公務員が株式投資をしても、原則的には問題ありません。
預貯金や国債の購入と同様、資産運用・利殖の手段であって、国家公務員法第103条及び第104条、地方公務員法第38条の副業制限にかかることはありません。
目次
公務員が株式投資をばれないようにする意味
公務員の株式投資は通常問題ないが
公務員が株式投資をしても、原則的には問題ありません。
ただし、公務員には法律で服務上の義務が課されているので、まったくの自由というわけではありません。
職務専念義務は遵守する
ただし、勤務中に株式取引を行ったり値動きを確認したり、勤務時間外の行動であっても勤務に支障を及ぼすことがあったりすると、職務専念義務に違反することになります。
職務専念義務は国家公務員法第101条、地方公務員法第35条に明文化されており、これに反すると懲戒処分の対象になります。
実際に株式投資に関連して懲戒処分を受けている事例の多くが職務専念義務違反を理由としています。
インサイダー取引にならないよう注意
インサイダー取引(内部者取引)は、未公開情報を不法に共有・利用して証券市場取引を行い、情報を持たない投資家に損害を与える犯罪的行為です。
インサイダー取引の要件は次のとおりになっています(金融商品商品取引法第166条)。
- 会社関係者等及び第一情報受領者が、【内部者が】
- 上場会社等の業務等に関する【株式の発行元の】
- 重要事実を、【インサイダー情報を】
- その者の職務等に関し知りながら、【故意に】
- 当該重要事実が公表される前に、【規制される期間に】
- 当該上場会社等の株券等の売買等を行うこと【売買することが規制される】
公務員の職場には、インサイダー情報になるような重要な情報がたくさんあります。
同僚の机に何げなく置かれていた資料だったり、職場の喫煙室の立ち話だったり、重要な情報を知ってしまう機会もあります。
公務員の株取引では、インサイダー取引にあたらないよう注意する必要があります。
株取引等報告書の提出
また、本省審議官級以上の職員は、毎年の株取引等についての株取引等報告書を、各省各庁の長等に提出しなければなりません (国家公務員倫理法第7条) 。
ただ、これは株式投資を制限するものではなく、たとえ株式を保有しても罰則規定はありません。
提出義務があるのは本省審議官級以上の職員ですから、大多数には関係のないものです。
大株主の場合にも報告義務
さらに、株式会社の1/3超の株式や特例有限会社の1/4超の株式を保有している国家公務員で、その会社と密接な関係にある職場に在籍している場合には、所轄庁の長等を経由して、人事院に報告しなければなりません(人事院規則14―21(株式所有により営利企業の経営に参加し得る地位にある職員の報告等))。
大株主かつその会社と密接な関係の職場ですから、これも多くの公務員には関係ないでしょう。
公務員の株式投資はばれても不祥事にはならない
多くの公務員にとって、個人として資産運用・利殖の範囲で株式投資をすることに制限はありません。
勤務中に株式取引をする、インサイダー取引をするといったことがなければ、ばれても制度的にはほとんど問題ありません。
実際、公務員が株式投資に関する不祥事となっているのは、株式投資をしているから、というのではなく、勤務中の株取引やインサイダー取引をしていたことを理由とするものです。
公務員の株式投資に関する不祥事
参考までに、近年あった公務員の株式投資に関する不祥事を紹介します。
職務専念義務違反によるもの
勤務中に株取引(停職1カ月)
2010年3月から3年にわたり、当時の勤務先のパソコンなどを使って、勤務中に約3900回の株取引をしていた事例。
損失が出た際には、個人的な知り合いらから合わせて約800万円を借りたこともあったということです。
勤務中に株取引(減給10分の1(3カ月))
2013年1月~17年8月、勤務中にスマホから証券会社のサイトにアクセスし、計1314回株取引した事例。
2015年11月~16年1月、内規に反して所管する法人1社の株も取引したが、インサイダー取引に当たる行為はなかったとのこと。
インサイダー取引によるもの
経済産業省審議官インサイダー取引事件
