公務員は副業を制限されていて、アフィリエイトは禁止されているといっていい状況です。


公務員のアフィリエイトがばれれば懲戒処分

原則として、国家公務員法または地方公務員法で副業が制限されています(国家公務員法第103条第1項、地方公務員法第38条)。
ただし、人事院の承認または任命権者の許可を得ることで副業をすることができます(国家公務員法第103条第2項、地方公務員法第38条)。

この承認または許可には基準があり、これを満たすものは極めて限定的です(人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)及び人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について)。

公務員のアフィリエイトは実質禁止

アフィリエイトは承認または許可の基準を満たさないため、公務員のアフィリエイトは実質的に禁止されている状況です。

これに違反すると懲戒処分の対象になります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。

国家公務員について

国家公務員法
§103(私企業からの隔離)職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
第2項前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
§104(他の事業又は事務の関与制限)職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

人事院の副業承認要件

その職員の占めている官職と当該営利企業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがない
かつ
営利企業に従事しても職務の遂行に支障がないと認められる
法の精神に反しないと認められる場合として人事院が定める場合

地方公務員について

国家公務員法の副業制限の説明

§103営利企業役員×
営利企業を営む×
第2項人事院の承認→○
§104内閣総理大臣等の許可がない⇒
 報酬を得て役員×
 報酬を得て従事×
(言い換えると)
報酬を得て役員または報酬を得て従事⇒
 内閣総理大臣等の許可が必要

アフィリエイトの懲戒処分は

標準的には減給または戒告

人事院の「懲戒処分の指針について」では、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類を掲げています。
その中で、自ら営利企業を営むことの承認を得る手続を怠り、これらの兼業を行った職員は、減給又は戒告とする、としています。
さらに、個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることもあり得る、ともしています。

したがって、公務員がアフィリエイトをしていた場合の標準的な懲戒処分は減給または戒告になります。
それに懲戒権者が個別の事情を考慮して処分の軽重を決めることになります。

懲戒処分が重くなるのは

「懲戒処分の指針について」では、懲戒処分が重くなる場合として次のものを挙げています。

  • 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果が極めて重大であるとき
  • 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき
  • 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
  • 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがあるとき
  • 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき

例えば、勤務時間中にアフィリエイトサイトを運営していたような場合には、より重い懲戒処分となります。

懲戒処分を軽くなるのは

「懲戒処分の指針について」では、懲戒処分が軽くなる場合として次のものを挙げています。

  • 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たとき
  • 非違行為を行うに至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると認められ

例えば、お金の使い道が親の借金返済や子どもの治療費等涙を誘うものであれば処分が軽くなるかも知れません。

また、アフィリエイトで得た金額を慈善団体に寄付するというのも、いくらかは情状に影響するかもしれません。

このほかにも組合に駆け込む等の方法も考えられますが、組合が弱体化している現在では効果を期待できませんし、そもそも組合員でなければできない方法です。

アフィリエイトがばれても懲戒免職になるおそれは小さいが…

公務員がアフィリエイトをしていたことがばれたときの標準的な懲戒処分は減給または戒告です。
懲戒免職はこれらよりもずっと重い処分ですから、よほどの悪質性がある場合等の事情がなければ懲戒免職にはならないでしょう。
懲戒免職にさえならなければいい、と考えるのは早計です。

他の処分であっても、これまでと同じ公務員としての生活が続くことはなくなっているのです。

懲戒処分は職員への制裁

懲戒処分とは

懲戒処分とは、職員に非違行為があったとき、その職員に対する制裁としてなされる処分をいいます。
懲戒処分には次のものがあります(国家公務員法第第82条、地方公務員法第第29条)。

  • 戒告
  • 減給
  • 停職
  • 免職

戒告とは、職員の非違行為の責任を確認し、その将来を戒める処分をいいます。
減給とは、職員に対する制裁として一定期間、職員の給与の一定割合を減額して支給する処分をいいます。
停職とは、一定期間、職務に従事させない処分をいいます。
免職とは、職員の意に反してその職を失わせる処分をいいます。

このほかに、懲戒処分に至らないものの不問に付することが適当でない場合に、より軽微な処分が科される場合があります。

懲戒処分の不利益は大きい

懲戒処分の手続きは、国家公務員であれば人事院規則で、地方公務員であれば自治体の条例で定められています(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。

