公務員は金銭の授受が制限されています。

全体の奉仕者として一定の制限があるのはやむを得ません。
公務員は一切の贈与を受け取るべきではない、という意見をお持ちの方も多いようです。

しかし現実問題、謝礼の受け取りを常に拒否しなければならないとすると、社会生活を送ることが困難になります。

実際のところはどうなのでしょう。

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公務員と謝礼

結論からいうと、講師や講演、審判やコーチの謝礼は基本的には受け取っても大丈夫です。

ただし、社会通念上相当と認められる金額を超えた額を継続的または定期的に受け取っていた場合には、報酬を得て事業・事務に従事することとみなされることがあり、問題になるおそれがあります。

公務員と謝礼に関する法令

報酬を得て事業・事務に従事するためには、国家公務員は所属庁の長の許可、地方公務員は任命権者の許可が必要です(国家公務員法第104条、地方公務員法第38条)。

公務員が謝礼を受け取ることが法律に違反するか否かについては

  1. 謝礼が報酬にあたるか
  2. 謝礼の対象となる行為が事業・事務に従事することにあたるか
  3. 事前に許可を得ていたか

を検討する必要があります。

国家公務員法第104条
 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

国家公務員法

地方公務員法第38条第1項
 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。

地方公務員法

1. 謝礼が報酬にあたるか

報酬は、国家公務員法・地方公務員法では定義されていませんが、通説的には次のように解釈されています。

  • 「報酬」とは、労務、労働の対価として支給あるいは給付されるものをいう。
  • 「労務、労働の対価」とは、職員が一定の労働を提供することに対して双務契約に基づき支払われる反対給付のすべてをいい、金銭のみでなく、現物給付、利益の供与についても「報酬」の対象となる。
  • それが、経常的なものであるものと一時的なものであるものを問わない。
  • ただし、謝金、実費弁償に当たるものは「報酬」に含まれない。たとえば講演料、原稿料、布施、車代等である。

謝金、実費弁償に当たるものは「報酬」に含まれないので、謝礼は報酬にはあたらないと解釈されるのが通常です。
また、謝礼が贈られるのは労務契約等がないことが通常なので、この点でも報酬にはあたらないと考えられます。

ただし、社会通念上相当と認められる額を超えた場合には、報酬に該当することには注意が必要です(「職員の兼業の許可について」に定める許可基準に関する事項について(通知) 平成31年3月28日付 閣人人第225号)。

2. 謝礼の対象となる行為が事業・事務に従事することにあたるか

通説的には、事業・事務は「それが営利を目的とするものであると否とを問わず、すべての事業及び事務を含むものである」と解釈されています。
また、「事業・事務に従事すること」は、職員が職務以外の事業又は事務に継続的又は定期的に従事することと解釈されています。

したがって、講師や講演、審判やコーチであっても、継続的または定期的に行っていれば事業・事務に従事することにあたります。

3. 事前に許可を得ていたか

原則的には、謝礼は報酬にあたらないので、所属庁の長または任命権者の許可は不要です。
また、講師や講演、審判やコーチをしていたのが非継続的かつ不定期であった場合には事業・事務にあたらないので、許可は不要になります。

ただし、講師や講演、審判やコーチとして社会通念上相当と認められる額を超えた謝礼を、継続的または定期的に得ようとする場合には事前に許可が必要です。

無許可で報酬を得ていれば懲戒処分

許可を得ずに、報酬となる額の謝礼を継続的または定期的に受け取っていた場合には、国家公務員法・地方公務員法違反となり、懲戒処分の対象となります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。

社会通念上相当と認められる額とは

問題となるのは、報酬にあたらないのは具体的にいくらかということです。

社会通念上相当と認められる額は、個別の事案ごとに具体的な内容を考慮して判断されます。
想定される状況は全く異なりますが、国家公務員倫理法の贈与等報告が求められる1件5,000円が一つの目安になるかもしれません(国家公務員倫理法第6条)。

ただ、社会通念上相当と認められる額については、最終的には懲戒権者、すなわち任命権者等の判断になります。
どのような根拠に基づいて考えたとしても、任命権者等がこのとおりに考えてくれるかは不明です。

社会通念上相当と認められる額であるか否か、どうしてもはっきりさせたいのなら所属の総務担当に確認する方法もあります。
何らかの判断をしてくれます。
社会通念上相当と認められる具体的な金額を教えてくれるか、そもそも謝礼を受け取っていることを問題視されるか、結果がどうなるかはわかりませんが、何らかの判断はしてくれるでしょう。

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