公務員には副業制限がありますが、FXに関しては、株取引や預貯金と同様の資産運用・利殖の手段とされ、制限の対象とされていません。
もちろん、税務申告をして適正に納税すること等は必要ですが、 公務員がFXで儲けることに制限はありません。

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公務員がFXを禁止されることはない

公務員のFXに課される制限

ただし、完全に自由にできるわけではなく、公務員がFXをするのには一定の制限があります。

法人化してFXをすることは、営利企業等の役員の兼務にあたりますから、これは制限されます(国家公務員法第103条、地方公務員法第38条)。
また、他の法律に反するようなことは当然できません。
例えば無届で他人の資金を有償で運用することは金融商品取引法違反になります。

そして、現実的に問題になるのは職務専念義務(国家公務員法第96条、地方公務員法第30条)違反と信用失墜行為(国家公務員法第99条、地方公務員法第33条)にあたる場合です。

公務員の職務専念義務

すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、かつ、 職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならないとされ、これは公務員の職務専念義務と呼ばれています。

公務員がFXをする際に、現実的に問題になるのは職務専念義務です。
実際、これまでFXが原因で懲戒処分になっているのは、勤務中に繰り返し取引を行った職務専念義務違反の事例です。

職務専念義務に違反しやすい環境

FXは24時間取引可能ですし、スマホを使えばどこでも値動きを確認でき、簡単に取引することもできます。
FX業者間の競争も激しく、取引手数料を安くするのはもちろん、スマホアプリもどんどん便利になっています。
そのため、スマホがあればいつでもどこでも、たとえ勤務中であっても取引が可能です。
取引には便利ですが、勤務中の取引は職務専念義務に違反することになり、懲戒処分の対象になります。

勤務時間外にも職務専念義務が及ぶ

また、勤務時間外であってもFXの取引や調査に没頭しすぎるのも問題です。
睡眠不足になり、勤務に支障をきたすほど注意力がなくなると、これも職務専念義務に違反することになり、懲戒処分の対象になります。

公務員の信用失墜行為

公務員は、その職の信用を傷つけ、または職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならないとされ、これは信用失墜行為の禁止と呼ばれています。

最近の懲戒処分の事例では、勤務時間中のFX取引は職務専念義務違反ではなく信用失墜行為として取り扱われることあるようです。

狭義の勤務時間だけでなく、公務員が仕事をしているとみられるような時間にFXをしていると、懲戒処分の対象となりそうです。

公務員がFXで懲戒処分になった具体的事例

実際に公務員がFXを勤務時間中にしていたために懲戒処分になった事案があります。

東京国税局 平成30年6月 減給1/10(3カ月)

勤務中にスマホで株、FX 国税調査官を懲戒処分 4年半で2291回「ほとんど損失」

 東京国税局は8日、勤務中にスマートフォンで株取引や外国為替証拠金取引(FX)を計2291回したとして、千葉県内の税務署で資産課税部門に所属する男性国税調査官(35)を同日付で減給10分の1(3カ月)の懲戒処分にしたと明らかにした。

 調査官は平成25年1月~昨年7月、庁舎内のトイレや出張中の電車内で、スマートフォンで証券会社のサイトにアクセスしていた。取引の結果はほとんどが損失でインサイダー取引はなかった。調査官は「自制心が働かずやってしまった」と反省しているという。

産経新聞 平成30年6月8日
https://www.sankei.com/affairs/news/180608/afr1806080026-n1.html

職務専念義務違反に対する懲戒処分の事例で、FXだけでなく、株取引もしていたようです。

取引のほとんどが損失だったということですが、それによって処分の量定が軽くなった様子はありません。

関東信越国税局 減給2/10(3カ月) 令和2年9月

職務中にFXで国税職員懲戒

 関東信越国税局は25日、勤務時間中に外国為替証拠金取引(FX)をしたなどとして、栃木県内の税務署に勤務する30代の男性国税調査官を減給10分の2(3カ月)の懲戒処分にした。取引で得た所得を確定申告しておらず、平成30年までの3年間で約112万円の申告漏れもあった。

産経ニュース 令和2年9月25日
https://www.sankei.com/article/20200925-OAG3DHEDQBJWZF4FJ7RMUETK4U/

職務専念義務違反に対する懲戒処分の事例です。

勤務時間中にFXをしていたことに加えて、国税調査官でありながら3年間の申告漏れがあったことが考慮された結果と考えられます。
確かに、税務職員の申告漏れは信用失墜行為に当たるものといえるでしょう。

東京国税局 減給2/10(3カ月) 令和5年5月

勤務中にFX取引繰り返したか 職員2人減給処分 東京国税局

勤務時間中にスマートフォンで、FX取引を3000回余り繰り返していたなどとして、東京国税局は19日、都内の税務署に勤める職員2人をいずれも減給の懲戒処分にしました。

減給の懲戒処分を受けたのは、いずれも都内の税務署に勤務する42歳と60歳の職員です。

東京国税局によりますと、42歳の職員は、去年9月までのおよそ9か月間、勤務時間中に税務署のトイレなどでスマートフォンを使って、あわせて3000回余りFX取引を繰り返したほか、60歳の職員は去年9月までのおよそ2年半に渡って勤務時間中にスマートフォンで暗号資産や株の取引をあわせて450回余り行うなどしていたということです。

FX取引を繰り返していた42歳の職員は国税局の調査に対し、「取引の機会を逃さず、利益を得たいと思った」などと話しているということです。

東京国税局は、国家公務員の信用を失墜する行為だなどとして、いずれも19日付けで42歳の職員を減給10分の2、3か月、60歳の職員を減給10分の1、3か月の懲戒処分にしました。

NHK 令和5年5月19日
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20230519/1000092690.html

