公務員が勤務中に株式取引をして懲戒処分になった、過去にそうした実際の事例があります。
公務員には職務専念義務(国家公務員法第101条、地方公務員法第35条)があって、違反すると懲戒処分の対象になります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。
目次
勤務中の株式取引で懲戒免職?
懲戒処分の標準例
人事院の「懲戒処分の指針について」に懲戒処分の標準例を挙げています。
勤務態度不良にとして、「勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする」としています。
また、職場のパソコンを株式取引や値動きの確認に使った場合には、コンピュータの不適正使用として、「職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする」としています。
さらに、「標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合」として、
- 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき
- 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
- 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
- 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき
- 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき
を挙げています。
勤務中の株式取引の懲戒処分
したがって、勤務中に株式取引を行った場合には減給または戒告が標準的な懲戒処分となります。
また、職場のパソコンを株式取引に使った場合には処分が重くなることが考えられます。さらに、悪質性が高いとされた場合や過去に処分を受けていた場合等にはより重い処分になることもあります。
懲戒免職にはほとんどならない
減給より重い処分としては停職があり、さらに重い処分として免職があります。
懲戒免職はある意味で2段階も重い処分になるのですから、よほどの悪質性等がない限り考えられません。
むしろ、その悪質な行為の方が処分の中心的なものになるかもしれません。
以上から、公務員が勤務中に株式取引をしただけであれば、懲戒免職になることはほとんどなさそうです。
だからといって、勤務中に株式取引をしてもいいわけではありませんが。
勤務中に株式取引をしたら即懲戒処分ではない
勤務中に株式取引をしたら直ちに懲戒処分になるか、といえばそうでもありません。
これは職員であれば実感としてわかると思います。
すぐに止めれば大事にはならない
一度だけ勤務中に株式取引をしたからといって懲戒処分になることはほとんどないでしょう。
上司なり同僚なりに注意を受けて、それきり取引をしていないのであれば、普通に考えて懲戒処分にまでなりません。
普通は厳重注意を口頭でされて終わりです。
上司だって、自分が監督責任を問われるおそれがあるのですから、わざわざ懲戒処分にしようとは思いません。
穏便に済ませようとするはずです。
ただし、厳重注意を受けても取引を繰り返していた場合や、住民や上司のいない偉い人の前で取引をしているのが見つかり、それを咎められたような場合等には、そうはいきません。
恰好をつける意味でも懲戒処分となるのは避けられないでしょう。
自動売買なら問題ない
当然のことですが、自動売買(システムトレード)については問題ありません。
自動売買(システムトレード)の設定を勤務時間外にしていれば、取引が勤務中に行われても大丈夫です。
それでも勤務中の株式取引はダメ
勤務中に株式取引をしたとしても、懲戒免職になるおそれはほとんどなく、懲戒処分になることも実際にはほとんどありません。
それでも、公務員が勤務中に株式取引をしてはいけません。
あえて危険を冒す必要はないのです。
中長期のトレードスタイルをとれば、勤務中に頻繁に取引する必要が減ります。
自動売買 (システムトレード) にすれば、勤務時間中に取引する必要すらなくなります。
簡単な対策をすることで、懲戒処分になるおそれはほとんどなくなるのです。
公務員の副業として株式取引をしたいのであれば、あえて勤務中に株式取引をするようなトレードスタイルを採用すべきではありません。
どうしても勤務中にも株式取引をしたいのであれば、公務員を辞めて株式取引を本業にすべきです。