒処分になる、その覚悟が必要です。
公務員には向いていないといわざるを得ません。