公務員もアフィリエイトを合法的にできるとする弁護士さんもいらっしゃいます。
法律論としてはそのような解釈もあるのかもしれませんし、弁護士さんに依頼すれば、合法的にアフィリエイトをできるケースもあるかもしれません。

しかし、弁護士費用はそれほど安くはありませんし、内部手続きまで引き受けてくれる弁護士さんは多くはないでしょう。
それにアフィリエイトをするのに弁護士を連れてくる職員に対して職場が好意的な反応をするとも思えません。


弁護士の力を借りるのは最後の手段

実際に弁護士さんに依頼することになるのは、懲戒免職になった際にその処分の妥当性を争う段階になってからです。
極端な言い方をすれば、公務員人生が完全に終わってからです。

公務員のアフィリエイトの合法性は問題にならない

公務員のアフィリエイトの合法性で検討されているのは、

  • 信用失墜行為との関係
  • 職務専念義務との関係
  • 自ら営利企業を営むことになる否か(収入が報酬になるか否か)

等です。

ただ、実際に問題になるのは

  • ばれた場合に懲戒処分になるか否か

であり、アフィリエイトがばれても懲戒処分にならないためには

  • 人事院の承認または任命権者の許可を得ていること

だけで十分です。

懲戒処分とは

懲戒処分とは、職員に非違行為があったとき、その職員に対する制裁としてなされる処分をいいます。
組織内部の秩序を保つためのもので、懲戒権者である任命権者の裁量行為です。
妥当性については任命権者の判断が優先されるので、懲戒処分にあたっては弁護士さんがどのように考えるかはそれほど重要ではありません。

信用失墜行為、職務専念義務、報酬に該当するか、すべて任命権者の判断です。

確かに処分内容に不服がある場合には裁判所による救済がなされます。
ただ、現実問題として、裁判に訴えるだけの利益があるのは懲戒免職になった場合にその取り消しを求めるときだけですから、懲戒免職にならなければ弁護士さんの力も頼れないのです。

結局、人事院の承認または任命権者の許可を得ているか否か、だけが問題になるのです。

承認または許可を得ていないと懲戒処分

国家公務員法や地方公務員法が制限しているのは、アフィリエイトをすること自体ではなく、人事院の承認または任命権者の許可を得ずにアフィリエイトをすることです。
逆にいえば、承認または許可を得さえすれば、懲戒処分を受ける心配なくアフィリエイトをすることができるのです。

現実的には承認または許可を得られない

国家公務員法及び地方公務員法は、人事院の承認または任命権者の許可を得なければ、自ら営利企業を営むことも報酬を得ていかなる事業または事務に従事することできないとしています。

自ら営利企業を営むのならば、人事院の承認または任命権者の許可を得ることが必要になるのですが、アフィリエイトについてはこの承認または許可を得ることは極めて困難です。

不動産賃貸や太陽光電気の販売等、条文に明記されているものについては、その基準を満たしている限り承認または許可を得ることが比較的容易です。
しかし、アフィリエイトのように基準が明記されていないものについては違います。

承認または許可の基準がありませんから、案件ごと個別に可否が判断されます。
当然、事業計画について詳細な説明が求められます。
サイトの構成や個別記事の内容、アフィリエイトプログラムの内容、予想される収益や費用等の事業計画、運営に要する時間等職務に及ぼす影響といった、個別具体的な状況の報告が求められるでしょう。
開始前からこうした内容が明確にできることは少ないと思います。

また、基本的には事業計画どおりの運営が求められます。
スピードと柔軟さが求められるアフィリエイトにおいては、こうした公務のような鈍重で剛直なやり方は不利にしかなりません。
個別記事の内容変更やアフィリエイトプログラムの変更等、実際には当初計画のとおりできることは稀でしょう。

報告内容が不明確で、しかも報告のとおり実施しないかもしれないものに対して承認または許可をする役所は少ないでしょう。

アフィリエイトと懲戒処分と弁護士

アフィリエイトはばれたら懲戒処分の対象

結局、公務員のアフィリエイトは承認または許可を得ることなく始められることがほとんどです。

こうしてはじめられたアフィリエイトについて承認または許可を得ようとすることは稀でしょう。
藪蛇になるのも面倒、せっかくの副収入がなくなるのも惜しい、そう思うのもわからなくもありません。

しかし、承認または許可を得ないアフィリエイトが当局にばれた場合には、国家公務員法・地方公務員法の明文に違反していますから、懲戒処分の対象になります。

アフィリエイトで懲戒免職になることはほぼないが

人事院の「懲戒処分の指針について」では、自ら営利企業を営むことの承認を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする、としています。
また、個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得る、ともしています。

承認または許可を得ないでアフィリエイトをした場合には、減給または戒告が標準的な処分で、よほどのことがない限り懲戒免職にはなりません。
懲戒免職であれば裁判に訴えて取り消すだけの意味も価値もあるでしょう。

懲戒免職にならない限り弁護士に依頼する意味はない

ここまできてようやく弁護士さんの力に頼ることになります。

しかし、それ以外の処分の場合、裁判で取り戻せる利益に裁判に要する費用が見合いません。
裁判に訴える意味がなく、科された懲戒処分を受け入れるのが合理的です。

懲戒免職にさえならなければいい、と考えるのならそれでもいいのですが、懲戒処分を受けてしまった公務員人生は楽なものにはならないでしょう。
制度上昇給の遅延が定められていますし、問題職員として制度外でも不利益を受けることになるでしょう。
もちろんアフィリエイトを続けることはできません。

組織の厄介者として勤め続けることが苦痛でないのなら一つの選択かもしれませんが。