公務員のアフィリエイトに関する判例が出てくることはないでしょう。
判例というからには、少なくとも裁判になり、判決が出なくてはならないからです。

また、公務員がアフィリエイトに関する懲戒処分の量定は、減給または戒告が標準となっていますが、事案ごとの事情を勘案して処分の軽重が決まることになっています。

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公務員のアフィリエイトに関する判例

公務員のアフィリエイトに関する判例は今のところありませんし、今後も出てくることはないと考えられます。

懲戒免職でなければ裁判にもならない

裁判を通して回復できる利益が、裁判に必要な費用を上回らなくては争う意味はありませんし、そもそも勝てる見込みがなければ裁判で争おうともしないでしょう。

裁判で回復できる利益がそれに要する費用を上回り、しかも勝てる見込みがあるのは、アフィリエイトが理由で懲戒免職となったものの、その処分が不当に重いと判断されるような場合です。

したがって、懲戒免職より軽い処分だったり、懲戒免職になったとしてもその量定が妥当と考えられたりする場合には、そもそも裁判にもならないのです。

当局も懲戒免職には慎重になる

裁判になりかねないのですから、当局は懲戒免職に慎重になります。

裁判になった場合、多くの手間と時間をかけて処分の妥当性を証明していかなければなりません。
当局としてもそんなことはしたいとは思いませんから、不当と思えるほど重い量定をしようとはしないでしょう。

重大な犯罪行為等があった場合を別とすれば、アフィリエイトをしていたことだけをもって懲戒免職とするような冒険はしないと考えられます。

公務員のアフィリエイトの判例は出てこない

以上から、今後も公務員のアフィリエイトに関する判例が出てくることはないと考えられます。

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公務員のアフィリエイトで懲戒免職の可能性

公務員のアフィリエイトが原因で懲戒免職になる可能性について、もう少し検討します。

懲戒処分の量定、どんな懲戒処分とするかを決めるために、基準が定められています。

公務員の懲戒処分の量定について

人事院の「懲戒処分の指針について」では、自ら営利企業を営むことの承認を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする、としています。
それに懲戒権者が個別の事情を考慮して処分の軽重を決めるのですが、犯罪行為等重大な悪質性がない限り懲戒免職まではならないものと考えられます。

懲戒処分の指針について

別紙

懲戒処分の指針
第1 基本事項
本指針は、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げたものである。
具体的な処分量定の決定に当たっては、
①非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
②故意又は過失の度合いはどの程度であったか
③非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
④他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
⑤過去に非違行為を行っているか
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする。
(中略)
第2 標準例
1 一般服務関係
(中略)
(10) 兼業の承認等を得る手続のけ怠
営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、その他事業若しくは事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。

人事院「 懲戒処分の指針について 」

ちなみに、標準例のうちでアフィリエイトに関連して懲戒免職になりうるものを挙げると、免職または停職として次のようなものがあります。

  • 21日以上の欠勤
  • 違法な職員団体活動の企画、共謀、教唆、あおり行為
  • 秘密漏洩
  • 詐欺・恐喝

これほど重大な非違行為であっても免職または停職となっており、必ず懲戒免職になるわけではありません。
よほど悪質性の高い事例でなければ、懲戒免職にはならないのです。

なお、地方公務員の懲戒処分の量定については、各自治体が懲戒処分の指針を定めることになっていますが、人事院の「懲戒処分の指針について」と同内容のものとなっています。

公務員がアフィリエイトで懲戒処分にはほぼならない

逆に、重大な違反がなかったにもかかわらず懲戒免職となった場合には、懲戒権の濫用となるでしょう。

アフィリエイトが原因で懲戒免職となる可能性は、まったくないとは言いませんが、極めて低いものなのです。

判例とは

判例とは

判例は、同種の事件を裁判する際の先例となるもので、先例として一般性をもつものです。
したがって、すべての裁判が先例として一般性をもつとは限りません。
下級審の判決があったからといって、それが直ちに判例になるものではありません。

この点、裁判所法第4条は、上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する、としています。
これによれば、最高裁判所の判決・決定を「判例」、下級審のものを「裁判例」と区別し、最高裁判所の判決・決定が「判例」となる資格を有すると考えてよさそうです。

判例となるには

基本的には最高裁判所の判決が必要

判例として同種の事件を裁判する際の先例となるためには、最高裁判所の判決が出されることが必要です。
そのためには、地方裁判所及び高等裁判所の判決を経なければなりません。

