結論から言うと、公務員は副業の不動産投資を法人化、つまり資産管理法人を設立して行うのはやめておくべきです。
法人化の利点は大きいのですが、欠点、特に公務員特有の欠点が大きいためです。

公務員は副業の不動産投資を法人化すべきではない

法人化(資産管理法人設立)の利点

不動産投資の法人化には次のような利点があります。

  • 節税
    • 税率差による節税
    • 必要経費増加による節税
    • 役員給与による節税
    • 損失繰越による節税
  • 信用力向上

法人化による節税

税率差による節税

不動産投資を個人で行っている場合には、国税は所得税、地方税は住民税を納付します。法人化すると、国税は法人税、地方税は法人住民税を納付することになります。

所得税と法人税とでは税率体系が異なっており、所得金額が少ない場合には所得税率の方が法人税率よりも低くなっていますが、所得金額900万円を境に法人税率の方が所得税率よりも低くなります。
給与所得と不動産所得(不動産投資の所得)を通算(損益通算)した後の所得金額が900万円を超えるのであれば、法人化すると節税できることになります。

一方、法人の実効税率は
経常利益400万円以下は約20%、
400万円超800万円以下は約25%、
800万円超は約34%です。

以上から、個人での所得が900万円を超えるようであれば、法人化した上で経常利益を400万円以下にすれば、最終的な納付税額を減らすことができます。

必要経費増加による節税

所得税及び法人税とも、課税標準となる所得金額は収入金額から必要経費を控除して計算します。

所得=収入金額-必要経費
税額=所得×税率

多くの場合、法人の方が個人事業主よりも必要経費を広く認められます。

法人化すると必要経費(損金)を通算できますから、例えば売却損が出た場合には他の不動産からの収入から差し引くことができます。
個人事業主の場合、不動産所得と譲渡所得は損益通算できないため、売却損を不動産所得から差し引くことはできないのと大きく異なります。

法人化した方が必要経費として多く積み増すことができるので、結果として納付税額を減らせる場合が増えるのです。

役員給与による節税

法人化すれば一定の条件のもとで、役員に対して支払う役員給与を必要経費とする(損金算入する)ことができます。
役員給与として、毎月、相当な範囲にある同じ金額を受け取っている場合(定期同額給与)には、必要経費(損金)への算入が認められます。

法人化すれば親族についても、従業員として勤務していればその給与を会社の経費(損金)にできます。
この点、個人事業主の場合には親族への給与は原則として経費にできず、例外として認められるためには一定の条件があるのとは大きく異なります。

損失繰越による節税

個人事業主の場合、所得税の損失繰越は最大で3年間しかできませんが、法人化すると法人税の繰越損失は最大で10年間することができます。

信用力向上

法人化すると、個人事業よりも社会的な信用が高まります。
取引先を法人に限定している企業もありますから、信用を背景に事業を拡大していくことも可能になります。

世間には法人の方が個人事業よりも大規模な事業をしているという印象があります。
相手方は実態はわからないのですから、そうした印象を利用するのも大切です。

法人化(資産管理法人設立)の欠点

資産管理法人を設立することの欠点は費用がかかることです。

設立費用

法人設立には、株式会社の場合最低でも20万円程度(登録免許税15万円と公証人による定款認証手数料5万円)、合同会社の場合でも6万円程度(登録免許税6万円、公証人による定款認証手数料不要)の費用が必要です。
司法書士等専門家に依頼した場合には、これ以外に支払報酬が必要になります。

法人住民税均等割

法人住民税には均等割があり、事業所得に関係なく毎年課税されます。

決算書作成費用

株式会社は毎年決算書を作成することになります。
税理士に依頼すると支払報酬が必要になります。

公務員の副業特有の欠点

さらに、公務員特有の欠点があります。
公務員が副業を法人化する場合には決して役員になってはいけないことです。
営利企業等の役員兼務は国家公務員法第103条または地方公務員法第38条に違反であり、懲戒処分の対象です(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。

役員になったことは社会保険制度からばれてしまいます。
黙っていればばれないわけではないのです。

社会保険制度において、役員は会社に使用されるという考え方が取られています。したがって、社会保険(健康保険及び厚生年金保険)については、役員一人の会社であっても加入義務が発生します。
本業の職場と自分の会社の両方で社会保険に加入すると、給料合算額に対する保険料をそれぞれの報酬月額で案分して、それぞれの給料から天引きすることになります。

その結果、本業の職場で支払う金額は給料に対する社会保険料と異なることになるので、職場に役員になったことがばれるてしまいます。

この点、家族等を法人の役員にすれば、営利企業等の役員兼務は回避できますが、許可を得ずに報酬を得て法人の事業に従事してしまうと国家公務員法第104条または地方公務員法第38条に違反してしまいます。
これもやはり懲戒処分の対象です(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。

公務員が不動産投資を法人化してしまうと、せっかく合法的にできる地位を手放すことになってしまいます。

公務員の副業での法人化はやめた方がいい

法人化には節税効果があるものの、公務員が副業として不動産投資を行うには適当ではなく、やめた方が得策です。