同日付で2つの懲戒処分があったことが公表されています。
42歳の職員に、勤務時間中にFX取引をしていたに対する懲戒処分がありました。

処分の理由としては信用失墜行為が挙げられています。

勤務時間中のFX取引は、職務専念義務違反よりも信用失墜行為として扱われているわけです。

名古屋国税局 停職3カ月 令和5年6月

「借金返済のため」勤務中にFX取引5千回 名古屋国税局職員を処分

 名古屋国税局は16日、同局の40代男性職員を国家公務員法違反(職務専念義務違反など)で停職3カ月の懲戒処分にした。職員は同日付で依願退職した。

 発表によると、職員は2017年1月~22年12月、勤務中にトイレなどでスマートフォンを使い5144回にわたって外国為替証拠金取引(FX)をした。「借金返済のため一発当てたいと思っていた」などと話したという。

 ほかにも、勤務中にスマホで294回の預金取引▽在宅勤務中、買い物などの私用で計約137時間外出▽親族が発熱したなどとうその理由で特別休暇を1日分不正取得した――などの非違行為が確認されたという。

朝日新聞デジタル 令和5年6月17日
https://www.asahi.com/articles/ASR6J7K4YR6JOIPE00G.html

停職3カ月と重い懲戒処分となった事例です。

FXにかかる職務専念義務違反だけでなく、私用外出や不正な休暇取得等の非違行為があったということで、重い処分となるだけの理由はあったようです。
普段の勤務態度が懲戒処分の量定に影響した事例となっています。

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公務員のFXと税金・確定申告

確定申告が必要な公務員

FXには、株式とは違い、源泉徴収ありの特別口座の制度がないので、自分で確定申告することが必要です。

FXで確定申告する必要があるのは次の方です。

  • 年20万円を超える利益を得た方
  • 損失を繰り越す方

FXによる利益や損失は「雑所得」に区分されるので、FXの所得税は他の所得とは合算しないで分離して計算します。

FXの利益にかかる税金

FXで年20万円を超える利益を得た方は確定申告が必要で、FXで得た利益にかかる所得税(及び復興特別所得税)と住民税を納付することになります。

公務員は期限内申告を

締切に遅れると期限後申告として取り扱われます。
期限後申告になると、原則として申告等によって納める税金のほかに無申告加算税が課されることになります。

無申告は信用失墜行為に該当することもあり、場合によっては懲戒処分の対象となり得る行為です。
さらに無申告は「逋脱犯(ほだつはん)」という罪になります。
申告しなかった金額によっては重い刑事責任を問われることもあります。

公務員がFXをする現実的な方法

公務員はFXをすること自体に制限はありませんが、職務専念義務を守ることが大前提です。
そのためには、取りうる取引のやり方、トレードスタイルが限定されます。

公務員がFXをするなら短期取引は避ける

職務専念義務の遵守が絶対の公務員にとって、数分程度の取引を繰り返すスキャルピングやその日のうちにポジションを決済するデイトレードは向いていません。
短期取引だと、勤務中の値動きが気になり、仕事どころではなくなってしまいます。
スマホが気になって仕方なくなるでしょう。

しかも短期取引では、ギャンブルと区別ができなくなる人が多くなります。
興奮状態が続くため、冷静でいることができなくなるのです。
一日中FXのことばかり考えるようになり、仕事どころか人生すらも危険にさらすようになってしまいます。

公務員が裁量取引をするならスイングトレード

公務員にとって現実的なのは、数日から長くても数週間程度でポジション保有が終わるスイングトレードです。

スイングトレードは公務員に向いている

スイングトレードでは、1日数回程度値動きを確認できればいいので、職務専念義務に違反するおそれも少なく、公務員にとって現実的な選択です。
また、短期取引では売買手数料等が嵩みがちですが、スイングトレードであれば取引回数が控えられるので売買手数料等のコストも少なくてすみます。
さらに、買い(ロング)であれば、通貨の金利差であるスワップポイントを得ることもできるという利点もあります。

スイングトレードでは急激な為替変動に注意

ただし、スイングトレードでは注意すべきことがあります。
保有期間が比較的長くなることから、レバレッジを低めに設定して急激な為替変動に備える等、リスク対応が必要になります。

公務員には自動売買も選択肢

自動売買は、あらかじめ設定した条件どおりに自動的に取引を行ってくれるものです。
条件を自分で設定するものもありますが、FX取引業者が設定したプログラムを選ぶだけのものもたくさんあります。

自動売買は公務員トレーダーの強い味方

自動売買であれば、職務専念義務違反になるおそれはほとんどありません。
多くても一日に数回、取引の内容を確認して、場合によって取引の条件を変更するだけです。
ほとんど職務に影響を及ぼすことなく続けられます。

初期設定をしておけば、24時間自動的に取引がされていきます。
自動的に売買を繰り返してくれますから、本業で働きながらFXで稼ぎ続けることもできるのです。
時間的な制約がある公務員にとって自動売買は強い味方です。

ループイフダン

公務員に限ったものではありませんが、自動売買は感情に左右されずに取引できる利点もあります。
自動売買では感情の介入する余地はほとんどありませんから、投資で重視される感情のコントロールをしなくてもよくなります。

ロジックを理解しないと損をすることも

ただし、ロジックを理解しないで自動売買を選択すると、思うように利益が伸びない場合や損失を出してしまう場合があることに注意が必要です。

公務員は勤務中は職務に専念

FXをする公務員が肝に銘じなければいけないのは、取引は勤務時間外にだけ行い、勤務中は職務に専念することです。

本業のほかに何らかの活動をするのはとてもいいことですが、本業に支障が出ては本末転倒です。
職場にばれて懲戒処分になるようなへまは絶対にしてはいけません。

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