裁判となるためには

そもそも裁判になるためには、懲戒処分が出され、この懲戒処分に対する不服申立て(審査請求)が棄却されることが前提になります。

公務員のアフィリエイトにかかる懲戒処分

裁判なるには、まずアフィリエイトをしていることが当局にばれ、これに対して懲戒処分が出されることが必要です。

この懲戒処分に対する救済として、職員は不利益処分取り消しの訴えを裁判所にすることができます。
ただし、そのためには予め不利益処分に対する不服申立て(審査請求)を経なければなりません。

懲戒処分に対する不服申立て

不利益処分の取消の訴えについては、不服申立前置主義が採られているため、不服申立て(審査請求)に対する人事院または人事委員会もしくは公平委員会の裁決又は決定を経た後でなければ、提起することができません。

懲戒処分に対する不服申立て(審査請求)が棄却されてはじめて不利益処分の取消の訴えができるようになります。

逆に、懲戒処分に対する不服申立て(審査請求)により懲戒処分が取り消されれば、訴える利益がなくなりますので裁判にはなりません。
また、懲戒処分がより軽いものに修正され、裁判を通して得られる利益が裁判に要する費用を下回った場合にも裁判に訴える意味がなくなり、裁判にはならないでしょう。

裁判(処分取消の訴え)

懲戒処分に対する不服申立て(審査請求)の棄却を受けて、ようやく不利益処分の取消の訴えができるようになります。

しかし、これで終わったわけではなく、ようやく入口にたどり着いたところです。
裁判には時間も費用もかかります。
最高裁判所まで争えば、とんでもない負担になります。
しかも、裁判に勝てるとは限らないのです。

裁判で争う意味について

裁判により回復する利益と要するコストを検討します。

裁判により回復する利益

裁判に勝った場合

裁判に勝った場合に得られるのは、懲戒処分の取消です。

  • 履歴から処分が消されます。
  • 免職
    • 職員の地位が回復されますし、処分があった日から判決までの間に受けたであろう給料等を得られることになります。
    • 一定期間公職につけない等の制限もなくなりますが、裁判の期間にそれも終了しているでしょう。
  • 停職
    • 停職がなかったものとなり、その期間の給料を得られます。
  • 減給
    • 減給期間に減った分の給料が得られます。
  • 戒告
    • 戒告がなかったことになります。

履歴から懲戒処分が消えるので、名誉回復的な意味はあります。
ただ、経済的な利益としては懲戒免職の場合を以外では大きくはありません。

裁判に負けた場合

裁判に負けた場合には、懲戒処分の内容が確定します。
得られるものはありません。

裁判に要するコスト

  • 経済的コスト
    • 弁護士費用が相当な金額になるでしょう。
  • 時間的コスト
    • 懲戒免職以外の場合には職務をしながら、職務専念義務を果たしながらになるので、大きな負担です。

裁判での損益を計算

懲戒免職以外の場合、経済的得られるものはわずかです。
しかも、裁判に勝てなければ何も得られません。

これに対して、大きな経済的・時間的なコストは確実にかかります。

損益がプラスになる可能性があるのは、懲戒免職の場合で、しかもその処分が不当に重かった時に限られます。

裁判をする利益がある場合は少ない

合理的に考えれば、懲戒免職になった場合で、裁判に勝てる見込みがある場合しか裁判にならないでしょう。

例えば、承認または許可を得ずにアフィリエイトから莫大な収入を得ていた場合で、それを懲戒権者が重大であると判断して、標準例よりもはるかに重い処分である懲戒免職を科したような時には、裁判で争う合理性があるかもしれません。

もっとも、裁判になるような危険を冒す懲戒権者がいるとは普通は考えられませんし、そのような処分であれば審査請求の段階で処分が取り消されるのが普通でしょう。

現実的に単純なアフィリエイトのせいで裁判に至るケースはあり得ないでしょう。

今後も公務員のアフィリエイトの判例はない

アフィリエイトのほかには違反行為がないにもかかわらず懲戒免職になった場合には訴訟になり、最高裁判所まで争われれば、それが判例になります。

ただ、きわめて個性的な団体がきわめて個性的な懲戒処分をし、しかも人事院、人事委員会等がその処分を妥当と判断した場合しかこのような事態は起こりません。
今時懲戒免職を濫発するような判断はあり得ないでしょう。

今後も公務員のアフィリエイトの判例は出ることはないと考えられます。

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