平成21年、経済産業省商務情報政策局審議官が、半導体大手企業の合併という内部情報を得て、妻名義の証券口座を利用して当該企業の株式を購入、値上がりした後で市場で売却し利益を得る等したもの。
懲役1年6月執行猶予3年及び罰金100万円の判決が確定。
公務員の株式投資がばれると問題になるのは
制度的にはほとんど問題ないのですが、公務員生活を送る上で事実上の問題が生じる場合もあります。
公務員の株式投資がばれたときの問題には次のようなものがあります。
周囲の嫉妬
株式投資をしているのがばれようが、制度的には問題になりません。
しかし、周囲にばれると大変なことになります。
嫉妬されて仕事がしにくくなるのです。
仕事の情報を流してもらえないなってのは当たり前、時にはあからさまな妨害だってあります。
バカバカしいことですが、それで片付かないのが公務員の世界です。
公務員は俸給制で、能力や成果とあまり関係なく、ほとんど横並びの給料をもらっています。
そんな中に親の遺産ではなく自己の才覚で資産と所得の両方を得ている職員がいたらどうでしょう。
小物の嫉妬をバカにしてはいけません。
株式投資をしながら公務員も続けたいのであれば、周囲にばれないようにした方がいいでしょう。
上司との軋轢
滅多にないことですが、指導と称して上司が株式投資をやめさせようとすることもあります。
冗談のようですが、株式投資をやめさせようとした上司が実際にいました。
確かに株式に関連した公務員の不祥事も起こりえます。
だからといって、株式投資をしなければ不祥事が起こらない、というのは短絡に過ぎるでしょう。
問題は株式投資自体にはなく、公務員個人には経済的な自由があるのです。
常識外の上司には逆らうだけ損です。
決して見つからないようにするのが上策でしょう。
公務員の株式投資がばれるのは
公務員が株式投資をしていてもばれることはほとんどありません。
ばれるとすれば次のような場合がほとんどです。
自分からばらしてしまう
意外と多いのが、自分で話してしまうことです。
株式投資で副収入があることは、ポストちょっとした格の違いを気にしている多くの公務員からすれば、羨望の的であり、嫉妬の対象です。
だからこそ隠しておかなくてはならないのですが、優越感からでしょうか、自慢げに自分から話してしまう人が多いようです。
同僚が見ている
同僚は細かな動きを見ているので、注意が必要です。
職場に株式投資関連の情報を持ち込んだ場合、それがもとでばれることがあります。
昼休みにスマホで株式情報を確認しているのを見られれば、それだけで疑われることがあります。
証券会社のグッズ等、ちょっとしたことが疑惑の種になります。
公務員は細かな動きに敏感ですから、同僚のわずかな隙も見逃しません。
税務申告から株式投資がばれる
株式投資による所得について、一般口座や源泉徴収なしの特定口座を利用している場合には確定申告をする必要があります。
また、源泉徴収ありの特定口座を利用している場合であっても、年20万円以上の利益があれば、確定申告することで源泉徴収税の還付があります。
確定申告によって所得税額の変動がある場合には、株式投資が職場にばれるきっかけになりえます。
所得税額が増えることに伴って住民税額も増額し、増額後の住民税額が職場に通知されます。
これが同じ程度の給料の職員と比較されることで、給料以外の収入があることがばれてしまいます。
これについては、源泉徴収ありの特定口座を使い、確定申告をしないことで住民税額の通知が職場に行くことはなくなります。
最終的な納付税額が大きくなることもありますが、職場にばれないようにすることができます。
公務員の株式投資はばれない方がいい
公務員の株式投資は制度的にも認められている合法的な副業です。
一部の特殊な場合を除き、ばれても懲戒処分の対象となることはありません。
ただし、周囲にばれると無用の嫉妬を受け、公務員生活に支障が出る場合もあり得ます。
株式投資について周囲に話さない、職場に持ち込まない、源泉徴収ありの特定口座を使って確定申告をしない等、対策をすることで、ばれないようにすることができます。
無用な嫉妬を受けたくない、安定した公務員生活を全うしたい場合には、ばれてしまう場合に注意して慎重に行動する必要があります。