不動産投資の節税効果は業者の売り文句となっています。
不動産投資でお金を増やしながら節税までできるのなら結構な話ですが、実際はどうなのでしょうか?


不動産投資は公務員に向いている

不動産投資は公務員に向いている副業です。
不動産投資は初期投資が大きいものの、公務員は与信枠の大きく資金調達能力が高いので、取り組みやすくなっています。
また、株や通貨等よりも値動きがゆっくりで、職務に及ぼす影響が小さく、不労所得でもあります。

一定規模未満であれば人事院の承認または任命権者の許可がなくてもできますし、一定規模以上のものであっても一定の基準を満たせば承認または許可を得て行うことができます。

不動産投資は取り組みやすく、合法的にすることができる副業ですから、実際に取り組んでいる公務員も多くいらっしゃいます。

不動産投資の節税効果

不動産投資には節税効果があるといわれます。
確かに所得税・住民税や相続税・贈与税が節税できる場面があります。

所得税(及び住民税)の節税効果

不動産投資の節税効果は、不動産投資で赤字になったときに、この赤字分を給与所得等との損益通算等によって所得税額(及び住民税)を減らせる、というものです。

不動産入手年は節税効果が大きい

特に節税効果が大きいのが不動産を入手した年です。
不動産入手年は、年の途中からしか収入が発生しない上、登録免許税、不動産取得税等を必要経費に計上するので、赤字になることが多いでしょう。
このときの赤字額を給与所得等と損益通算すること等で所得税額を減らすことができます。

2年目以降も節税効果があることも

また、2年目以降も不動産の節税効果が発生する場合があります。

現金支出がないのに、帳簿上費用を計上することができる費用に減価償却費があります。
現金支出を伴わない減価償却費を計上することで、手元に現金が残っているのに帳簿上の利益を減らし、これが多額になると投資を赤字にできる場合があります。
現金は手元に入ってきているのに帳簿上赤字になるのですから、儲けを出しながら節税をすることが可能になるのです。

相続税・贈与税の節税効果

相続税は各相続人等が相続や遺贈などにより取得した財産の評価額(相続税評価額)に基づいて税額が決まります。
借金等があった場合はその分を財産の評価額の合計額から差し引くことができます。

相続税評価額については、その財産の形態によって評価の仕方が異なります。

現金はその金額が評価額となります
宅地は路線価等を基に評価します。
建物は固定資産税評価額によって評価します。

宅地は、通常路線価方式で評価されます。
これは評価対象画地が接する路線価に、画地の個性を反映して評価するものです。
路線価は公示価格の8割程度で設定されるので、ほとんどの評価対象画地は実勢価格を下回って評価されます。

また、建物は固定資産税評価額を基に算出されます。
固定資産税評価額は再建築価格方式で評価されます。
これは、その建物の再建築費用に経年減額を考慮して評価するもので、再建築費用は実勢の6~7割程度をいわれます。

さらに、人に貸しているとさらに評価額は下がることになります。

したがって不動産投資の物件の相続税評価額は、その市場価格よりも相当安く評価されることになります。
そして、相続税額は現金で保有していた場合に比べて安くなります。

つまり不動産投資をすることで相続税を節税することができるのです。

公務員は節税効果に期待しすぎない

投資をしながら節税ができる、結構な話に聞こえます。
ただ、不動産投資の節税効果を存分に享受できる公務員はそれほど多くないのが実際です。

所得税の節税効果

公務員の節税効果はそれほど大きくない

同じ赤字額が発生していても、赤字額控除前の課税所得が大きい人ほど節税額が大きくなります。

所得税は累進課税税率方式を採用しています。
所得税率は、分離課税の場合を除き、課税所得が上がるにつれ高くなっていいきます。
現在税率は5~45%の7区分の超過累進税率です。

不動産投資で100万円の発生したとしても、税率5%の人は最大5万円しか節税になりませんが、最高税率45%の人では最大45万円の節税になります。

開業医や弁護士のような高所得者であれば不動産の節税効果を存分に受けられるのでしょうが、公務員はそうではありません。

公務員は世間が思っているほど高所得ではありません。
年収1,000万円を超える人もそれほど多くない職業です。
所得税率が30%を超える税率区分が適用される人は、管理職やベテラン、やった分だけ残業代が出る職場の職員等多くはない人たちです。

公務員の副業に不動産投資は向いているのですが、その節税効果はそれほど大きくはならないのです。

節税効果を狙うとリスクも大きくなる

投資資金を減らしかねない

不動産投資の節税効果が発生するのは投資が単年で赤字のときです。
入手した年は費用がかさむ上、収入もだいたい年の途中からですので、単年赤字になることが仕方ないでしょう。
しかし、2年目以降も赤字が続くような不動産の場合には問題があります。
減価償却費よりも儲けが少ない不動産なのですから、修繕費が嵩んだ、空室期間が思ったより長くなった等、ちょっとしたことで資金を減らすことにもなりかねません。

金融機関との関係悪化

帳簿上赤字になるのですから、金融機関の印象は悪くなり、融資環境は厳しくなるでしょう。
新たな資金調達の困難化や最悪の場合融資の引き上げにつながる場合もあります。

相続税の節税効果

不動産投資をはじめれば、その時点で計算される相続税額は少なくなります。
しかし、相続はいつ発生するかわかりませんから、思ったような形にならないかもしれません。

相続税は金銭納付が原則で、物納はあまり認められません。
相続税には、相続開始を知った日(被相続人の死亡した日)の翌日から10ヶ月以内という納付期限があり、それまでに現金化しなければなりません。
売り急ぐことになり、思ったような価格で売れるとは限らず、思わぬ損失が発生することもあります。
相続税は安くなったが、売却損が大きくなった、なんてことになるかもしれません。

もっとも、それは本人が死んだ後ですから、本人には関係ない話なのですが。

不動産投資の節税効果に期待しすぎない

公務員にとっては不動産投資の節税効果は実際にはそれほど大きくありません。
所得税の節税効果は、高所得者のようには大きくなく、しかも不動産を入手した年の分がほとんどです。
相続税の節税効果は期待できますが、必ずしも思ったような形になるとは限らず、しかも本人は効果を実感できません。

不動産投資の節税効果を売り文句にしている業者も多いのですが、その中身をしっかり確認してから話を聞いたほうがいいかもしれません。