公務員がユーチューバー(YouTuber)になることは、原則として大丈夫、OKです。
公務員であっても表現の自由はありますから、ユーチューブ (YouTube)に動画投稿をしても基本的には問題ありません。

ただし、必ずしも自由な動画投稿ができるわけではありません。
特に公務員が副業ユーチューバーをしていることが当局にばれれば、大変なことになります。

実際に公務員の副業ユーチューバーが問題になった事例もあります。


公務員が副業ユーチューバー (YouTuber) になる

ユーチューバー(YouTuber)とは

ユーチューブ(YouTube)には、投稿した動画が他のユーザーに視聴される等により広告収入を得られる機能があります。
YouTubeパートナープログラム(YPP)がそれで、ここからの広告収入を得ている人を指してユーチューバーということがあります。
このうち、広告収入以外に主な収入がある人が副業ユーチューバーになります。

公務員がユーチューブから広告収入を得ている場合には副業ユーチューバーになります。

公務員”本業”ユーチューバーもいらっしゃる

この点、福井県職員として同県の広報ユーチューブチャンネル「おいでよ!ふくい」を担当されている石倉望央(いしくら みお)さんや前任者の岩田早希代(いわた さきよ)さんは副業ユーチューバーではなく、”本業”ユーチューバーということになるでしょうか。

公務員ユーチューバー「おいでよ!ふくい」現担当の石倉望央さん
元公務員ユーチューバー「おいでよ!ふくい」初代担当の岩田早希代さん

ユーチューブ(YouTube)から収入を得るには

投稿動画から広告収入を得る、いわゆる収益化を通すためには、YouTubeパートナープログラム(YPP)に申し込み、参加を認められることが必要です。

YouTubeパートナープログラム(YPP)への申し込みには、一定以上のチャンネル登録者と再生時間とが必要です。
具体的には、チャンネル登録者数が 1,000 人、かつ、有効な公開動画の総再生時間が過去 12 か月で 4,000 時間に到達することが求められます。
この条件が満たされた時点で自動的に通知が届くように設定できます。
また、より多くの収入を得るためには、基本的にはより多くの人に動画を視聴してもらう必要があります。

収益化にはチャンネル登録者数が重要

チャンネル登録は、簡単にいうと、動画を公開しているアカウント(チャンネル)をお気に入りとして登録することです。
Facebookの「Facebookページにいいねを押す」やTwitterの「フォローする」と同様のものと考えていただいて結構です。
チャンネル登録をすると、「登録チャンネル」でチャンネルの動画の一覧を表示できる等、そのチャンネルの更新状況をチェックしやすくなります。
これはユーチューバー側からすれば、更新状況をチェックしてくれる視聴者=固定ファンの獲得になります。

固定ファンは何度も同じ動画を見てくれる可能性が高く、多くの固定ファンが付けば動画の再生回数や総再生時間も増えやすくなります。
このため、ユーチューブから収入を得るには、チャンネル登録者を増やすことが重要になります。

公務員が副業ユーチューバーとばれると懲戒処分

公務員がユーチューブに動画投稿すること自体には問題はありません。
ただ、公務員には服務上の義務があり、まったく自由にできるわけではありません。

公務員の副業制限規定と副業ユーチューバー

このうち、国家公務員は国家公務員法第103条で、地方公務員は地方公務員法第38条で副業が制限されています。
ただし例外として、人事院の承認または任命権者の許可を得ることで副業が認められます(国家公務員法第103条、地方公務員法第38条)。

ユーチューブからの広告収入の支払いは、動画が再生される限り継続反復的に行われることから、事業性が認められます。
副業ユーチューバーになることは自ら営利企業を営むことであり、国家公務員法・地方公務員法の定める副業にあたります。
また、副業ユーチューバーは許可等にあたっての基準を満たすことができないので、承認または許可を得ることは通常できません(人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)及び人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について)。

