公務員のアフィリエイトに関する公的に見解を出しているものがあります。
愛媛県松山市「わがまちメール」への意見とその回答です。

「わがまちメール」は、松山市の広聴活動の一つとして行われているもので、市政に関する意見・提言を受け付けています。
意見・提言等は、市長が直接目を通し、施策に反映されることもあります。
意見・提言等をした人が希望すれば、回答が公開されることもあります。


公務員(市役所職員)のアフィリエイトに関する公的見解

松山市「わがまちメール」によると

その中に市役所職員志望者からのアフィリエイトの収入についての意見、というよりも照会とそれに対する回答が公開されています。
断片では意味が損なわれてしまいますので、長くなりますが引用します

わがまちメール アフェリエイトによる収入

意見の内容
 今年から就職活動を行います。第一希望は松山市役所です。
 現在、ブログをしており、アフェリエイトによる収入が多少あります。公務員は原則として副業が禁止されていると思いますが、調べた限りでは、アフェリエイトによる収入(報酬)は、副業には当てはまらないかと思います。
 私にとって今後の職業選択の重大な部分になりますので、アフェリエイトによる収入が副業に当てはまる場合は、その根拠条文、条文解説、法に基づく取扱い等を合わせて教えていただけたらと思います。性別:男性
年代:20代
公開日:18年02月05日
公開番号:2353
全市 その他市政

意見に対する答え
 松山市職員は地方公務員ですので、兼業が地方公務員法第38条に該当する場合は任命権者の許可が必要となります。
 アフェリエイトが兼業に該当するか否かは、事案の形態や規模など、状況を具体的にお聞きした上で個別に判断することとなりますので、一概に判断することは困難です。
 また、地方公務員法での兼業に該当するとされた場合、「営利企業等の従事制限の基準等に関する規則」第3条に規定する許可の基準※にてらし、任命権者の許可を得れば実施可能です。
 なお、詳細は人事課にお問い合わせください。

※許可の基準
次のいずれかに該当する場合は許可されません。
(1) 職務の遂行に支障をおよぼすおそれがある場合
(2) 企業、事業又は事務が職務又は勤務する機関と密接な関係にあって特別な利害関係を生じるおそれがある場合
(3) 企業、事業又は事務の性質上これに従事することが公務員として適当でないと認められる場合

松山市「わがまちメール アフェリエイトによる収入」 https://www.city.matsuyama.ehime.jp/wagamachi/detail/2353.html

松山市職員はアフィリエイトができるかも

「わがまちメール  アフェリエイトによる収入 」 からわかるのは、

  • アフェリエイトが兼業に該当するか一概に判断することは困難
  • 事案の形態や規模などにより個別に判断する
  • 兼業に該当すれば任命権者の許可が必要
  • 次のいずれかに該当する場合は許可されない(許可基準)
    • (1)職務の遂行に支障をおよぼすおそれがある場合
    • (2)企業、事業又は事務が職務又は勤務する機関と密接な関係にあって特別な利害関係を生じるおそれがある場合
    • (3)企業、事業又は事務の性質上これに従事することが公務員として適当でないと認められる場合
  • 詳細は人事課に問い合わせ

アフィリエイトが兼業に該当しない場合もあり、任命権者の許可を得なくてもできることがあると読めます。
また、公務員であっても許可基準を満たせば、任命権者の許可を得てアフィリエイトをすることもできそうです。

公務員(市役所職員)のアフィリエイトがすべて認められるわけではない

だからといって、直ちににすべての公務員(市役所職員)のアフィリエイトが認められることにはなりません。
この意見には前提があります。
それは、すでにアフィリエイトを行っている市役所職員希望者が松山市に対してした意見であるということです。

市役所職員希望者への回答

意見者は市役所職員ではない

意見者はすでにアフィリエイトで収入を得ており、市役所職員がアフィリエイトをしているわけではありません。
意見者は公務員ではないので、地方公務員法第38条が適用されることはありませんから、アフィリエイトをすることを制限されません。
兼業に該当するか、任命権者が許可するかは、市役所職員として採用されてはじめて問題になるものです。
採用時に、すでに行っているアフィリエイトについて判断を仰ぐことになります。

人事課に問い合わせが必要

これに対して、市役所職員がアフィリエイトをはじめるなら、はじめた時点、ASPに申請等した時点で問題になります。
アフィリエイトが兼業に該当するか、任命権者が許可するかを、開始時から人事課に問い合わせる必要があります。
ただ、開始する時点で形態や規模等を把握することはできませんから、人事課もおそらく回答できないでしょう。
だからといって、問い合わせないまま形態や規模等が任命権者の許可を要するほどになっていた場合には、無許可でアフィリエイトをしていたことになり、懲戒処分の対象になります。

結局、市役所職員がアフィリエイトをはじめることは相当困難なものになります。

松山市の回答

また、この意見と回答は松山市に関するもので、他の自治体を拘束するものではありません。
建前上は地方自治体はそれぞれの判断で組織を統治するものです。
職員の任用はそれぞれの自治体の権限で行われます。
したがって、松山市が一定の判断をしたからといって、他の自治体がそれに従わなければならないわけではありません。

もちろん、実態上は他の自治体の判断を参考にしますし、まったく違った判断をすることは多くはないかもしれません。
しかし、松山市がアフィリエイトを認める判断をしたからといって、ただちに他の自治体でも認められることにはなりません。

一般的に東日本より西日本の方が、都道府県レベルよりも市町村レベルの方が兼業等に関して柔軟な対応をしているようです。
松山市の判断が全国的なものと考えるのは難しいのではないでしょうか。

松山市職員希望者ならアフィリエイトを続けられるかも

この意見と回答でわかるのは、現在アフィリエイトで収入を得ている人は、松山市職員になった後もアフィリエイトを続けられることがある、ということです。
松山市職員以外の公務員が許可を得ずにアフィリエイトをしているのがばれた際に、松山市ではこのように回答している、といった言い訳をしても通らないでしょう。
むしろ、それぞれの自治体の「営利企業等の従事制限の基準等に関する規則」違反を反省していないとみなされ、マイナスの印象を与えてしまうでしょう。

公務員(市役所職員)には行動が必要

余談になりますが、本件の意見者はかなり優秀なのではないでしょうか。
普通に調べれば、アフィリエイトは「自ら営利企業を営むこと」に該当し、任命権者の許可を得なければできないとなるでしょう(地方公務員法第38条)。
普通の市役所志望者であれば、採用に不利になる要素はなくそう、ばれないようにしようと消極的に動くでしょう。

しかし、この意見者は積極的に行動しています。
自分の意見を通すために、調べた限り副業には当てはまらないと、普通に考えとは異なる意見をぶつけています。
そして個別の事情によっては任命権者の許可が不要であるとの当局の回答を引き出しています。

要点のみしか公表されておらず、詳細はわかりません。
確かに、何を調べたのか書かれていない、「アフェリエイト」は一般的な表記と異なっている、そもそも意見ではなく制度の目的に反するのではないか、といった疑問はあります。
また、アフィリエイトが副業に当たらないという意見自体は却下もされています。

一見すると愚かな行動かもしれません。
もちろん、本当の職員であれば、こんな無理な意見を通そうとしていては無能と呼ばれても仕方がないレベルです。

ただ、積極的に行動することによって、意見の一部を例外として当局に認めさせています。
行動して結果につなげる態度は評価されるべきでしょう。

この意見者は松山市職員になれたのでしょうか。
気になります。