公務員は現金を受け取ってはいけない、そんな認識が世間にも、公務員の一部にもあるようです。

確かに公務員が現金を受け取っていい場面もありますし、現金以外のものであっても受け取ってはいけない場面もあります。

公務員が謝礼を受けること

社会生活の中で、謝礼を贈ったり受け取ったりすることは当然に発生します。
公務員も社会の一員である以上、そうした社会慣習の外で生きていくことはできません

公務員であっても、社会通念上相当と認められる程度の授受は認められます。

謝礼を現金ではなく、物品や金券等で贈るのは、現金のやり取りを好まない社会的な慣習からです。

確かに、世間にも公務員にも、現金の授受は問題がある、という認識はあるでしょう。
その逆の発想で、現金はダメだけど物品や金券なら大丈夫、と認識されている方もいらっしゃいます。

しかし、現金であるか物品や金券であるかは問題の本質ではありません。
そのやり取りが、全体の奉仕者である公務員の中立性・公平性に反するものであるか否かが問題なのです。

公務員への謝礼と法令

金銭や物品等の贈与を受けることについては、国家公務員は「国家公務員倫理法」で規制されています。

地方公務員については、一部の自治体については「職員倫理条例」を制定して、他の自治体では「服務規程」や通知等によって規制されています。

ただ、地方公務員についても国家公務員に準じた規制になっていることが多いので、「国家公務員倫理法」を中心に書いていきます。

謝礼と国家公務員倫理法

国家公務員は、利害関係者から金銭、物品または不動産を受けることが禁止されています(国家公務員倫理法第3条第1号)
また、利害関係者以外であっても、社会通念上相当と認められる程度を超えた財産上の利益の供与を受けることが禁止されています(国家公務員倫理法第5条第1項)

利害関係者

利害関係者は、基本的にその職員の職務遂行によって直接に利益または不利益を受ける者のことです。
さらに詳細に規定されていますが、要するに許認可の対象者や契約の相手方等、その職員の裁量によって利益または不利益が生まれかねない者が利害関係者です。

したがって、官職とは関係のない、まったくの私的な関係である人は利害関係者には当たらないことになります。

金銭、物品または不動産を受けること

利害関係者から金銭、物品または不動産の贈与を受けることは禁じられます。
これには、餞別、祝儀、香典または供花その他これらに類するものを含むとされています。

また、第三者に金銭、物品または不動産の贈与を受けさせることも禁止されています。

さらに、利害関係者以外からであっても、高額な贈与を受けることも禁じられます。

商品券や図書カードであっても

金銭だけでなく、物品や不動産の贈与を受けることも禁じられているので、商品券にしようと図書カードにしようと同じです。
商品券や図書カードであっても、利害関係者からはダメ、私的な関係でも高額な場合はダメ、ということです。

謝礼と公務員の副業制限

公務員は副業が制限されています(国家公務員法第103条及び第104条、地方公務員法第38条)。

謝礼の名目で贈与された場合でも、実態として報酬にあたるときは制限されます。
謝礼の名目であっても、継続反復の意思をもって行った行為に対して支払われたものや労働の対価として契約に基づいて支払われるものについては、報酬にあたります。

前者としては講師業やコーチ業、書道や茶道の先生などが該当するでしょう。
後者としては執筆業や映画やドラマのエキストラなどが該当するでしょう。

これら報酬と当たると判断された場合には、許可等を得ていない限り副業制限に違反することになり、懲戒処分の対象となります。

商品券や図書カードも課税所得

商品券や図書カードを受け取った場合でも所得税法上非課税扱いにはなりません。

確かに、消費税法上商品券や図書カード等については、二重課税を避けるために、譲渡には課税しないことになっています。

謝礼にも所得税等が課税される

しかし、所得税では二重課税の問題は生じないため、課税所得として扱われます。

公務員が商品券や図書カード等を受け取った場合、「雑所得」に区分され、総合課税されます。

ただし、給与所得以外の所得が年20万円以下の場合は確定申告しないことが認められていますので、実態としては課税されません。
住民税については給与所得以外に年10万円を超える所得があると申告する義務があるのですが、実際にされている方は少ないようです。

したがって、現実としては年20万円以下の場合は所得税や住民税が課税されることはありません。
(もっと現実的にいうと、税務調査が来ない範囲を見極めてより多くの所得があっても申告していない方もいるようです。)

現金でも商品券や図書カードでも同じ扱い

結局、謝礼を贈る方は、相手の税金のことを考えて商品券や図書カードにする必要はありません。
受け取る側も、商品券や図書カードだからといって非課税と考えてはいけないことになります。

公務員への謝礼は形で変わらない

公務員の謝礼は、現金でしようと、商品券や図書カードでしようと、結果は同じことになります。

利害関係者からだったり、社会通念上相当と認められる程度を超えていたりするものを受けることはできません。

実態として報酬と当たると判断されれば、許可等を得ていない限り副業制限に違反することになります。

消費税は非課税の取扱ですが、所得税は課税扱いで、年20万円以上の所得があれば確定申告が必要になります。

もちろん、現金をやり取りを好まない社会慣習を否定するものではありません。
しかし、現金であろうと商品券や図書カードであろうと、法的には同じ扱いになります。

スポンサーリンク