公務員副業ユーチューバーはばれれば懲戒処分

したがって、公務員が副業ユーチューバーをしていることが当局にばれれば、副業制限規定違反として懲戒処分の対象になります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。

現在、公務員で副業ユーチューバーをしている方は、当分の間ばれないように気を付けてください。

公務員のユーチューブ収益化と身バレ

チャンネル登録者数が増えれば動画再生時間も増えやすくなり、収益化に近づきます。
一方で、投稿者の情報がばれる、いわゆる身バレの危険も増えます。

収益化を目指せば身バレの危険が増える

チャンネル登録者数や総再生時間が増えれば、身近な人の目に触れる可能性が高まります。
収益化が通るほどチャンネル登録者数が増えた場合には、その危険性はより一層増加することになります。

本人が映っている動画は、無意識のクセや特徴を記録しています。
匿名で顔や声を隠してやっていても、体格や話し方、身振りのクセは出てしまうものです。
本人が登場しなくてもセリフの言い回しや関心の持ち方等に特徴が表れます。

他人はこうしたクセや特徴に敏感で、身近な人は意外と気付きます。
しかも、たった一人にでも気づかれてしまったら、そこから身バレへの道がはじまります。
自分からばらさなければ大丈夫、なんてことはありません。

上司や同僚に見つかり、職場にばれることもあります。
近所の人に見つかり、職場に密告されるおそれもあります。

職場に副業ユーチューバーであることがばれてしまうと大変です。
ばれるのが収益化前なら言い逃れもできますが、収益化後は問題が大きくなってしまいます。

公務員ユーチューバーは自己顕示欲を抑える

副業ユーチューバーになる方なら、自己顕示欲がまったくないということはないでしょう。
自己顕示欲それ自体には全く問題ありません、人として当然の欲求です。

でも、公務員が副業ユーチューバーとなるからには、自己顕示は動画内だけにとどめ、実生活では極限まで抑えなければなりません。

そうでないと身バレの危険がぐっと高まるからです。

例えば、実生活、特に職場でユーチューバーであることを同僚等にしゃべってしまうのはほとんど自殺行為です。
同僚ができないことをしているのを誇りたい気持ち、当然だとは思います。
でも、同僚があなたを憧れの目で見てくれるとは限りません。
むしろルール違反を咎める気持ちや嫉妬にかられることの方が多いのではないでしょうか。

正義感からか、嫉妬心からか、上司に報告することは十分あり得ます。

何気なく同僚に副業を話してしまったせいで懲戒処分になった公務員は数多くいます。
先日もそうした事例が報道されています。

副業ユーチューバーになるのであれば、実生活では自己顕示欲は抑え、身バレしないようにふるまうことが重要です。

公務員ユーチューバーの身バレ・職場バレ事例

身バレ・職場バレ事例1 すねげスタイルさん

公務員ユーチューバーの身バレ・職場バレを赤裸々に語っておられる方がいらっしゃいます。
すねげスタイルさんです。

給与明細を公開する動画を投稿するなど、人気のある公務員ユーチューバーのお一人でした。
チャンネル登録者数が1,000人を超えたタイミングで収益化を目指す旨を公言され、公務員でも広告収入を得られるとの動画を投稿されました。

その後、職場バレしたようで、上司や人事と面談の模様もTwitterなどに投稿されておられます。
職場の印象は悪くなったでしょう。

職場バレして上司に呼び出されるというのはリアリティがあります。

上司のヒアリング・報告の後、人事の面談の流れもリアルです。

面談の結果、退職を決心されたようです。

人事の反応としてはおおむねそうなるでしょう。

公務員的思考では、ユーチューブで退職なんて「もったいない」そのものです。

でも、すねげスタイルさんは自由な魂の持ち主なのでしょう、とどまっていられなかったのだと思われます。
不安もあるでしょうが、退職を前向きにとらえてらっしゃいます。

これまで以上の飛躍をお祈りしています。

身バレ・職場バレ事例2 石川県宝達志水町男性職員(30)

