公務員の中には写真、イラスト、動画等のコンテスト等に入賞している方も多く、玄人はだしの方が珍しくありません。
そんな特技を活かせるのがストックフォトで、副業にできる方もいらっしゃるでしょう。
ただ、公務員の副業にストックフォトはそれほど向いているわけではありません。
目次
ストックフォトと公務員
ストックフォトとは
ストックフォトとは、写真、イラスト、動画などの素材を登録し、それを利用する人からその使用料を受け取る仕組みです。
写真、イラスト、動画などを撮影・作成するクリエイターにとっては、発表の場を得るのと同時に報酬も得ることもできるので、有用な仕組みといえるでしょう。
PIXTA、Photolibrary、iStockphotoなどをはじめ、多数のストックフォトが運営されています。
ストックフォトは公務員も取り組みやすい
一眼デジカメや4K撮影が可能なデジタルビデオカメラなど、高額な機材が必要なことも多いのですが、スマホで撮影した写真や動画でも販売対象にできるストックフォトもあり、参入障壁は低くなっています。
ただ、参入障壁こそ低いものの、カメラマンなどのプロも参入していますから競争は激しくなっています。
副業でストックフォトで写真等を販売する場合には、プロが狙わないようなニッチな市場を狙ったり、オリジナリティのある写真等を撮影したりする必要があるでしょう。
もちろん、腕に覚えがあるのであれば、正面からプロと勝負するのもありです。
ストックフォトは公務員の副業向きではない
公務員には写真やイラストを趣味にしている方が多いので、副業にしたい方も多いのではないでしょうか。
技術的にはプロに太刀打ちできる玄人はだしの方もたくさんいらっしゃいますから。
でも、ストックフォトから報酬を受け取った時点で法律違反です。
国家公務員法・地方公務員法に違反して懲戒処分の対象となります。
公務員の服務上の義務と懲戒処分
公務員は、国家公務員法または地方公務員法で副業が制限されていますが、人事院の承認または任命権者の許可を得ることで副業をすることができます(国家公務員法第103条、地方公務員法第38条)。
しかし、この承認または許可には一定の基準があって、ストックフォトの副業はこれを満たすものではありません(人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)及び人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について)。
ストックフォトでの副業は国家公務員法・地方公務員法に違反することになり、懲戒処分の対象になります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。
人事院の「懲戒処分の指針について」によれば、自ら営利企業を営むことの承認を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする、のが標準となっています。
大雑把にいえば、ストックフォトから報酬を得たことがばれたら、減給または戒告となるのが標準的な取り扱いです。
ストックフォトからの報酬は「報酬」ではない?
ストックフォトからの報酬は国家公務員法・地方公務員法の「報酬」にあたらないので、公務員であっても制限されないとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
でも、残念ながらストックフォトからの報酬も「報酬」です。
報酬とは
行政法の通説的には、報酬とは、労務、労働の対価として支給あるいは給付されるもので、経常的なものであるものと一時的なものであるものを問いません。
ただし、たとえば講演料、原稿料、布施、車代等のように謝金、実費弁償に当たるものは報酬に含まれないとされます。
ストックフォトからの報酬は労働の対価ではなく、むしろ写真などの利用に対する謝金にあたるのではないかと考えたくなります。
ストックフォトの報酬は「報酬」
しかし、ストックフォトの登録並びに写真などの準備及びアップロードは労働と考えられますし、報酬の支払いはストックフォトとの双務契約に基づく出来高払いでされる以上、謝金等に該当するものではありません。
解釈をめぐって当局と争ってもいいですが、勝つことは難しいでしょう。
当局が簡単に抜け道を認めることはないですから。
しかも、標準的な懲戒処分が減給または戒告ですから、裁判に持ち込んでも救済されることはほぼないでしょう。
結局、懲戒処分を受ける覚悟があるのでなければ、ストックフォトを副業にすべきではありません。
ストックフォトの副業はばれにくかったりばれやすかったり
ストックフォトの副業はばれにくい
ただ、ストックフォトの副業はばれにくい側面があります。
- ニックネームでの販売ができる
- 確定申告が不要にすることもできる
ニックネームでの販売ができる
ニックネーム等、本名がわからないようにして販売することで、身バレを防ぐことができます。
公務員の副業で怖いのが本人が特定されること、身バレです。
ニックネーム等が使えれば、身バレの危険を少なくすることができます。
確定申告が不要にすることもできる
副業がばれるルートとしては、確定申告の結果が職場に伝わるというのがあります。
普通徴収にする等対策はあるのですが、失敗することもあり、そこから副業がばれることもあるのです。
確定申告が不要になれば、副業がばれるルートを一つ減らすことができます。
ストックフォトからの報酬は税務上雑所得にあたります。
雑所得は収入からそれを得るために必要な経費を控除して計算できます。
カメラやレンズ、パソコンやタブレット等の機材に要した費用を控除することで、所得を確定申告が必要になる20万円未満にすることができます。
写真、イラスト、動画等は高額の機材が多いので、経費が報酬を上回ることも多いでしょう。
これによってばれるおそれを一つ減らすことができます。
もっとも、経費が報酬を上回って赤字になったとしても、人事院の承認や任命権者の許可が不要になるわけではないことには注意が必要です。
報酬を得ていることがばれれば懲戒処分の対象にはなります。
ストックフォトはばれやすい
ストックフォトの副業は逆にばれやすい側面もあります。
- 現実の行動と対応してしまう
- 登場人物からばれてしまう
- 作風から本人がばれることがある
現実の行動と対応してしまう
写真や動画の撮影は、旅行であったり、家族サービスのついでであったり、基本的には本人がその場に行っているものです。
だから、同僚や上司に旅行などに行ったことを話してしまうと、写真等との対応から本人がばれてしまうことがあります。
登場人物からばれてしまう
ストックフォトで素人が稼ぎやすいのは人物が入ったものです。
肖像権等の権利関係をクリアしやすい家族を使った写真は、素人がプロを出し抜ける手段です。
ただ、これは身バレの覚悟が必要です。
後ろ姿であっても、わかる人にはわかります
作風から本人がばれることがある
見る人が見れば、作風でクリエイターがわかります。
特にイラストは危険ですし、写真や動画等でも身バレの危険はあります。
公務員のストックフォト副業には覚悟がいる
ストックフォトは公務員の副業にそれほど向いていません。
ばれれば懲戒処分(減給または戒告が標準)の対象になります。
確かに、ニックネームでの販売や確定申告を不要にすることで、副業をばれにくくすることもできます。
しかし、現実の行動との対応や登場人物、作風などからクリエイターが身バレすることもあります。
ストックフォトを副業にしていることが当局にばれれば懲戒処分の対象となります。
その覚悟がない限り、ストックフォトを副業にすべきではありません。
表現者、クリエイターの心が騒いだとしても、ばれれば懲戒処分の対象になること忘れないようにしてください。