厚生労働省が平成30年1月に定めた「モデル就業規則」では、労働者は、事前に会社に所定の届出を行うことで、勤務時間外に他の会社等の業務に従事することができるようになっています(「モデル就業規則」第67条第1項、第2項)。

これに対し公務員には、原則として副業を制限され、例外として人事院の承認または任命権者の許可を得ることを条件に一部の副業が認められます。

モデル就業規則の事前届出制に対して、公務員の副業規定は許可制がとられており、より厳しい制限となっています。


公務員の副業を制限する規定

原則として、国家公務員法または地方公務員法で副業が制限されています(国家公務員法第103条第1項、地方公務員法第38条)。
ただし、人事院の承認または任命権者の許可を得ることで副業をすることができます(国家公務員法第103条第2項、地方公務員法第38条)。

この承認または許可には基準があり、これを満たすものは限定されており(人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)及び人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について)、ほとんどの副業は禁止されているのと同じです。

このため公務員の副業は禁止されていると言われます。

国家公務員について

国家公務員法
§103(私企業からの隔離)職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
第2項前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
§104(他の事業又は事務の関与制限)職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

人事院の副業承認要件

その職員の占めている官職と当該営利企業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがない
かつ
営利企業に従事しても職務の遂行に支障がないと認められる
法の精神に反しないと認められる場合として人事院が定める場合

地方公務員について

地方公務員法
§38(営利企業等の従事制限)職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない

公務員ができる副業

国家公務員法、人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)及び人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用についてから、公務員ができる副業は次のとおりです。

人事院の承認または任命権者の許可がなくてもできる副業

  • 投資
  • 謝金としての講演料・原稿料しかもらわない講演家・作家
  • 営利を目的としない小規模農業
  • 一定規模未満の不動産賃貸経営
  • 一定規模未満の太陽光電気の販売

人事院の承認または任命権者の許可があればできる副業

  • 営利を目的とする大規模農業
  • 一定規模以上の不動産賃貸経営
  • 一定規模以上の太陽光電気の販売

いずれも承認基準に適合する必要があります。

公務員の副業を制限する規定(抜粋)

国家公務員法第103条(私企業からの隔離)
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
2 前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。

国家公務員法第103条

国家公務員法第104条(他の事業又は事務の関与制限)
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

国家公務員法第104条

地方公務員法第38条(営利企業への従事等の制限)
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。

地方公務員法第38条

人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)
1 職員が営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね又は自ら営利企業を営むこと(以下「役員兼業等」という。)については、人事院又は次項の規定により委任を受けた者は、その職員の占めている官職と当該営利企業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがなく、かつ、営利企業に従事しても職務の遂行に支障がないと認められる場合であって法の精神に反しないと認められる場合として人事院が定める場合のほかは、法第百三条第二項の規定により、これを承認することができない。

人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)

人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について
第1項関係
5 「人事院が定める場合」は、次に掲げる場合とする。
一 不動産又は駐車場の賃貸に係る自営を行う場合で、次に掲げる基準のいずれにも適合すると認められるとき。
(1)職員の官職と承認に係る不動産又は駐車場の賃貸との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがないこと。
(2)入居者の募集、賃貸料の集金、不動産の維持管理等の不動産又は駐車場の賃貸に係る管理業務を事業者に委ねること等により職員の職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること。
(3)その他公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと。
二 太陽光電気の販売に係る自営を行う場合で、次に掲げる基準のいずれにも適合すると認められるとき。
(1)職員の官職と承認に係る太陽光電気の販売との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがないこと。
(2)太陽光発電設備の維持管理等の太陽光電気の販売に係る管理業務を事業者に委ねること等により職員の職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること。
(3)その他公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと。
三 不動産又は駐車場の賃貸及び太陽光電気の販売以外の事業に係る自営を行う場合で、次に掲げる基準のいずれにも適合すると認められるとき。
(1)職員の官職と当該事業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがないこと。
(2)職員以外の者を当該事業の業務の遂行のための責任者としていること等により職員の職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること。
(3)当該事業が相続、遺贈等により家業を継承したものであること。
(4)その他公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと。

人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について

公務員ができる副業以外の副業は懲戒処分の対象

公務員ができる副業以外の副業については、当局にばれれば懲戒処分の対象になります。

懲戒処分とは

懲戒処分とは、職員に非違行為があったとき、その職員に対する制裁としてなされる処分をいいます。
懲戒処分には次のものがあります(国家公務員法第第82条、地方公務員法第第29条)。

  • 戒告
  • 減給
  • 停職
  • 免職

戒告とは、職員の非違行為の責任を確認し、その将来を戒める処分をいいます。
減給とは、職員に対する制裁として一定期間、職員の給与の一定割合を減額して支給する処分をいいます。
停職とは、一定期間、職務に従事させない処分をいいます。
免職とは、職員の意に反してその職を失わせる処分をいいます。

このほかに、懲戒処分に至らないものの不問に付することが適当でない場合に、より軽微な処分が科される場合があります。

  • 訓告
  • 厳重注意
  • 口頭注意

これらについては、履歴書に記載する必要がなく、経済的損失が伴わないことがほとんどです。

懲戒処分は懲戒権者の裁量行為であり、懲戒権者、すなわち任命権者が行います(国家公務員法第84条、地方公務員法第29条第4項及び各自治体の職員の懲戒に関する条例)。

公務員の懲戒処分に関する規定(抜粋)

国家公務員法第82条
職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令及び同条第四項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

国家公務員法第82条

国家公務員法第84条
懲戒処分は、任命権者が、これを行う。
2 人事院は、この法律に規定された調査を経て職員を懲戒手続に付することができる。

国家公務員法第84条

地方公務員法第29条
職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

4 職員の懲戒の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。

地方公務員法第29条