調査や聴聞の負担は大きい

懲戒処分担当部署から、直接または人事担当部署を通して、調査が入ることになるでしょう。
懲戒担当部署が納得するまで、場合によっては膨大な資料の作成・提出が求められます。

さらに不利益処分であることから懲戒処分担当部署による職員への聴聞があり、それらの結果に基づいて懲戒処分の内容が決められます。
弁護士をつけることもできないので、厳しい追及があるかもしれません。

一連の手続きは数日で終わるようなものではなく、場合によっては数カ月以上かかるでしょうから、、時間的・精神的負担は大きなものとなるでしょう。

懲戒処分の事実が公表される

懲戒処分の内容によっては、その事実は公表されます。
人事院の「懲戒処分の公表指針について」によれば、公務員のアフィリエイトに対する懲戒処分の場合には、免職または停職のときには所属や職名が公表されます(「懲戒処分の公表指針について」)。
さらに、ニュースとしての価値があるとマスコミが判断すれば、報道もされます。

個人が識別されないようされるでしょうが、新聞やテレビ、ネットニュースで報道され、残ることすらあるのです。

懲戒処分は不利益を課すもの

懲戒処分は職員に対する制裁であり、不利益を課すものです。
免職であれば、公務員としての地位を失います。
停職であれば、職務に就くことはできませんし、その間の給料も出ません。
減給であれば、一定期間、給料の一定額が減ることになります。
戒告では、その瞬間には経済的な不利益はありませんが、処分を受けた事実は残ります

さらに、懲戒処分を受けるとその内容が履歴に記載され、以後消えることはありません。

懲戒処分を受けるとその後にも不利益が

懲戒処分を受けると、その後にも多くの不利益を受けることになります。

懲戒免職の場合には、公務員としての地位を失うことはもちろん、退職金も受け取れなくなります。
また、懲戒免職となった後一定期間、公職等に就くことができない等の不利益があります

停職であれば、停職期間中の給料は出なくなりますし、賞与(ボーナス)の計算上停職期間は勤務していなかったものとされるため、減額になります。
当分の間昇給が遅れ、その結果退職金の計算でも不利になります。

減給であれば、その期間の給料が減ることになりますし、当分の間昇給が遅れます。その結果退職金の計算でも不利になります。

戒告であれば、その時点での経済的な不利益はありませんが、昇給が遅れることで不利益を受けます。

不利益は制度的なものに限られない

以上は制度的な不利益です。
これにとどまらず、制度外でも有形無形の不利益を受けます。

懲戒処分を受けると履歴に記載されますから、懲戒処分を受けた職員であるという「烙印」がおされてしまいます。
人事的には「問題職員」としてマークされた状態ですから、普通の職員と同等には扱われないでしょう。

守秘義務が重要になる人事担当部署や予算関係部署に行くことはほぼありません。
公務員の世界で花形とされる部署に行けないのですから、もう出世の道はなくなったも同然です。

公金を扱う部署にも行くことはありませんし、補助金を扱うような部署にもいかないでしょう。

勤務評定も最悪の状態です。
成績を上げようにも上げられない職場ですので、勤務評定はそのまま、昇給も遅れ続けます。
よほど認めてくれる上司に当たる以外に抜け出す方法はないでしょう。

もちろん、法的にはそのような不利益な取り扱いは認められるものではありません。
しかし、現実的には平等には扱われることはなくなっているのです。

公務員の懲戒処分に関する規定(抜粋)

国家公務員法第82条
職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令及び同条第四項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

国家公務員法第84条
懲戒処分は、任命権者が、これを行う。
2 人事院は、この法律に規定された調査を経て職員を懲戒手続に付することができる。

国家公務員法

地方公務員法第29条
職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

4 職員の懲戒の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。

地方公務員法

懲戒処分の重さを考える

当局にアフィリエイトをしていることがばれれば、懲戒処分の対象となります。
懲戒処分を受けたときの不利益は大きく、しかも長期にわたります。

そうした不利益があることを理解したうえで、アフィリエイトには手を出さないと考えるのか、絶対ばれないように対策すると考えるのか、それはあなた次第です。