身バレ・職場バレ事例として、石川県宝達志水町の男性職員(30)さんのケースもあります。

この方のすごいのは、8年も副業ユーチューバーを続けていて、懲戒処分を受けていないこと、しかも身バレ・職場バレ後も副業を続けているということです。

石川)町職員ユーチューブで収益 宝達志水町が注意

 宝達志水町の男性職員(30)が動画投稿サイト「ユーチューブ」に動画を投稿して収益を得ていたとして、町から口頭で注意を受けていたことがわかった。

 町によると、大学生だった2011年ごろから車の魅力を紹介するなどの動画を投稿し始め、13年に町職員になった後も継続。現在まで多い時で年20万円ほどの広告収入を不定期で得ていたという。昨年外部からの指摘で発覚。無断での副業は地方公務員法に抵触するため、町が本人に聞き取りをしたところ、事実関係を認めたため、同12月に口頭で厳重注意した。

 だが、指摘を受けた後、動画や収益の管理を母親に移し、自身は動画に出演し、制作しているだけだとして、副業ではなくなったと主張。投稿された動画も削除していないという。町は「前例がない。身内との関わり方に問題が無いか、調査を進めていく」としている。(三井新)

令和2年4月16日 朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASN4H7286N49PISC01S.html

公務員の副業ユーチューバーにとって明るいニュースかもしれません。
これが前例となれば、口頭の厳重注意だけで副業ユーチューブを続けられるのですから。

ただ、この事例は一般的ではないように思われます。
この事例があるからといって、直ちに副業ユーチューバー解禁となるわけではないでしょう。

宝達志水町職員懲戒処分等の基準

宝達志水町は懲戒処分の基準として「宝達志水町職員懲戒処分等の基準」を定めています。
懲戒処分の量定については人事院の「懲戒処分の指針について」とほぼ同じ、これに基準に照らせば、減給または戒告となるのが標準となりそうです。

にもかかわらず口頭の厳重注意で済んでいます。
また、少なくともユーチューバーとして収益を得ることが副業とみなされ厳重注意を受けているにもかかわらず、動画の収益や管理を母親に移したことで副業でなくなったとして、ユーチューバーを続けられておられるようです。

懲戒処分は懲戒権者の裁量行為

基本的には懲戒処分は懲戒権者の裁量行為ですから、懲戒権者、すなわち任命権者である宝達志水町長の判断によることになります。

この点、上記の基準では、「職員の日頃の勤務態度が極めて良好であるとき」等については処分の量定を軽減すること、「当該職員が行った当該非違行為の態様等に照らし懲戒処分を行わないこと」も定めています。

短いネット記事からは詳細がわからないのですが、宝達志水町長が諸事情を総合的に考慮して判断したものですから、その判断は妥当なものなのでしょう。

ただ、多くの公務員にとってそのまま参考になる事例ではないと考えられるでしょう。

公務員ユーチューバーが注意しなければならないこと

ユーチューブの投稿動画から身バレ・職場バレすることもありますが、それ以外から身バレ・職場バレすることもあります。

身バレ・職場バレを防ぐためには投稿動画の内容に注意を払うことが必要ですが、その他日常の活動にも相応の注意が必要です。

公務員ユーチューバーは服務上の義務違反に注意

公務員には服務上の義務が課されており、これに反すると懲戒処分の対象となることがあります。
公務員であることは身分であり、いつも付きまとうことを忘れてはいけません。

  • 職務専念義務
  • 信用失墜行為の禁止
  • 守秘義務
  • 政治的行為の制限

特に信用失墜行為については、何が信用失墜行為なのか明確でなく、社会的な批判があると後から信用失墜行為だったとされてしまうことがあります。

本人の出演や周囲に副業ユーチューバーであることを話さないようにし、確定申告はしっかりしてください。
また、違法行為にならないよう慎重に行動するとともに、服務上の義務を遵守するようにも注意が必要です。

