家賃収入のある公務員であっても、確定申告をしなくてもいい方がいらっしゃいます。
また申告義務はないものの、年間を通して赤字が出ている方は確定申告をすることで節税できる方もいらっしゃいます。
確定申告が必要になる公務員とは、具体的にはどのような方でしょうか。
目次
家賃収入にかかる確定申告が必要な方
家賃収入で確定申告する必要があるのは次の方です。
申告義務がある方
- 給与以外で、家賃収入を含めて年20万円を超える利益を得た方
あくまで利益(所得)が判断基準です。
所得金額は、収入から経費を控除して計算します。
申告するメリットがある方
- 年間を通して赤字となった方で節税をしたい方
年間で家賃収入を超える経費支出があった、つまり赤字だった方は、その赤字を給与所得等と通算することで節税をすることができます(いわゆる不動産投資の節税効果)。
家賃収入にかかる所得税及び復興特別所得税の計算
家賃収入にかかる利益や損失は「不動産所得」に区分され、給与所得等との損益通算、つまり所得額を合算して計算することができます。
不動産所得は地代家賃のほか更新料等を含めたその年の収入金額から必要経費を控除して計算します。
なお、平成26年1月からは、不動産所得を生ずべき業務を行う人はすべて、記帳と帳簿等の保存が必要になっています。
不動産所得の申告には、知識がなくても複式簿記帳簿が作成できるやよいの青色申告オンラインが便利です。
収入金額
収入金額には、名目上の家賃だけでなく、更新料等の賃料の前払的性格の一時金及び敷金等の預り金的性格の一時金の償却額も含まれます。
必要経費
必要経費は、管理費、減価償却費、建物取得時の借入金の利子、固定資産税等の租税公課、建物の火災保険等の保険料、修繕費等が含まれます。
減価償却費
減価償却資産は、全額を購入年の経費にすることはできません。
使用する期間にわたって費用として計上することになり、これを減価償却といいます。
減価償却の計算
減価償却の計算方法には定額法、定率法等がありますが、事前に届けてていない場合は、原則定額法で計算します。
減価償却費=取得価額×償却率
資産の種類によって耐用年数と償却率が定められており、それによって計算します。
平成10年4月1日以降に取得した建物、平成28年4月1日以降に取得した建物附属設備や構築物については定額法のみが認められる
平成19年4月1日以降に取得した資産の減価償却計算は、耐用年数の期間にわたり残存価額が1円になるまで行うことができる。
修繕費
修繕費は維持管理に支出した費用を計上します。
資産価値を高めるものは資本的支出として、取得原価に算入し、減価償却計算で費用化します。
(不動産投資の)節税効果
また、不動産所得に赤字がある場合には、その赤字額を給与所得等から控除(損益通算)することで所得額を減らし、所得税額を減らすことができます。
これがいわゆる家賃収入の節税効果で、特に不動産の取得年に有効です。
事業規模とするメリットとデメリット
事業規模とは
賃貸物件が5棟以上または10室以上にると、事業規模に該当します。
不動産賃貸が事業規模になることには、次のメリットとデメリットがあります。
事業規模になるメリット
事業規模に該当する場合には、次のような有利な取扱いがあり、所得金額を減らすことができます。
- 65万円の青色申告特別控除(⇔10万円円が限度)
- 専従者給与を経費にできる(⇔経費にできない)
- 滅失資産の損失を経費算入するとき、全額経費算入でき、不動産所得を赤字にできる(⇔不動産所得を赤字にできない)
事業規模になるデメリット
事業規模となると、「5棟10室基準」を満たすことになり、不動産賃貸を続けるためには人事院の承認または任命権者の許可が必要になります(国家公務員法第103条・地方公務員法第38条)。
承認または許可を得ないで行うと、懲戒処分の対象となります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。
確定申告書の提出期間
令和3年(2021年)分の確定申告書の提出期間は
令和4年(2022年)2月16日(水)から同年3月15日(火)まで
です。
締切に遅れると期限後申告として取り扱われます。
期限後申告になると、原則として申告等によって納める税金のほかに無申告加算税が課されることになります。
確定申告は期間内にしてください。
不動産所得にかかる確定申告書の作成
確定申告に必要な書類等
自分で用意する書類等
- 不動産賃貸にかかる帳簿等
- 源泉徴収票
税務署等から入手する書類等
- 収支内訳書(不動産所得用)
- 確定申告書様式B申告書
確定申告書の作成
特に家賃収入にかかる部分だけを抜き出して書きます。
なお、詳細については国税庁のHP等を参照してください。
また、具体的な税額の計算については税理士さんにご相談ください。
1 収支内訳書(不動産所得用)
(1)総収入金額(家賃収入にかかる帳簿等から)
→「収支内訳書(不動産所得用)」の「収入金額」①~⑤に転記します。
(2)必要経費等(家賃収入にかかる帳簿等から)
→「収支内訳書(不動産所得用)」の「その他の経費」⑥~⑫に転記します。
(3)所得金額の計算
「収支内訳書(不動産所得用)」の「所得金額」⑮に収入金額計⑤から経費計⑫を控除して計算した金額を記入します。
(4)その他項目
表面の不動産所得の収入の内訳、裏面の減価償却費の計算や借入金利子の内訳等、必要な事項を記入します。
2 確定申告書様式B申告書 第一表
(1)「収支内訳書(不動産所得用)」の「収入金額」の計⑤
→「確定申告書様式B申告書 第一表」の収入金額等の「不動産」ウに転記します。
(2)「収支内訳書(不動産所得用)」の「所得金額」⑫
→「確定申告書様式B申告書 第一表」の所得金額の「不動産」③に転記します。
(3)税額の計算
源泉徴収票等の数字から「所得金額」⑨、「所得から差し引かれる金額」25を計算し、「課税される所得金額」26を計算します。
「確定申告書様式B申告書 第一表」の税金の計算「上の26に対する税額」27に、税率の「15%」を乗じて計算した金額を記入します。
3 確定申告書様式B申告書 第二表
不動産賃貸にかかる帳簿等や源泉徴収票から、必要な事項を添付します。
職場に家賃収入をしていることを隠しておきたい方は、住民税・事業税に関する事項の「給与・公的年金に係る所得以外の所得にかかる住民税の徴収方法の選択」で「自分で納付」に〇をつけてください。
住民税が特別徴収(源泉徴収)ではなく、普通徴収になります。
職場を通さず、区市町村から送られてきた納付書を使って自分で納付することになります。
普通徴収を選択する理由
住民税を特別徴収にすれば給料天引きで納税できるので、普通徴収よりも負担が少なくなります。
しかし、特別徴収では同僚より高額な住民税の通知が職場に届くことになり、家賃収入が職場にばれる場合があります。
こうした事態を避けるには、住民税の納付を普通徴収にして、住民税関係が職場に伝わらないようにするのです。
こうすることで家賃収入がばれる可能性を小さくすることができます。
家賃収入を隠したほうがいい場合
職場に家賃収入を隠したほうがいい場合は次のとおりです。
承認または許可を得ていない場合
賃貸規模が事業規模(投資物件が5棟以上または10室以上等)の場合には、人事院の承認または任命権者の許可が必要です。
この承認または許可をを得ずに事業規模の不動産賃貸をしている場合には、職場にばれれば懲戒処分となるおそれがあります。
職場の面倒事を避けたい場合
事業規模にならなければ、職場にばれても制度的な問題はなりません。
ただ、家賃収入をしていることがばれると、周囲に嫉妬される等仕事や家賃収入を続けることが面倒になることもあります。
こうした面倒事を避けるために、職場に隠したほうがいい場合があります。