公務員がユーチューブ(YouTube)から広告収入を得て副業にすることは違法です。
人事院の承認または任命権者の許可を得ずに広告収入を得ることは、国家公務員法第103条第1項・地方公務員法第38条第1項に違反することになり、懲戒処分の対象となります。

では公務員がユーチューブに出演するとどうなるでしょう。


公務員は自分の動画に出演しないほうがいい

公務員がユーチューブから広告収入を得て副業にしていることがばれれば懲戒処分の対象となります。
だとすれば自ら動画に出演することはしないほうがいいでしょう。
自分から顔バレ・身バレして、懲戒処分になる危険を冒すことになるのですから。

顔を出さなかったり、声を変えたりすればいいという話ではありません。
話し方や身振り等、無意識に表れる細かな特徴から人物がわかることは多いものです。

ほとんどの人が気づかなくても、たった一人わかってしまえば特定されてしまいます。

懲戒処分を受けたいのであれば、どんどん出演してかまいません。
そうでないなら、出演は一切しないほうがいいでしょう。

他人の動画にも出演しないほうがいい

国家公務員法も地方公務員法も、報酬を得て非営利企業以外の事業・事務に従事することを制限していますが、それ以外は対象としていません。
そうであるなら、公務員も無報酬であればユーチューブに出演しても問題がないはずです。

それでも、公務員はユーチューブに出演するのをやめたほうがいいでしょう。

公務員は報酬を得てはいけない

公務員が報酬を得て他人が投稿するユーチューブに出演することは危険な行為です。

公務員は副業(兼業)を制限されていて、報酬を得て事業・事務に従事する場合には所轄庁の長または任命権者の許可を得ることが必要です(国家公務員法第104条、地方公務員法第38条第1項)。

しかし、この許可を得られるケースは限られています。
職務の公正な執行の確保と公務の信用の確保の観点から、報酬を得る事業・事務への許可が得られるのは、在職する機関と利害関係にない非営利企業の事業・事務に従事する場合で、公務の信用を傷つけるおそれがないとき等に限定されます。

ユーチューブは広告収入を得ることができるので、通常投稿主は営利企業であると考えられます。

したがって、許可が得られない以上、他人が投稿するユーチューブに出演することは国家公務員法・地方公務員法に違反することになり、これがばれれば懲戒処分の対象となります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。

ただし、投稿者が非営利企業である場合には許可が得られることもありますので、その場合には事前に所属庁の長または任命権者の許可を得る手続きをしてください。

得てはいけない報酬の意味

すべての対価が「報酬」になるわけではありません。
社会通念上相当と認められる程度を超える額となったときに報酬となります(「職員の兼業の許可について」に定める許可基準に関する事項について(通知) 平成31年3月28日付 閣人人第225号)。

社会通念上相当と認められる程度を超える額がいくらなのか、明確にされていませんが、国家公務員倫理法の贈与等報告が求められる1件5,000円が一つの目安になるかもしれません。

国家公務員倫理法 第6条(贈与等の報告)

本省課長補佐級以上の職員は、事業者等から、金銭、物品その他の財産上の利益の供与若しくは供応接待(以下「贈与等」という。)を受けたとき又は事業者等と職員の職務との関係に基づいて提供する人的役務に対する報酬として国家公務員倫理規程で定める報酬の支払を受けたとき(当該贈与等を受けた時又は当該報酬の支払を受けた時において本省課長補佐級以上の職員であった場合に限り、かつ、当該贈与等により受けた利益又は当該支払を受けた報酬の価額が一件につき五千円を超える場合に限る。)は、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの各区分による期間(以下「四半期」という。)ごとに、次に掲げる事項を記載した贈与等報告書を、当該四半期の翌四半期の初日から十四日以内に、各省各庁の長等(各省各庁の長及び行政執行法人の長をいう。以下同じ。)又はその委任を受けた者に提出しなければならない。

国家公務員倫理法

無報酬でも出演は危険

条文上、報酬を得なければ他人が投稿するユーチューブ動画に出演しても問題がなさそうです。

しかし、法律に抵触することはないかもしれませんが、現実的には面倒な事態になるので出演は避けたほうがいいでしょう。

報酬の有無は動画からはわからないので、動画を見た人のうちに報酬の提供があったと思う人は出てくるでしょう。
動画から身バレして人物が特定されると、所属に通報されることもあるかもしれません。

そんな面倒なことをする人がいるわけがない、そう考える人が多いでしょう。
でも、たった一人でも通報する人が現れれば、通報された側が面倒なことになるのです。

通報されてしまったら

通報を受けたら、当局は実態調査をすることになります。
仕事ですから、せざるを得ないというのが本当のところですが。

報酬を得ていなかったから問題ない、で終わらないこともあります。

むしろ無報酬だからこそ大変かもしれません。
なかったことの証明は原理的に不可能だからです。
動画の投稿主とのやり取り等を含めて詳細な情報を当局に提出し、納得させる必要があります。

調査をされている間はユーチューブに出演することは難しくなります。
出演動画の削除が必要になるかもしれません。

少なくとも上司は出演は止めるでしょうし、動画の削除もすすめてくるでしょう。
上司と喧嘩をしてもいいのですが、喧嘩をすれば平穏な公務員生活は失われます。
反抗的な要注意職員としてこれからを過ごすことになるのです。

公務員は目立とうとする必要はない

公務員としてやっていくつもりなら、目立っていいことはありません。
いずれ公務員を辞めるという確固とした意志があるのなら別ですが、いくらかでも公務員を続けたいと思っているのであれば、わざわざ目立とうとする必要はありません。
出世する人は隠れていても目立っていきます。
自分から目立とうとする人は叩かれます。

公務員はユーチューブ動画に出演してもいいことがない

公務員は、報酬の有無にかかわらずユーチューブに出演しないほうがいいです。

広告収入を得ていたり、報酬を得て他人の動画に出演してしまえば、その時点で国家公務員法・地方公務員法に違反することになります。
非営利企業の動画であっても、事前に許可を得ていなければ法に抵触します。

無報酬であっても、本人が特定されるような形で出演することは危険が多く、おすすめできません。

公務員を続けたいのであれば、自分から目立とうとしないほうがいいでしょう。
わざわざユーチューブに出演して目立たなくていいし、目立ってもいいことはほとんどありません。
自分を表現したいのであれば公務員はやめるか、特定されないような形ですべきです。