公務員の副業解禁が話題になったのは2018年のことでした。
2020年現在、地方公務員の副業解禁はどこまで進んでいるのでしょうか。


地方公務員の副業は本当に解禁される?

2019年の時点で全国の4割ほどの地方自治体が副業の許可基準を明確化しているらしく、その面では地方公務員の副業に関する環境整備は進んでいるでしょう。

しかし、「副業解禁」とは違った方向に行っているようです。

広がる地方公務員の副業 人手不足で年4万件超

 人手不足を背景に地方公務員の副業が広がっている。副業には自治体の許可が必要だが、総務省によると、2018年度の許可件数は全国で4万1669件に上る。社会貢献につながる副業をしやすいよう環境整備を進める自治体もある。

 地方公務員が営利企業で働いたり、報酬をもらって事業をしたりすることは法律で原則禁じられている。自治体が認めれば副業を行えるが、許可の基準が明確ではないケースがあり、二の足を踏む職員が多かった。
 ただ、人手不足や働き方改革を受け、近年は地方公務員が地域活動に参加することが期待されている。このため、どのような条件で副業を認めるかを示した基準をつくり、職員の活動を促す自治体が相次いでいる。
 総務省の調査によると、18年度に許可された副業のうち、社会貢献活動は1万1506件。伝統行事や防災・防犯活動、スポーツや文化芸術活動の支援が代表的だ。それ以外の農業や不動産賃貸、家業の手伝いなどは3万163件だった。
 社会貢献につながる副業をいち早く促したのが神戸市だ。17年4月から報酬をもらう地域活動への参加を後押しする制度を始めた。5年以内に副業先との契約に関する業務をしていないことが主な条件。これまで15人が須磨海岸での障害者支援や、古民家活用の調査などを行った。市の担当者は「地域の役に立ちたいという意欲がある職員にはどんどん利用してほしい」と呼び掛ける。
 北海道鹿部町は19年11月、副業を認める基準を明確化した。公共性の高いものが対象で、人手不足が進む基幹産業のホタテ、コンブ漁の手伝いなどを想定。町外出身の職員が多く、現場を体験することで地域に根差した人材の育成につなげる狙いもある。町の担当者は「地域課題に直接触れ、その経験を普段の業務にも生かしてもらえれば」と期待している。

時事ドットコムニュース 令和2年1月6日
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020010500212

印象としては総務省の広報そのままの記事のようです。

地方公務員は地域活動に

地方公務員に期待されるのは「地域活動に参加すること」ことで、「人手不足や働き方改革」の中でも生産的な活動に参加することではないのです。

「地域の役に立ちたいという意欲がある職員」であれば、より生産的な活動に取り組み、経済活動を活発にすることを望むと思われるのですが、求められるのは「地域活動に参加すること」です。

「地域課題に直接触れ、その経験を普段の業務にも生かしてもらえれば」との北海道鹿部町の担当者の声がありますが、現場職員は日々地域の課題に触れています。

むしろ地域の課題に触れてほしいのは幹部職員です。

いくら仕事とはいえ、「人手不足が進む基幹産業のホタテ、コンブ漁の手伝いなど」を「公共性の高いもの」と語らなければならないのですから問題は深刻です。

総務省も地域活動を求めている

令和元年11月22日開催の第32次地方制度調査会第26回専門小委員会で配布された資料に「地方公務員の社会貢献活動に関する兼業について」があります。

この中に、地方公務員の兼業制度の概要と実態、具体的事例が分析・記載されています。
兼業をめぐる最近の動向として、「地方公務員も地域社会のコーディネーター等として、公務以外でも活躍することが期待されるようになっている。」としています。

地方公務員は滅私奉公?

結局、地方公務員の「副業」として考えられているのは、「地域活動」に貢献する範囲でということになるのでしょう。

勤務時間は全体の奉仕者、勤務時間外は地域活動に貢献することになり、滅私奉公をしなければならなくなるのです。

地方公務員の「副業解禁」が必要

地域活動は維持できない

人口減少が進む中、これまでの地域活動をそのまま維持することは不可能です。
仮に今後数年間地域活動を維持できたとして、その後立ち行かなくなるのは目に見えています。

どうやっても辻褄の合わない収支を当面取り繕おうとする方策が、今進んでいる地方公務員の副業解禁です。

課題解決には規制緩和が必要

課題というのは、これまでのやり方で解決できないから課題になります。

地域活動を維持するために地方公務員を参加させても、地域の課題は課題のまま、解決できません。
地域の課題を解決するためにはこれまでと違うやり方をしていくしかなく、そのためには規制緩和が有効です。

規制緩和としての副業解禁

その一つに「副業解禁」があるでしょう。
地方公務員の副業を解禁し、自由に経済活動をさせて、その中から地域の課題を解決する方法を見つけるのです。

そもそも解決策がわかっているのならそれを実行すればいいだけです。
公費を支出すれば地域の課題などなくなります。

しかし、現実には解決策は試行錯誤の中で見つけていくしかありません。
何が解決策になるのか、事前にはわからないことばかりです。

だからこそ地方公務員にも副業を解禁して、試行錯誤しやすい環境をつくり、その中で地域の課題を解決する方法を探っていくのです。

しばらくは準備期間と心得て

現実的には、地方公務員の副業解禁までにはもう少し時間がかかるでしょう。

少なくとも、現在進められている副業解禁では地域活動が維持できないと判明するくらいの時間が必要です。

ただ、地域活動が維持できなくなるのは時間の問題です。
その時、再び副業解禁へ動くことになるでしょう。

その時に何の準備もできていなければどうにもなりません。

確かに、今日明日に地方公務員の副業が解禁されることはないかもしれません。
しかし、それは何の準備もしなくていいことを意味しません。
いずれ来る副業解禁に備えておくことは重要になっていくのです。