あまりいい感じではないのですが、株式に関連して発生した公務員の不祥事をまとめました。


公務員の株取引・株式投資に問題ないのが前提

公務員が株取引や株式投資をすることに、基本的には問題ありません。
預貯金と同様に資産運用に手段として、株取引や株式投資については公務員も基本的には制限されません。

ただし、法令に違反する行為や公務員の服務上の義務に違反する行為まで認められるわけではありません。

公開株式の譲渡・贈収賄事件

殖産住宅事件

昭和47年、大蔵省証券局証券監査官と東京証券取引所上場部次長が、殖産住宅相互株式会社の新規二部上場に関する審査等の謝礼として、公開価格での公開株式の割り当てを受けた。
上記二名が収賄罪、これを提供した殖産住宅相互株式会社の役員等が贈賄罪に問われた。
第一審、控訴審とも有罪、昭和63年に最高裁が被告側の上告を棄却、有罪が確定。

参考:Wikipedia 殖産住宅

事件の発覚は殖産住宅相互株式会社の会長の新規上場にからむ脱税からです。
ということは贈賄側が違っていれば発覚しないままだった可能性もあります。

未公開株の譲渡・贈収賄事件

リクルート事件

リクルートのグループ企業「リクルートコスモス」の未公開株が政治家や官僚らにばらまかれた。
政界の実力者への譲渡が表面化し、これをきっかけに竹下登元首相は退陣に追い込まれた。
譲渡先は政界、労働省、文部省、NTTの4ルートとされ、東京地検が藤波孝生元官房長官ら政治家2人を含む計12人を起訴され、いずれも執行猶予付きの有罪判決が確定。

昭和63年、川崎市助役への株譲渡を朝日新聞横浜支局の記者がスクープ、発覚の契機に。
発覚後、助役は解職されたものの、不起訴処分となっている。

参考:朝日新聞 リクルート事件に関するトピックス
   Wikipedia リクルート事件

昭和の不祥事はスケールが大きいです。
公務員といっても特別職の公務員も多く、参考になるところは少ないかもしれません。

インサイダー取引事件

経済産業省審議官インサイダー取引事件

平成21年、経済産業省商務情報政策局審議官が、半導体大手「NECエレクトロニクス」と「ルネサステクノロジ」が合併するという内部情報を得て、妻名義の証券口座を利用して5,000株を購入。値上がりした後で市場で売却し利益を得た。
さらに半導体大手「エルピーダメモリ」再建策の情報を得て、その公表前に同社の3,000株を購入した。

一審は、懲役1年6月執行猶予3年及び罰金100万円、課徴金1031万9500円の判決、控訴審では控訴棄却、上告も棄却され、一審の判決が確定。

参考:日本経済新聞 経産幹部をインサイダー取引容疑で逮捕 東京地検
   Wikipedia 経済産業省審議官インサイダー取引事件

平成になると不祥事の規模も理解できる程度になります。
ちなみに審議官側はインサイダー取引ではなかったとして裁判で争っています。
株式購入時点でメディアへのリークがあり、関連する記事もあったこと等から、「重要事実」は既に公表されており、インサイダー取引には当たらないとしたのです。

第一に、「本件重要事実は、金融商品取引法166条4項、同法施行令30条1項1号に基づき、NECエレクトロニクス社の代表取締役等が二以上の報道機関に公開したことにより公表され、金融商品取引法166条1項による規制(以下「インサイダー取引規制」という。)の対象外となった可能性が高く、少なくともかかる方法により公表されていないことにつき検察官が立証責任を果たしていない」
第二に、「本件重要事実は、平成21年4月16日付け日本経済新聞朝刊及びそれに引き続く一連の報道により既に公知の状態となっており、金融商品取引法166条所定の「重要事実」性を喪失し、インサイダー取引規制の効力が失われていた」

これに対し、最高裁は「本件のように、会社の意思決定に関する重要事実を内容とする報道がされたとしても、情報源が公にされない限り、法166条1項によるインサイダー取引規制の効力が失われることはない」と判断しました。

妻名義の口座で、ほぼ確実に値上がりが見込まれる約800万円の株を取得。
後ろ暗い取引と見られても仕方がないかもしれません。

職務専念義務違反

職務専念義務違反の不祥事です。
これは一歩間違えば誰でも起こしかねない不祥事です。
だからこそ気を付けなければなりません。

停職1カ月の事例(平成25年10月)

