副業をしている公務員は確定申告をおろそかにしてはいけません。
一定以上の利益が出た年に申告することはもちろん、内容についても慎重に検討しなければなりません。
具体的に、公務員の確定申告はどういったものになるでしょうか。
目次
公務員の副業の税金と確定申告
公務員の副業にかかる税金は、主として所得税(及び復興特別消費税)と住民税です。
不動産投資では、これらのほか固定資産税・都市計画税、取得時に不動産取得税や印紙税等がかかります。
これらのうち、確定申告にかかるものは所得税(及び復興特別消費税)と住民税です。
確定申告が必要な公務員
副業をしている公務員で確定申告する必要があるのは次の方です。
確定申告の義務のある方
- 本業以外からの給与所得があった方
- 年間を通して給与所得以外に20万円を超える所得額があった方
- 不動産投資をしていて投資物件を譲渡した方
ただし、公務員の場合には年末調整がきちんと行われているはずなので、本業以外から給与所得がある場合でも、それが年20万円以下であれば確定申告は不要です。
それと、副業ではありませんが、給与所得が年2,000万円を超える方は確定申告が必要です。
もっとも公務員ではごく少数ですが。
なお、確定申告の要否の判断は所得額でします。
所得額は収入金額から必要経費等を控除したものです。
所得額=収入金額-必要経費等
また、株式投資で「源泉徴収ありの特定口座」を利用している方は、すでに源泉徴収されているので年20万円を超える所得があっても確定申告する必要はありません。
確定申告をするとメリットのある方
- 年間を通して株式投資、FX及び不動産投資で損失がある方
株式投資やFXでは申告することで損失の繰越控除をすることができます。
不動産投資では損失を給与所得等と損益通算して所得税額を減らすことができます(いわゆる不動産投資の節税効果)。
なお、仮想通貨(暗号資産)では、損失について損益通算や繰越控除をすることはできません。
確定申告書の提出期間
令和3年(2021年)分の確定申告書の提出期間は
令和4年(2022年)2月16日(水)から同年3月15日(火)まで
です。
公務員は絶対に期限内申告を
締切に遅れると期限後申告として取り扱われます。
期限後申告になると、原則として申告等によって納める税金のほかに無申告加算税や延滞税が課されることになります。
無申告は信用失墜行為に該当することもあり、場合によっては懲戒処分の対象となり得る行為です。
税務調査によって修正申告等をすることになると、事態はさらに悪くなります。
過年度分の税金はもちろん、無申告加算税や延滞税、重加算税まで科されることにもなります。
しかも無申告は「逋脱犯(ほだつはん)」という罪になります。
申告しなかった金額によっては重い刑事責任を問われることもあります。
申告が遅れること、申告しないことにいいことはありません。
公務員は必ず期間内に申告してください。
確定申告書の作成
詳細については国税庁のHP等を参照してください。
また、具体的な税額の計算については税理士さんにご相談ください。
特に資産運用や投資の課税関係については、高度な税務知識や実情に合わせた判断が必要なため、税理士さんの力を借りたほうが結果的に得になります。
確定申告に必要な書類等
自分で用意する書類等
給与所得に関する資料
- 源泉徴収票
副業がネットビジネス、物販ビジネス等の方
- 財務諸表や補助簿等副業にかかる帳簿等
副業が投資や資産運用の方
- 株式投資、FX、仮想通貨等:年間取引報告書
- 不動産投資:不動産投資にかかる帳簿等
なお、平成26年1月からは、不動産所得を生ずべき業務を行う人はすべて、記帳と帳簿等の保存が必要になっています。
不動産所得の申告には、知識がなくても複式簿記帳簿が作成できるやよいの青色申告オンラインが便利です。
税務署等から入手する書類等
確定申告書
副業が給与所得(アルバイト等)、ネットビジネス、物販ビジネス、仮想通貨等(総合課税)の方
- 確定申告書様式A
確定申告書様式Aを使うのは、次の条件を満たす方です。
申告する所得が給与所得、先物取引等以外の雑所得、配当所得及び一時所得のみで予定納税がない方
なお、仮想通貨の利益は「雑所得」に区分され、総合課税されるので、確定申告書様式Aを使います。
ちなみに、公務員で給与が年2,000万円を超える方、医療費控除を受ける方、住宅ローン控除を受ける方やふるさと納税をした方等、副業等をしていなければ確定申告書様式Aを使います。
副業が株式投資、FX、不動産投資等(分離課税)の方
- 確定申告書様式B
- 申告書(分離課税用)
- 申告書(損失申告用)(損失を繰り越したい方)
株式や不動産の譲渡所得ある方や先物取引の雑所得がある方は、分離課税となるので、確定申告書様式Bと申告書(分離課税用)を使います。
また、損失の繰越控除を受けたい方は、加えて申告書(損失申告用)も使うことになります。
その他明細書等
- 株式投資:株式等にかかる譲渡所得等の金額の計算明細書
- FX:先物取引に係る雑所得等の金額明細書
- 不動産投資:収支内訳書または青色申告決算書
それぞれの投資に対応する明細書等に必要事項を記載して申告書に添付します。
確定申告書の作成
副業が給与所得(アルバイト等)の方
1 確定申告書様式A 第二表
