公務員には法律により副業制限が課せられています。
それにもかかわらず、実際に株式投資や投資信託をしている公務員は少なくありません。
制度的にはどうなっているのでしょう。
目次
公務員も株式投資・投資信託を合法的にできる
株式投資や投資信託は預貯金同様、資金運用の手段とされているので、制限される副業にあたらず、特に承認や許可は必要ありません。
株式投資や投資信託は公務員が合法的にできる数少ない副業です。
公務員の仕事は株式投資向きではない
合法的にできる副業だといっても、多くの公務員は株式投資に向いているわけではありません。
それは、個々の職員の能力のせいではなく、仕事の性質のせいであることが大きいのです。
公務の情報は役に立たない
株式投資をうまくやっていくためには、株価に影響を及ぼす情報を、適時・適切に、継続的に得ていくことが重要です。
しかし、こうした情報を得られる公務員は限られています。
例えば本省庁の職員や会計に強い国税系職員等など、公務員全体から見ればごく少数の職員たちです。
大多数の公務員は、ゴリゴリの現場、補助金交付と予算執行、内部の書類事務等、外部の経済情勢に目を向けた仕事にはついていません。
むしろ外部に目を向けていると、組織の論理との葛藤が生まれて仕事がしにくくなることさえあります。
まじめに仕事をしている普通の公務員が、株式投資で有利な情報を仕事から得られることはほとんどありません。
インサイダー取引にあたるおそれ
それに仮に株式投資に有利な情報が手に入ったとしても、インサイダー情報にあたる可能性があります。
公務では重要情報が何気なくやり取りされていることがあります。
職務の中で知った「儲け話」と思える情報は、インサイダー情報である危険があります。
インサイダー情報をもとに株取引をしてしまうと、それがインサイダー取引であり、大変なことになります。
インサイダー取引を行ったものに対して、次の刑罰が定められています。
- 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はこれらの併科(金融商品取引法第197条の2)
- 犯罪行為により得た財産について必要的没収・追徴(金融商品取引法第198条の2)
- 違反者の経済的利得相当額の課徴金(金融商品取引法第175条)
当然懲戒処分の対象にもなります。
職務専念義務遵守は絶対
株は値動きが比較的大きく、1日の中でもタイミング良く取引することで多くの利益を得ることが可能です。
一方、株は取引時間が限られていて、普通の公務員の勤務時間とは重なっています。
公務員にとってこの時間の制限が面倒で、値動きを見ながら取引をしようとすれば職務専念義務に違反することになってしまいます。
多くの利益を狙って勤務時間中に取引をしようとすると、これは懲戒処分の対象になります。
実際に勤務時間内の株取引で処分された公務員もいます。
したがって、公務員は短時間で売買を繰り返すような取引スタイルは向いておらず、比較的長い期間保有する投資スタイルにならざるを得ません。
公務員にとって株式投資は、仕事を活かすことができず、時間的にも制限されているので、有利なものではありません。
株式投資より投資信託
株式投資が好き、儲けること以上に株取引をしたい、という方はどんどんなさってください。
でも、お金を増やしたい、できれば副業にしたい、のが目的あれば、株式投資は最善ではないかもしれません。
ごく普通の公務員にとっては株式投資よりも投資信託の方が向いています。
「投資信託(ファンド)」は、投資家から集めた資金を、専門家が株式や債券等に投資・運用する金融商品です。
その運用成果はそれぞれの投資額に応じて投資家に分配される仕組みです。
自ら情報を漁る必要はない
投資信託であれば、運用は、経済・金融などに関する知識を身につけた専門家が行いますから、自分で最新情報をあさる必要はありませんし、個別株の価格を追い続ける必要もありません。
資金の運用は専門家が行いますが、投資信託ごとの運用方針が決められていて、それに基づき行われます。
職務に専念できる
投資信託は個別株よりも値動きが小さくなる傾向があるので、値動きをにらみ続ける必要もなく、仕事に及ぼす影響も少なくなります。
職務専念義務を遵守しつつ、続けていくことが容易です。
さらに、株式投資にはある程度まとまった資金が必要になりますが、投資信託であれば、より少ない資金でも取引が可能です。
投資信託は普通の公務員に向いている
短期間に株取引を繰り返す方法に比べれば、投資信託には派手さはなく、得られるかもしれない利益の最大値は少なくなるかもしれません。
しかし、リスクが少なく、仕事に支障を及ぼすおそれの少ない投資信託は、株式投資より公務員に向いているでしょう。
普通の、まじめに仕事に取り組んでいる公務員にとっては特にいえるでしょう。
※投資信託は元本が保証されている金融商品ではありません。
個別株の投資と同じく、投資信託の運用成績も市場環境等によって変動し、利益が得られることもあれば、損をすることもあります。
リスクは分散されますが、必ずしも利益が得られるわけではないことに注意が必要です。