公務員の副業は家族名義であったとしても、ばれたら懲戒処分の対象となります。
地方公務員の副業に関して、また残念な出来事がありました。
目次
地方公務員の無許可の副業による懲戒処分
令和2年1月29日、兵庫県三木市の消防署に勤務する係長が減給1/10(3カ月)の懲戒処分になったとの報道がありました。
副業で減給3か月の懲戒処分 三木市の消防職員
兵庫県三木市は29日、地方公務員法で原則禁じている副業をしたとして、市消防署警防課の男性係長(46)を減給10分の1(3カ月)の懲戒処分にした、と発表した。
市消防本部によると、男性係長は2009年5月ごろから19年10月までの非番の日に、親戚が経営する市内の製造会社や同社役員宅で庭の手入れなどの雑用を担っていた。月に3~8万円程度の報酬が男性係長の母親名義の口座に振り込まれていたという。
職場の公用パソコンで請求書を作っていたことから、同僚が残っていたファイルを発見。昨年10月、管理職に報告して発覚した。
また、男性係長が職場で請求書を作り始めた16年度から現在までに課長級だった職員5人の管理監督責任を問い、厳重注意の法定外処分とした。
神戸新聞NEXT 令和2年1月30日
https://www.kobe-np.co.jp/news/miki/202001/0013073019.shtml
懲戒処分を受けた公務員の今後
直接的には地方公務員法第38条の副業制限規定に違反したことを理由とするものです。
減給の懲戒処分を受けたのは46歳の男性係長です。
もうすぐ賃金上昇幅が小さくなってくる年齢ですが、懲戒処分は後々響いてきます。
減給の期間は3カ月ですが、次の4月の昇給は4号給とはならないでしょう。
減給3カ月なので3~4号給の停止になると思われます。
つまり、4月に昇給なしか1号給の停止だけということです。
また、勤務評定も悪くなるでしょうから、次回以降の昇給も1号給減らされることがほとんどです。
勤務評定が戻ることもあるでしょうが、それまで累計で何号給遅れることになるかわかりません。
そして、その遅れが退職金に反映されます。
服務義務違反に対する制裁制裁として相応の経済的な損失を受けることになります。
昇給が遅れ、さらに退職金も減ってしまうのです。
本件懲戒処分にかかる報道と公務員の副業
報道によると、この職員は非番の日に、親戚が経営する会社やその役員の庭の手入れなどの雑用をしていて、月3~8万円程度の報酬が職員の母親名義の口座に振り込まれていました。
請求者名義と振込口座名義が違うことが許されるとは思えないので、職員が母親名義で副業をしていたのでしょう。
ほとんど親族内でのやり取りなので、名義問題を明確にしていなかったのかもしれませんが、少なくとも職員は本人名義で報酬を受け取ることがまずいとわかっていたと思われます。
だから母親名義で報酬を受け取ることで職員名義での税務申告を回避、税務署から副業がばれることがないようにしていたのでしょう。
46歳男性の母親ですから、彼女自身に副業制限等があるとは思えません。
彼女が確定申告や納税等を適切にしていれば、税務署から職員の副業がばれることはほとんどありません。
職員はある意味合理的な行動をしていました。
公務員が副業を家族名義にしてもばれた理由
しかし、この職員の副業はばれてしまいました。
非常にお粗末な顛末で、です。
彼はなんと職場の公用パソコンで請求書を作っていました。
しかもそのファイルを残したままにしていたとのこと。
それを同僚に発見され、その同僚が管理職に報告して発覚しました。
副業がばれないように母親名義にしていたにもかかわらず、請求書を職場で作成して、しかもその証拠を残してしまっているのです。
あまりにもお粗末です。
同情も弁護もしませんが、なんて愚かなことをしたんだろうと呆れてしまいます。
公務員の副業がばれてしまえば懲戒処分
公務員が副業を家族名義にしていても、ばれてしまえばどうしようもありません。
無許可での副業、請求書作成したことによる職務専念義務違反、職場のパソコンの不適正使用による信用失墜行為が発覚し、これらにより減給1/10(3カ月)の懲戒処分を受けることになりました。
本件副業にかかる懲戒処分の留意点
この職員の副業がばれた顛末で気になることがあります。
同僚が管理職に報告して発覚
まず、発見した同僚が管理職に報告して発覚した、ということです。
その職員が職場のパソコンで請求書を作成したいたことがまずいのは確かです。
おそらくそれでも頻繁に行っていて、周囲も何となくわかっていたのでしょう。
そして証拠のファイルを発見した同僚が管理職に報告しました。
管理職も報告を受けて、その場で解決しようとせず担当部局に報告したのです。
公務の多くの職場では、不審な行動をとっている職員がいれば、まずは同僚が注意し、それでだめなら直属の管理職が指導しています。
よく言えば自律的に規律を維持しているのであり、悪く言えば悪事を隠ぺいしています。
ところが、この事例では同僚が管理職に報告し、管理職が担当部局に報告したように報道されています。
自律的な規律維持は図られていないようです。
ここで考えられるのは、
- これまでも繰り返し注意・指導があったがそれに職員が従わなかった
- 処分を受けた職員が職場で浮いた存在で誰からも守ってもらえなかった
のいずれかです。
おそらく前者であって、それでは外聞が悪いので、発見してすぐに処分があったと発表したのでしょう。
ただ、後者だった可能性もないわけではありません。
いきなり上司に報告する同僚や担当部局に報告する管理職もいないとは言い切れません。
もし、職場に内緒で副業をしているのであれば、ばれたとしてもいきなり管理職や担当部局に報告されないような、円満な人間関係を築いておくことが必要です。
円満な人間関係が最悪の事態にならないようにしてくれることもあるのです。
もっとも、職場に副業を持ち込むようなことをそもそもすべきではないのですが。
46歳男性係長という属性
また、46歳男性係長という属性も気になります。
このくらいの年齢の管理職ではない男性職員の中には、環境変化に非常に鈍い人が多いのです。
管理職であっても鈍い人も少なくはありませんが。
前時代の意識を引きずっている人がまだまだ残っていて、びっくりするような意識や行動をしていることがあります。
例えば、パワハラやセクハラの概念が理解できない、残業自慢、武勇伝等があります。
本件で言えば、現在46歳くらいの職員が入庁した当時は、パソコンがまだまだ普及しておらず、自宅で印刷できないことが普通でした。
職場もよく言えばおおらか、悪く言えば規律があいまいで、私事の印刷を職場でしている人も見かけた時代です。
処分を受けた職員はその当時の意識のまま職場で請求書を作成、印刷していたのかもしれません。
今では考えられないことですが、当時はそれですんでいました。
昔は許されていた、と思った方はそろそろ考え方を改めましょう。
陳腐な言い方かもしれませんが、時代が変わったのです。
職場で副業関連のことをやっていて許される時代はとうに終わっているのです。
公務員の副業は家族名義でもばれれば懲戒処分
公務員の副業は家族名義であったとしても、ばれたら懲戒処分の対象となります。
確かに家族名義にすれば、税務署ルートで副業がばれることはほとんどなくなります。
しかし、自身からばらすようなことをしたり、同僚に気づかれたりすればばれてしまいます。
家族名義にしてもばれにくくなるだけで、法令上の制限がなくなるわけではありません。
副業がばれれば懲戒処分の対象です。
公務員が副業をするのであれば、家族名義にする程度の慎重さをもって、日々の行動をしていくことが必要なのです。