勤務中に株取引…警察庁キャリア職員を懲戒処分

2013/10/11 08:00
勤務時間中に繰り返し株取引を行ったなどとして、警察庁は45歳の男性キャリア職員を停職1カ月の懲戒処分にしました。
 懲戒処分を受けたのは、長官官房付の男性キャリア職員です。職員は2010年3月から3年にわたり、当時勤務していた四国管区警察局のパソコンなどを使って、勤務中に約3900回の株取引をしていました。損失が出た際には、個人的な知り合いらから合わせて約800万円を借りたこともあったということです。警察庁は、国家公務員法の職務専念義務違反にあたるとして、懲戒処分としました。職員は、辞職の意向を示しているということです。

平成25年10月11日 テレビ朝日ニュース:https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000013967.html

停職1カ月の事例(平成26年12月)

勤務時間中にネット株取引300回 神戸公安調査事務所長を停職1カ月

 公安調査庁は25日、勤務時間中にインターネットで株取引を行ったとして、神戸公安調査事務所長(54)を停職1カ月の懲戒処分にした。同事務所長は事実関係を認めており、同日付で辞職した。前職と現職の近畿公安調査局長については、監督責任を十分に果たせなかったとして厳重注意処分とした。

 公安庁によると、同事務所長は昨年1月から今月まで、所長室で公務用パソコンや私物のスマートフォンで勤務時間中に約300回にわたり株取引を行い、国家公務員法(職務専念義務、信用失墜行為の禁止)に違反した。

 同調査局内で先月に広まった情報をもとに公安庁で内部調査していた。

 公安庁は「服務規律の順守、倫理保持に対する職員の意識改革のための指導を徹底する」と話している。

平成26年12月25日 産経ニュース: https://www.sankei.com/affairs/news/141225/afr1412250015-n1.html

減給10分の1(3カ月)の事例(平成30年4月)

国税徴収官を減給処分 勤務中スマホで株取引

2018/4/14 9:25
東京国税局は14日までに、勤務時間中にスマートフォンで株取引をしたのは国家公務員法が定める職務専念義務に反するとして、都内の税務署に勤める国税徴収官(41)を減給10分の1(3カ月)とする懲戒処分を発表した。
同局によると、徴収官は2013年1月~17年8月、勤務中に証券会社のサイトにアクセスし、計1314回取引した。
この徴収官は、同局調査部に勤務していた15年11月~16年1月、内規に反して、所管する法人1社の株も取引した。インサイダー取引に当たる行為はなかったという。

平成30年4月14日 日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29401980U8A410C1CC0000/

減給10分の1(3カ月)の事例(平成30年6月)

株式取引だけでなく、FXも同時期にしていた事例もあります。

勤務中にスマホで株、FX 国税調査官を懲戒処分 4年半で2291回「ほとんど損失」

 東京国税局は8日、勤務中にスマートフォンで株取引や外国為替証拠金取引(FX)を計2291回したとして、千葉県内の税務署で資産課税部門に所属する男性国税調査官(35)を同日付で減給10分の1(3カ月)の懲戒処分にしたと明らかにした。

 調査官は平成25年1月~昨年7月、庁舎内のトイレや出張中の電車内で、スマートフォンで証券会社のサイトにアクセスしていた。取引の結果はほとんどが損失でインサイダー取引はなかった。調査官は「自制心が働かずやってしまった」と反省しているという。

平成30年6月8日 産経新聞
https://www.sankei.com/affairs/news/180608/afr1806080026-n1.html

贈収賄事件やインサイダー取引事件と違い、職務専念義務違反については懲戒処分で終わっています。
職務専念義務違反は国民・住民・納税者への背信行為であり許されるものではありません。
しかし、大きな実害を外部に及ぼしていないと判断されたのでしょう、職員の非違行為に対する制裁として懲戒処分となっています。

株式にかかる懲戒処分の量定

人事院の「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68)によれば、勤務態度不良による処分の標準例として、「勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする」としています。
また、「具体的な処分量定の決定に当たっては」、「適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする」とされています。

懲戒処分の標準例では、職務専念義務違反は減給または戒告となっていますが、上記の4つの事例では戒告になっているものはなく、減給より重いものとなっています。

平成25年10月の事例では、キャリアであったこと、備品である職場のパソコンの使用といったことが考慮されたのでしょう、より重い停職の処分になっています。
平成26年12月の事例では、やはり管理職であったこと、職場のパソコンの使用といったことが考慮され、停職処分となったと考えられます。

気になるのは、キャリア職員も公安調査事務所長も辞職をしていることです。
辞職をしていなければより重い処分になっていたかもしれません。

平成30年4月の事例では取引回数が約1,300回ですが所管法人株の取引という内規違反がありました。
一方、平成30年6月の事例では、取引回数が約2,300回と多いのですが、職務専念義務違反以外の非違行為は報道されていません。
それでも、両者とも減給10分の1(3カ月)の処分となっています。

ほぼ同時期の処分ですから、均衡が図られているはずです。
報道だけから判断すると、取引回数も処分の量定に影響を及ぼすということになるでしょう。