公務員副業ユーチューバーの確定申告は期限内に

ユーチューブからの広告収入を含め、給与所得以外に年20万円を超える所得額があった方には確定申告の義務があります。
確定申告の義務がある方は、絶対に確定申告を期限内にしましょう。

職場に副業がばれるのをおそれて確定申告を怠ると、逆に職場にばれる結果になります。
しかも無申告加算税をはじめとするペナルティまで科されてしまいます。

期限内申告、住民税の納付方法として普通徴収を選択すれば、職場に副業がばれるおそれは多くはありません。
逆に、期限内申告をしなければばれるおそれが大きくなりますし、無申告を続ければほぼ確実にばれてしまいます。

確定申告の義務がある方は、必ず期限内申告をしてください。
とにかくまず申告です、方法などがわからなければ税理士さんに相談しましょう。
申告しないのは最悪です。
税務署は恐ろしいところですから。

公務員ユーチューバーは違法行為に注意

誰でも違法行為はしてはいけません。
ましてやその証拠を撮影して、ユーチューブに投稿するのは社会的な自殺行為です。

公務員が違法行為をしていたことがわかれば、社会的に強い批判を受けます。
たとえ微罪といわれるようなものであっても、信用失墜行為にあたり、懲戒処分の対象となるものです。

この事例では違法行為の証拠動画が拡散して、懲戒処分が検討されました。
報道によれば入庁前のもので、投稿も本人が必ずしも望んだものではないのですが、全国的にトップニュース扱いになってしまいました。

入庁前のことで本人が投稿したものでなくてもこの有様です。

奈良市職員懲戒処分・減給1/10(6カ月)

【令和2年2月17日追記】

件の奈良市職員は懲戒処分となってしまいました。
彼はユーチューバーではありませんが、他人事ではありません。

ホーム飛び移り動画で市職員減給

奈良市の男性職員が、駅のホームから向かいのホームに飛び移ろうとして線路に落ちる動画がインターネット上に投稿され、拡散した問題で、奈良市はこの職員を減給6か月の懲戒処分にしました。

懲戒処分を受けたのは、奈良市道路建設課の30歳の男性職員です。

奈良市によりますと、この職員は、近鉄奈良駅のホームで、およそ3メートル離れた向かいのホームに飛び移ろうとして線路に転落し、はい上がる様子を動画に撮影していました。
この動画は、写っている電車のデザインなどから、おととし10月までの2年ほどの間に撮影されたとみられていますが、先月18日、インターネット上に投稿され、先月末、削除されるまでに200万回以上再生されました。

NHK NEWS WEB 奈良NEWS WEB 令和2年2月17日(抜粋)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nara/20200217/2050003842.html

入庁前のことであっても、本人が投稿していなくても許されなかったわけです。

ましてや再生回数を稼ごうと、違法行為を記録した動画を投稿するようなことは絶対に許されないでしょう。

ユーチューバーが特に気を付けたい違法行為

そのほかにもユーチューバーが気を付けたい違法行為がいくつかあります。

  • 著作権侵害
  • 違法アップロード
  • 名誉棄損罪
  • 侮辱罪

これらは違法と意識せずにしてしまうことがあるので、特に注意が必要です。

公務員もユーチューブ(YouTube)に投稿することはできるが

公務員であっても表現の自由はありますから、動画投稿をしても基本的には問題ありません。
しかし、承認または許可を得ずに収益を得ていることが当局にばれれば、懲戒処分の対象です。

懲戒処分は、標準的には戒告または減給ですが、動画の内容や収益の大きさ等によってはそれより重くなる場合もあり得ます(人事院または各自治体の「懲戒処分の指針について」)。
また、懲戒処分を受けた場合はもちろん、受けなかった場合でも、それ以降動画投稿を続けることはできなくなるでしょう。

公務員は、副業ユーチューバーはばれたら懲戒処分の対象になる、ということを覚えておきましょう。