公務員が副業として、新規に農業をはじめることは困難です。
では、家業農業を継承して続けることはできるでしょうか。

人事院の承認または任命権者の許可を得れば、家業の農業を継続することが可能です。
ただし、承認または許可を得るには一定の基準を満たす必要があります。

公務員が家業である農業を続けるには

公務員の農業にかかる副業制限

公務員は副業が制限されており、農業を副業とするのにも一定の制限があります。

一定の農業には承認または許可が必要

公務員は人事院の承認または任命権者の許可を得なければ、自ら営利企業を営むことを制限されます(国家公務員法第103条、地方公務員法第38条)。
農業については、「大規模に経営され客観的に営利を主目的とすると判断される場合」には自ら営利企業を営むことに該当します(人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について)。
そして、承認または許可を得ずに大規模な農業経営等を行うと懲戒処分の対象になります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。

家業の相続・遺贈等であれば承認または許可を得やすい

この承認または許可には基準があり、この基準に適合しなければ承認または許可を得ることはできません。
この点、家業の農業を相続・遺贈等により継承した場合であれば、その他の基準を満たすことで承認または許可を得ることができます。

三 不動産又は駐車場の賃貸及び太陽光電気の販売以外の事業に係る自営を行う場合で、次に掲げる基準のいずれにも適合すると認められるとき。
(1) 職員の官職と当該事業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがないこと。
(2) 職員以外の者を当該事業の業務の遂行のための責任者としていること等により職員の職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること。
(3) 当該事業が相続、遺贈等により家業を継承したものであること。
(4) その他公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと。

人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について

許可基準について

相続、遺贈等により家業を継承したものである場合には、その他の許可基準に適合すれば承認または許可が得られることになります。

特別な利害関係等がないこと

「職員の官職と当該事業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがない」ようにするためには、農政に関連する部署への異動はできなくなるでしょう。
ジョブ・ローテーションの幅を狭めることになりますが、これはやむを得ないでしょう。

職員の職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること

通常問題になることはありませんが、大規模な農業経営を行っている場合には問題になります。
この場合には、家族や親族等を責任者とする等の対策が必要になるでしょう。

もっとも、地域的に農業との兼業が通常であれば、それほど大きな問題にはならないかもしれません。

公務の公正性及び信頼性の確保

特別な利害関係がないことと関連しますが、守秘義務や職務専念義務等、服務規定を遵守していれば問題になることはないでしょう。

家業の農業の継承はほぼ問題ない

家業の農業を相続・遺贈等によって継承した場合には、問題となることはほとんどありません。
異動先が多少限定されることはありますが、服務規定を遵守していれば、ほぼ問題なく基準に適合することになり、承認または許可を得ることができます。

許可を得なかったために懲戒処分となった事例

市に無許可で水田を耕作し収入を得ていたとして停職6カ月の懲戒処分とした事例があります。
処分を受けた職員は相続した水田約2.6haで米を生産、途中から耕作放棄地を借り受ける等して最終的には約7haの水田で農業を営んでいました。
ただし、農機具の購入費などで経費がかさみ、収支は毎年赤字だったようです。

営利を主目的にしているかどうかは、客観的、つまり懲戒権者である任命権者が判断します。
赤字であろうが、職員が営利を求めていなかろうが、任命権者が営利を主目的と判断すれば、営利を主目的とするものになります。

この事例では約7haの水田ですから、明らかに自家消費を超える量が収穫されていたと考えられます。
当然自家消費をはるかに超えた分を販売していたのですから、営利を主目的と判断されたのは当然でしょう。
地域にもよりますが、約7haの水田は大規模な経営といって差し支えないでしょう。

したがって、上記の事例は自ら営利企業を営むものに該当し、許可を得る必要がありました。

この事例では、相続した分を維持していただけなら任命権者の許可を得られたと考えられます。
しかし、他人から水田を借り受けた分については申請しても許可を得られません。
それがわかっていて申請をしなかったのではないでしょうか。

副業としての家業である農業

公務員が副業として家業の農業を継承することは、人事院の承認または任命権者の許可を得ることで可能になります。
許可基準に適合することも難しくはなく、申請することで承認または許可を得ることができるでしょう。

だからこそ、面倒がらずに承認または許可の申請をきちんとすべきです。
収支が赤字だからと承認または許可を得ることを怠ると、懲戒処分の対象になってしまいます。

職務専念義務遵守が問題

むしろ問題になるのは職務専念義務違反です(国家公務員法第101条、地方公務員法第35条)。
実際問題、大規模農業にかかる手間は少ないものではありません。
土休日・年休をすべて使っても、農業を継続することは難しいかもしれません。

農業を副業にするのであれば、可能な限り省力化を図る等、本業に支障が出ないような工夫が必要になります。