映画やドラマのエキストラ、俳優さんや女優さんに会えるので、やってみたいと思った方も多いのではないでしょうか。
芸能人に会えるうえ、お金ももらえて、うまくいけば副業になるかも、なんて想像もしてしまいます。
でも、公務員がエキストラを副業にできるのでしょうか。
目次
エキストラの実際
芸能人に会えるうえ、いくらかのお金までもらえる、映画やドラマのエキストラは人気があります。
ただ、実際には夢に描くようなものではないようです。
芸能人に会える
確かに、芸能人がいる現場には行けますが、多くの人は遥か彼方から眺めるだけで終わってしまうことが多いようです。
芸能人と並んで画面に入る人もいますが、これは特別な方だけということです。
ずばり「画面映りのいい方」です。
エキストラで、主役級の隣に映っていることがよくある知り合いがいるのですが、その人はとても男前で背が高く、画面映りがとてもいいのです。
やはり人間見た目なんですね。
お金がもらえる
お金がもらえることもありますが、もらえないこともあります。
仕事として参加している場合には報酬が出ます。
芸能事務所やエキストラ派遣会社と契約して、それに基づき報酬が支払われます。
例えば「【経験不問】エキストラスタッフ募集!芸能界でバイトしませんか?」のような形で募集されています。
謝礼や謝金等の名目で支払われることもありますが、実態は賃金です。
交通費については契約次第、出る人もいれば出ない人もいます。
エキストラにも格のようなものがあり、格が高い人はより良い条件になります。
「画面映りのいい方」や実績のある方は契約面で得をするようです。
無報酬のエキストラもいる
一方、契約等がなく、応募して参加している方には一切報酬が出ないこともあります。
芸能人を見たい方だったり、芸能界とつながりを持ちたい方であったり、それぞれの事情で無償でも参加したい方はいらっしゃいます。
そうした方は無償でエキストラになっています。
エキストラには明らかなマイナス面も
拘束時間が長い
エキストラは拘束時間が長いことが普通です。
ある意味舞台装置のようなものですから、役者さんの準備ができたところに駆り出されます。
撮影以外でも拘束時間が生じることもあります。
都会での撮影は人通りのない早朝や深夜に行われることが多く、終電後や始発前に現地につかなくてはならないこともよくあるそうです。
交通費等がかかる
深夜早朝でもタクシーを使えばいいのですが、遠くの現場ではお金もバカになりません。
現地での最寄り駅で始発を待ったり、終電で現地に行って時間を潰したりしている方もいるようです。
ちなみに、多くの現場でお弁当が支給されるようです。
というのも、エキストラが現場から離れてしまうと撮影ができなくなってしまうということがあります。
また、撮影現場の近くに飲食店等がないこともよくあり、お弁当で対応せざるを得ないという事情もあります。
衣装やメイクは基本自前
衣装やメイクは基本的に自前だそうです。
もちろん、格が上がれば多少面倒を見てくれることがあるようですが、それでも自前が基本だそうです。
なので、衣装をたくさん持っている人は使ってもらえる可能性が高まるとの話です。
上述のエキストラ経験者は衣装持ちなので、ほとんどの役に対応できるらしく、どんどん役を取ってこれるのだそうです。
エキストラは副業にはならない
以上のとおり、ほとんどの人にとってエキストラは夢に描くようなものではありません。
芸能人の近くに行けるのは特別な人だけですし、ほとんどの人はわずかなお金しかもらえません。
逆に拘束時間が長く、意外に交通費が嵩み、衣装代やメイク代もかかるもののようです。
多くのエキストラは持ち出しでやっているのが現実だそうです。
公務員の副業制限とエキストラ
公務員には副業制限が課せられています。
公務員は所属庁の長または任命権者の許可を得なければ、報酬を得て営利企業の事業・事務に従事することができません(国家公務員法第104条、地方公務員法第38条)。
この許可については、許可基準が定められています(職員の兼業の許可に関する内閣官房令、職員の兼業の許可について等)。
この基準を満たすものでなければ許可を得ることはできません。
エキストラで副業の許可は難しい
エキストラについて、契約に基づいて報酬を受け取っている場合には、報酬を得て営利企業の事業・事務に従事したことになり、許可が必要になります。
支払の名目が謝礼、謝金等であったとしても、労務の対価として契約に基づいて金銭が支払われているので、実態は賃金であり、報酬と考えられます。
したがって所属庁の長または任命権者の許可が必要になりますが、この許可を得ることは容易ではありません。
エキストラは拘束時間が長く、「兼業による心身の著しい疲労のため、職務遂行上その能率に悪影響を与えると認められるとき」に該当すると判断され、許可されないおそれがあります。
また、「兼業のため勤務時間をさくことにより、職務の遂行に支障が生ずると認められるとき」に該当すると判断されるかもしれません。
こうした条件にあたらないと職員側で証明できない限り、許可は得られないことになります。
以上から、所属庁の長または任命権者の許可を得ることは難しく、公務員が報酬の出るエキストラをすることも難しい、ということになります。
許可を得ないでエキストラをして報酬を得れば、国家公務員法第104条・地方公務員法第38条違反として懲戒処分の対象となります(国家公務員法第82条・地方公務員法第29条)。
無報酬のエキストラは許可不要
なお、無報酬である場合には、制限される副業にはならないため、許可は不要です。
ただし、拘束時間が長いことから、職務専念義務(国家公務員法第101条、地方公務員法第35条)に違反しないようにすることが必要です。
職務専念義務に違反した場合も、懲戒処分の対象となります(国家公務員法第82条・地方公務員法第29条)。
なお、撮影現場で支給される弁当ですが、高額なものだった場合には饗応にあたることあり得ます。
しかし、撮影現場で高額な弁当が支給されるとは考えられず、社会通念上相当と認められる程度を超えているとはいえないでしょう。
実費燃焼的な性格でもあることから弁当は報酬にあたないと考えられます。
公務員はエキストラを副業には
エキストラは副業向きな仕事ではありません。
報酬は低廉な一方、出費が多く、多くの方が持ち出しになっています。
利益を出そうとすればより良い条件で芸能事務所等と契約するしかありませんが、そのためには特別な能力が必要です。
他方、公務員には副業制限が課されています。
報酬を得てエキストラをするためには、所属庁の長または任命権者の許可を得る必要がありますが、これを得るのは容易ではありません。
無許可でエキストラをして報酬を得れば懲戒処分の対象となります。
無報酬であれば許可は不要ですが、それでは副業になりません。
結局、公務員がエキストラを副業にすることは極めて難しい、ということになります。