公務員系ユーチューバー(YouTuber)としてすごい方がいらっしゃいます。
すねげスタイルさんです。

ただ、投稿がネタではなく、しかも自分の部下だとしたら大いに心配です。


収益化を公言する公務員系ユーチューバー

すねげスタイルさんは現役市役所職員さんだそうです。
(https://www.youtube.com/channel/UCFZsim9wns18MMMiiVdgbvg)

ゲーム実況が多いようですが、顔出し動画で給与明細書を公開したり、髪を緑に染めたりと、大胆な公務員系ユーチューバーさんです。

大胆ではありますが、公務員として問題視されるようなものは多くはありません。

給料は給料表をから算出できますから、役所としてはほとんど問題ありません。
また、髪を染めることも問題にならないでしょう。

鮮やかに髪を染めた職員が、窓口に立つことくらい結構あります。
地域によるかもしれませんが、髪の色で怒る住民はそんなにいらっしゃいません。

しかし、一点、ユーチューブ(YouTube)から広告収入を得ようとすることは別次元の問題です。
これは懲戒処分もあり得る非常に危険な行為です。

公務員の副業制限についての誤解

すねげスタイルさんも公務員の副業制限について調べられているようで、それを動画で公開されています。

動画の中で、地方公務員法第38条について詳細な解説をしておられます。

ただ、大事な部分で読み方を間違ってしまっています。

地方公務員法第38条(営利企業への従事等の制限)

 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。

地方公務員法

地方公務員法第38条第1項は前段と後段に分けられます。

前段は、営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員等を兼ねること、または自ら営利企業を営むことを制限しています。
後段は、報酬を得て事業・事務に従事することを制限しています。

簡単にいうと、前段では営利企業を経営することを、後段では営利企業に雇用されることを制限しています。
なお、これらの制限は任命権者の許可を受けることで解除されます。

ユーチューバーは企業を営んでいます

日常会話で「企業」といえば、株式会社等の法人のことを指すことが多いでしょう。

しかし、法律用語でいう「企業」は、継続的意図を持って経済活動を行う独立の経済主体のことです。
個人事業であっても「企業」になります。

ユーチューバーは個人事業主

ユーチューバーは、ユーチューブ等とは雇用関係になく、自己の計算において独立して事業を行っていますから、個人事業主ということになります。

ただし、収益化することなく、ユーチューブ等から広告収入を得る意思がないことが明らかであれば、営利目的はないものと判断されるでしょう。

公務員系ユーチューバーは地方公務員法違反のおそれ

以上から、公務員が個人事業主としてユーチューブ等から広告収入を得ようとすることは、「自ら営利企業を営」むことであり、地方公務員法第38条第1項前段で制限される行為にあたります。

ここで、広告収入を得ようとする、としたのは、実際に広告収入を得ていなくても、得ようとする意思があれば営利目的と認められるからです。

公務員系ユーチューバーの懲戒処分は

懲戒処分の量定

ユーチューブ等から広告収入を得ていることがばれた場合、懲戒処分の対象となります(地方公務員法第29条)。

すねげスタイルさんがお勤めの自治体がわかりませんので、人事院の「懲戒処分の指針について」を参考に処分の量定を調べます。
国公準拠、お勤めの自治体の「懲戒処分の指針について」も引き写しでしょうから、大きな違いはないと考えられます。

懲戒処分の標準例

懲戒処分の標準例として、自ら営利企業を営むことの承認を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする、としています。
また、個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得る、ともしています。

懲戒処分が重くなる場合

懲戒処分が重くなる場合として次のものを挙げています。
非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき
非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき
処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき

懲戒処分を軽くなる場合

懲戒処分が軽くなる場合として次のものを挙げています。
職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たとき
非違行為を行うに至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると認められるとき

減給または戒告が標準

したがって、公務員がアフィリエイトをしていた場合の標準的な懲戒処分は減給または戒告になります。
それに懲戒権者が個別の事情を考慮して処分の軽重を決めることになります。

発覚前に自主的にユーチューバーであることを申し出れば、より軽い懲戒処分になるかもしれません。

一刻も早く収益化を止めないと

したがって、公務員はユーチューブの収益化が通ると、任命権者の許可がない限り地方公務員法第38条第1項違反として懲戒処分の対象となります。

すねげスタイルさんが自分の部下だったら、間違いなく収益化は止めさせます。
この瞬間に申請を取り下げさせます。

通報があってからでは遅い

すねげスタイルさんの場合、顔出しで動画を上げていますから、本当に市役所職員であればすぐに身バレするでしょう。
見つけたのが味方になってくれる人であればいいのですが、そうでないと大変なことになります。

特に大変なのが公益通報と首長・議員への通報です。

公益通報制度

公益通報制度に基づき、自治体の事務・事業にかかる職員の行為について法令違反があると思われる場合に、住民等は自治体に通報できます。

通報は、確実な情報や実際の体験に基づく個別具体的な事実についてしかできないことになっています。

通報があった自治体は、通報内容に関して調査することになります。

通報内容によっては、通報を受理しないことや調査をしないこともあります。
しかし、すねげスタイルさんの場合、顔出し動画で収益化すると発言されていますから、確実な情報にあたり、証拠もあるので、受理され、調査されることになると考えられます。

この調査は簡単にはすみません。
なぜなら、希望する通知者には調査結果を通知することになっているからです。
少なくとも形だけの聴き取り調査で終わるものではありません。

首長・議員への通報

普通はあまりないことなのですが、直接首長や議員に通報される方もいらっしゃいます。

場合によってはひどく大変なことになってしまいます。

公務員系ユーチューバーはネタであってほしい

正直なところ、すねげスタイルさんのネタであってほしいと思っています。

事実だとすると、とても大変な事態が想定されるからです。

収益化が事実であれば、証拠が残っているのですから、言い逃れはできないでしょう。
報道機関も関心を示すかもしれませんし、話が大きくなれば「公務内外に及ぼす影響が特に大きい」と判断されかねません。

懲戒免職にはならないでしょうが、懲戒処分を受けた職員のその後の公務員生活は厳しいものです。

昇給は遅れますし、昇進も難しくなるでしょう。
問題職員として閑職で飼い殺しになるかもしれませんし、逆に激務で酷使されるかもしれません。

平穏な公務員生活は失われてしまいます。

それに、「当分の間」はユーチューブに投稿することもできなくなるでしょう。
もし、投稿していることがばれれば、より重い懲戒処分を受けることもなるでしょう。

確かに解釈の正当性を当局と争うのも一つの方法だとは思います。
しかし、懲戒処分だけを考えれば勝ち目は少ないですし、失うものが多く得るものの少ない戦いになるでしょう。

公務員系ユーチューバーというのはネタであってほしいです。
もし本当だとすれば、賢明な判断をしてほしいと思っています。

公務員を辞めるにしても、何事もなく辞めるのと懲戒処分が履歴に載ってから辞めるのでは、大きな違いがあるのです。