先日報道された奈良市職員の問題行動に対する批判は大変なものでした。


公務員の問題行動はニュースバリューが高い

駅のホームから向かいのホームに飛び移ろうとした男性が線路に落下する、という映像がワイドショーやニュースで繰り返し放送されました。

男性の奇行を記録しているだけなら、それほど注目を浴びることはなかったかもしれません
しかし、その男性が奈良市職員だったことからニュースバリューが上がり、全国放送で繰り返し放送されることにまでなりました。

マスコミだけでなく、多くの方が本人を特定しようと調査を進めているようです。

全国ニュースになるような話?

もちろん、彼の行動は正当化されるものではありませんし、弁護する気も同情する気もありません。

ただ、あっていいことではないけれど、見たことくらいはある行動だったのではないでしょうか。
実際、私も昔私鉄の方の新宿駅で、ホームに飛び移った若者を見たことがあります。

よくあることだから許されるべき、とはいいません。

奈良市職員男性の行為は、鉄道営業法に違反し、場合によっては威力業務妨害罪にあたったかもしれません。
鉄道営業法第37条は鉄道地内にみだりに立ち入る行為を禁止しており、これに違反すると1万円未満の科料に処せられます。
線路に立ち入ったせいで電車が遅延する等、駅員の業務を妨害したことになっていたら、威力業務妨害罪(刑法第234条)として5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられることにもなり得ました。

映像を見る限り、最悪の結果にもつながりかねない、危険な行為でした。
件の男性は大いに反省し、何らかの制裁を受けるべきでしょう。

しかし、全国ニュースで流すような価値のある話ではないでしょう。
世界はもっと関心を持たなければいけない話題で満ちています。

公務員は小さな「汚れ」に気を付ける

奈良市職員の件で、公務員が肝に銘じなければいけないことは、どんな小さな「汚れ」にも気をつけなければいけない、ということです。

彼の行為は違反を含むものでしたが、「悪」といえるほど考えのあるものではありませんでした。
粗暴で考えのない過去の出来事で、人生の汚点のようなものではないでしょうか。

報道によれば、例の動画は、男性が奈良市職員になる前、入庁前に撮影さえたものだったそうです。
彼の友人が閲覧者限定でInstagramで投稿したものが、Twitter等で拡散したらしいのですが、理由は不明とのことです。

だとすれば、彼の行為は職員として組織秩序を乱したものではなく、今回の混乱も彼が直接的に招いたとまではいえないように思われます。
結果として事故につながらず、誰も傷つくことはなかったとも報道されています。

それでも奈良市側は処分を検討しています。

今は公務員になる前の行為であっても、職員自身が直接的に招いたとまではいえないことでも、懲戒処分になるかもしれない時代なのです。

懲戒処分・減給1/10(6カ月)【令和2年2月17日追記】

結局奈良市職員は懲戒処分となってしまいました。

https://www.youtube.com/watch?v=ExY0qr_tufI

ホーム飛び移り動画で市職員減給

奈良市の男性職員が、駅のホームから向かいのホームに飛び移ろうとして線路に落ちる動画がインターネット上に投稿され、拡散した問題で、奈良市はこの職員を減給6か月の懲戒処分にしました。

懲戒処分を受けたのは、奈良市道路建設課の30歳の男性職員です。

奈良市によりますと、この職員は、近鉄奈良駅のホームで、およそ3メートル離れた向かいのホームに飛び移ろうとして線路に転落し、はい上がる様子を動画に撮影していました。
この動画は、写っている電車のデザインなどから、おととし10月までの2年ほどの間に撮影されたとみられていますが、先月18日、インターネット上に投稿され、先月末、削除されるまでに200万回以上再生されました。

NHK NEWS WEB 奈良NEWS WEB 令和2年2月17日(抜粋)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nara/20200217/2050003842.html

入庁前のことであっても許されなかったわけです。

大きく報道されてしまったのですから、奈良市としてもここが落としどころだったのでしょう。

21世紀は衛生的で「汚れ」はあってはいけない

かつては「俺も昔は悪かった」といえば箔が付いたこともあったのでしょう。
しかし、そんな時代は20世紀で終わっています。

21世紀はもっときれいで、透き通っていて、汚れは許されない時代なのです。

過去についた汚れも、仲間が付けた汚れも、あってはいけないのです。

公務員ユーチューバーはどんな汚れも残さないように

公務員ユーチューバーは今回の件は他人事ではありません。

ユーチューバーはいろいろな動画に小さな「汚れ」を残している可能性があります。
それらがいつ問題の原因になるかわかりません。
過去のあらゆることが懲戒処分の原因になり得るのです。

「武勇伝」などもってのほか、どんな小さな汚れも残してはいけません。
透き通るほど真っ白な存在であることが求められています。

昔新宿駅でホームの飛び移りを成功させた若者は、今何を思っているのでしょう。

今回の一件がなければ、部下に対して「俺も昔は悪かった」などと武勇伝として語っていたかもしれません。

でも、もうそんな話は通りません。
少なくとも公務員が武勇伝を語ることを許されないのが今の現実です。

奈良市職員 向かいのホームに飛び移ろうとし線路転落 動画拡散

奈良市の男性職員が駅のホームから向かいのホームに飛び移ろうとして線路に落ちる動画がインターネット上に投稿され、拡散していることがわかりました。奈良市は「市の信頼を失墜する行為だ」として処分を検討しています。

奈良市と近鉄によりますと、動画は近鉄奈良駅の降車専用ホームで撮影されたとみられ、男性が走り幅跳びのようにおよそ3メートル離れた向かいのホームに飛び移ろうとして線路に転落し、はい上がる様子が写っています。

動画はインターネット上に投稿されて拡散し、20日午後5時の時点で200万回以上、再生されています。

18日、奈良市に問い合わせがあり、写っていた人物と似ている道路建設課の30歳の男性職員に確認したところ、自分だと認めたということです。

男性職員は「友人と酒を飲んだ帰りに、ひと駅乗り過ごし、ホームを移ろうとやってしまった。軽率だった」と話しているということです。

職員は撮影時期は覚えていないということですが、電車のデザインなどから去年3月までの3年余りの間とみられています。

動画は友人が閲覧できる人を限定してインスタグラムに投稿しすぐに削除したということで、その後、動画が拡散した理由はわからないということです。

奈良市は「市の信頼を失墜する行為だ」として、職員の処分を検討しています。

近鉄広報部は「重大事故につながるおそれがあり、このような行為は絶対にやめてもらいたい」としています。

「人としてどうかと思う」
動画について近鉄奈良駅では批判の声が聞かれました。

奈良県田原本町の30代の男性は「このような行為をする人は駅で見たことがない。公務員としてどうというよりも、人としてどうかと思う」と話していました。

奈良市の60代の女性は「恥ずかしいことだ。ホームを飛び越えることも、それを撮影することもしてはいけない」と話していました。

東京に住む40代の中国籍の女性は「外国人の観光客が知ったら、マナーを守る日本人というイメージが崩れるのではないか」と話していました。

NHK NEWS WEB 令和2年1月20日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200120/k10012252401000.html

【参考】奈良市職員の懲戒処分に関する指針等

奈良市職員の懲戒処分に関する指針
http://www.city.nara.lg.jp/www/contents/1494318962146/files/choukai-shishin.pdf

奈良市職員の懲戒処分等の公表基準
http://www.city.nara.lg.jp/www/contents/1494318962146/files/H29tyoukaisyobun-kouhyou.pdf