公務員が兼業・副業で株主になっても、原則的には問題ありません。
株主になったとしても投資の範囲である限り、資産運用・利殖の手段です。
公務員であっても兼業制限にはかかりません。
ただ、一部の公務員は注意が必要です。
また、投資の範囲を超えて株式を保有する場合には注意することがあります。
目次
公務員が株主になってもいい
公務員が資金運用の手段として株主になることを禁止する規定はありません。
国家公務員法も地方公務員法も、公務員が株を取得・保有することを禁じてはいません。
もちろん、贈収賄等の不正な手段で取得することは禁止されていますが、これは株主になることを制限しているのではなくて、公務の中立性・公平性を確保するためです。
公務員であっても、人事委員会の承認または任命権者の許可を得ることなく、株主になることができます。
国家公務員法第103条(私企業からの隔離)
国家公務員法第103条
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
2 前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
国家公務員法第104条(他の事業又は事務の関与制限)
国家公務員法第104条
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
公務員が株主になる際の注意
大株主になる場合
ただし、大株主になる場合には注意が必要です。
人事院規則で企業経営に参加し得る国家公務員は、株式の取得・譲渡等の報告しなければなりません。
国家公務員が株式会社の発行済株式の総数の1/3超または特例有限会社の発行済株式の1/4超の株式を保有する場合で、その会社がその国家公務員が在職する機関と「密接な関係」にあるときは、その国家公務員は所轄庁の長等を経由して、人事院に報告しなければなりません(人事院規則14―21(株式所有により営利企業の経営に参加し得る地位にある職員の報告等)。
また報告があった所轄庁の長等は、職務遂行上適当でないかどうかの見解や配置換等の有無等を記載した書類を報告書に添付して人事院に送付します。
中立性・公平性が求められる公務員には、報告義務があるのは仕方がないことでしょう。
それでも、求められるのは報告であって、株式を売却する等は必要ありません。
しかも、場合によっては配置換等もしなくて済むのです。
そもそも企業の発行済み株式の1/3超を保有する公務員は、それほど多くはないでしょう。
人事院規則14―21(株式所有により営利企業の経営に参加し得る地位にある職員の報告等)
人事院規則14―21(株式所有により営利企業の経営に参加し得る地位にある職員の報告等)
第二条 職員(非常勤職員(法第八十一条の五第一項に規定する短時間勤務の官職を占める職員を除く。)及び臨時的職員を除く。以下同じ。)が株式会社の発行済株式の総数の三分の一を超える株式又は会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)第三条第二項に規定する特例有限会社の発行済株式の四分の一を超える株式を有する場合で、当該株式会社又は当該特例有限会社(以下「会社」という。)が当該職員の在職する国の機関(会計検査院、内閣、人事院、内閣府、各省並びに宮内庁及び各外局をいう。)又は行政執行法人(以下「在職機関」という。)と密接な関係にあるとき(以下「株式所有により営利企業の経営に参加し得る地位にある場合」という。)は、当該職員は、株式所有状況報告書により、所轄庁の長又は行政執行法人の長(以下「所轄庁の長等」という。)を経由して、人事院に報告しなければならない。
2 前項の「密接な関係」とは、次のいずれかに該当する場合の会社と在職機関との間の関係をいう。
一 会社が在職機関の有する法令に基づく行政上の権限(単に報告を受ける等の権限を除く。)の対象とされている場合
二 株式所有状況報告書の作成の日から五年さかのぼった日の属する年度以降の年度(その日の属する年度にあっては、その日以降の期間に限る。)のうちのいずれかの年度において会社と在職機関との間で締結した契約の総額が二千万円以上である場合
三 会社が在職機関による行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第六号に掲げる行政指導の対象とされている場合
3 略
4 所轄庁の長等は、前項の規定により株式所有状況報告書が提出された場合には、次条第一項の基準に照らし職員の職務遂行上適当でないかどうかの見解、配置換その他の方法による職員の職務内容の変更の有無及びその他の参考となる事項を記載した書類を添付して遅滞なくこれを人事院に送付するものとする。
本省審議官級以上の国家公務員の場合
本省審議官級以上の職員は、毎年の株取引等についての株取引等報告書を、各省各庁の長等に提出しなければなりません(国家公務員倫理法第7条)。
これは株主になることを制限するものではなく、報告を義務付けるものです。
それに提出義務があるのは本省審議官級以上の職員、つまり次官級、局長級や局次長級ですから、大多数の公務員には関係ありません。
本省審議官級の職員、または将来本省審議官級以上になろうとする職員にとっては注意が必要でしょう。
国家公務員倫理法
国家公務員倫理法
(株取引等の報告)
第七条 本省審議官級以上の職員は、前年において行った株券等(株券、新株予約権証券又は新株予約権付社債券をいい、株券、新株予約権証券又は新株予約権付社債券が発行されていない場合にあっては、これらが発行されていたとすればこれらに表示されるべき権利をいう。以下この項において同じ。)の取得又は譲渡(本省審議官級以上の職員である間に行ったものに限る。以下「株取引等」という。)について、当該株取引等に係る株券等の種類、銘柄、数及び対価の額並びに当該株取引等の年月日を記載した株取引等報告書を、毎年、三月一日から同月三十一日までの間に、各省各庁の長等又はその委任を受けた者に提出しなければならない。
2 各省各庁の長等又はその委任を受けた者は、前項の規定により株取引等報告書の提出を受けたときは、当該株取引等報告書の写しを国家公務員倫理審査会に送付しなければならない。
株主になると悩みごとが
ほとんどの公務員にとっても株主になることに問題はありません。
職場や上司に知られても、制度的には問題にはなりません。
だからといって株主だと公言することはおすすめしません。
同僚の嫉妬
同僚の嫉妬は百害あって一利なしです。
公務員であれば、毎日バカのふりをているのではないでしょうか。
職場でうまくやっていくために、プライドを捨てて、バカのふりをしているでしょう。
でも、株主であることが同僚にばれれば、そんな苦労は水の泡です。
上司の指導
部下が株主だということを心配がる上司も稀にいます。
時には口うるさく指導してくることもあります。
バブル崩壊を知っていると、株は危ない、と信じるようになるのでしょうか。
公務員が株主になってもほぼ問題ない
公務員が株主になっても、兼業には当たらず、問題になりません。
大株主になった場合や高いポストに就いた場合に報告義務が課される等がありますが、ほとんどの公務員にはそれもありません。
安心して株主になってください。
もっとも、株主であることが周囲にばれると、無用の軋轢を生む場合がありますから、これには注意が必要です。