住所・氏名等必要事項を記入、給与所得に関する事項を源泉徴収票から転記します。
給与の支払元ごとに所得の種類や名称等を記入、源泉徴収票から「〇所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収額)」の「収入金額」及び「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収額」を転記します。
職場に副業を隠しておきたい方は、住民税に関する事項の「給与・公的年金に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」で「自分で納付」に〇をつけてください。
住民税が特別徴収(源泉徴収)ではなく、普通徴収になります。
職場を通さず、区市町村から送られてきた納付書を使って自分で納付することになります。
2 確定申告書様式A 第一表
収入金額等の「給与」アに給与額の合計を、所得金額「給与」①に給与所得の合計を記入します。
その他給与所得等にかかる収入金額、所得金額及び所得から差し引かれる金額を年末調整済みの源泉徴収票等から転記し、「課税される所得金額」21を1,000円未満切り捨てで計算します。
税金の計算
「課税される金額」21と累進税率とから所得税額を計算し、さらに所得税額に2.1%を乗じて「復興特別所得税額」35を計算、これらを合計して所得税及び復興特別所得税の額36を計算します。
これから「源泉徴収税額」38を控除した金額が「収める税金」39になります。
副業がネットビジネス、物販ビジネス等(雑所得)の方
1 確定申告書様式A 第二表
住所・氏名等必要事項を記入、給与所得に関する事項を源泉徴収票から転記します。
副業にかかる帳簿等から「〇雑所得(公的年金等以外)・配当所得・一時所得に関する事項」の「収入金額」及び「必要経費等」を転記します。
職場に副業をしていることを隠しておきたい方は、住民税に関する事項の「給与・公的年金に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」で「自分で納付」に〇をつけてください。
住民税が特別徴収(源泉徴収)ではなく、普通徴収になります。
職場を通さず、区市町村から送られてきた納付書を使って自分で納付することになります。
2 確定申告書様式A 第一表
源泉徴収票から収入金額等の「給与」アに給与額を、所得金額「給与」①に給与所得額を転記します。
副業にかかる帳簿等から、収入金額等の雑・「その他」ウに収入金額を、所得金額「雑」②に所得金額を転記します。
その他給与所得等にかかる収入金額、所得金額及び所得から差し引かれる金額を転記し、「課税される所得金額」21を1,000円未満切り捨てで計算します。
税金の計算
「課税される金額」21と累進税率とから所得税額を計算し、さらに所得税額に2.1%を乗じて「復興特別所得税額」35を計算、これらを合計して所得税及び復興特別所得税の額36を計算します。
これから「源泉徴収税額」38を控除した金額が「収める税金」39になります。
副業が株式投資、FX、不動産投資等(分離課税)の方
投資については、特に専門的知識や最新の情報に従った処理が必要になることがあります。
詳細については国税庁のHP等を参照してください。
また、具体的な税額の計算については税理士さんにご相談ください。
確定申告では住民税にも注意
確定申告で気をつけたいのは住民税の徴収方法の選択です。
職場に投資や資産運用をしていることを隠しておきたい方は、職場で源泉徴収される特別徴収ではなく、区市町村から送られてきた納付書を使って自分で納付する普通徴収を選択してください。
確定申告書の第二表の住民税・事業税に関する事項の「給与・公的年金に係る所得以外の所得にかかる住民税の徴収方法の選択」で「自分で納付」に〇をつけると、住民税を普通徴収にできます。
普通徴収を選択する理由
住民税を特別徴収にすれば給料天引きで納税できるので、普通徴収よりも負担が少なくなります。
しかし、特別徴収では同僚より高額な住民税の通知が職場に届くことになり、投資や資産運用が職場にばれることがあります。
住民税の納付を普通徴収にして住民税関係が職場に伝わらないようにすれば、職場にばれる危険を減らすことができます。
副業を隠したほうがいい場合
職場に副業をしていることを隠したほうがいい場合は次のとおりです。
承認または許可を得ていない場合
承認または許可を得られない副業をしている方は、副業をしていることを隠さざるを得ません。
不動産投資が事業的規模(投資物件が5棟以上または10室以上等)の場合には、人事院の承認または任命権者の許可が必要ですが、この承認または許可をを得ずに事業的規模の不動産投資をしている方も、隠さなければなりません。
これら承認または許可のない副業をしている方は、住民税を普通徴収にすることが必要ですし、さらに、職場にばれないように普段の言動等にも注意が必要です。
職場の面倒事を避けたい場合
公務員が投資や資産運用をしていても、制度的な問題となることは多くありません。
しかし、投資や資産運用をしていることがばれると、周囲に嫉妬される等仕事や投資等をを続ける上での障害になることもあります。
こうした面倒事を避けるために、隠したほうがいい場合があります