公務員の副業に関する動きが活発です。
公務員でもできる副業は具体的にはどんなものなのか?公務員でもできるおすすめの副業について書いていきます。
目次
公務員でもできるおすすめの副業
兵庫県神戸市の新制度や奈良県生駒市の新基準の制定、「未来投資戦略2018」の閣議決定と、公務員の副業に追い風となるような流れがあります。
時代の趨勢は副業解禁の方向にあるのは確かでしょう。
公務員でもできるおすすめの副業は株式、FX、不動産投資
まずはじめに結論を言ってしまいます。
公務員でもできるおすすめの副業は、次のとおりです。
- 株式(インデックス投資を含む)、FX
- 不動産投資
その他、公務員に向いているけれどおすすめできないアフィリエイト
以下、理由をお伝えします。
1.株式(インデックス投資を含む)、FX
公務員にも合法的にできる副業の筆頭です。
そして株式投資は投資の王であり、財を成した人の多くは株式取引で儲けています。
投資家のウォーレン・バフェットはもちろん、ジェフ・ベゾフもビル・ゲイツもマーク・ザッカーバーグも財産の中心は株です。
あなたが十分な資金をもっているならば、株式投資を始めるのがいいでしょう。
では、あなたは十分な資金をお持ちでしょうか?
FX(外国為替証拠金取引)は、また、レバレッジを利用することで、比較的少ない資金でもはじめることができます。
ただし、外国為替市場は機関投資家の戦場ですから、継続的に利益を得るには外国為替への相当な知識と経験が必要になります。
暗号通貨(仮想通貨)は通貨流失等取引所の問題があり、一時ほどの勢いはなくなっています。
投機色が強く、旬を過ぎた感もあり、優先順位は下がります。
いずれにせよ、副業とするにはある程度余裕のある資金が必要です。
2.不動産投資
条件が付きますが、不動産投資も公務員が合法的にできる副業です。
不動産は地域性が強いことから、地域のことをよく知る地方公務員に有利です。 一定規模未満であれば、 内閣総理大臣等または任命権者の許可 を受けずにおこなうことができます。
ただ、不動産投資は比較的大きな初期投資が必要です。
また、利回りが低いのも問題です。
一般財団法人日本不動産研究所のデータでは、不動産投資(賃貸住宅一棟・ワンルームタイプ)の期待利回りは東京都4%台半ば、おもな政令指定都市で5~6%程度です。
空室等のリスクや金利上昇、地価下落のおそれを考慮すると、現状では魅力はそれほど大きくないでしょう。
1の株式、FX以上に余裕のある資金が必要です。
公務員の副業にアフィリエイトは向いているけれど
普通の公務員が最も取り組みやすく、実行可能性の高い副業です。
必要なのはインターネットにつながっているパソコンのみ、資本0でもはじめられます。事務仕事でパソコンが使えていれば、はじめるだけの知識は十分です。
また、文書作成能力はアフィリエイトに不可欠ですから、文書作成に長けた公務員には有利です。
また、他のネットビジネスは労働集約的なものですが、アフィリエイトは異なります。この点も副業としての利点といえるでしょう。
ただし、自己の名義でアフィリエイトを行うことは国家公務員法や地方公務員法の規定に反することになります。
公務員の副業制限規定と副業の範囲
さて、ここまで普通の公務員が実際にできるかどうか、という視点で見てきました。
では、副業制限に関する規定との関係ではどうなっているでしょうか。
公務員の副業を制限する規定
公務員にとっては当然の話で退屈でしょうが、お付き合いください。
法文上「副業禁止」という文言はありませんが、公務員の副業を制限する規定は次のとおりです。
国家公務員法
国家公務員法 | |
§103(私企業からの隔離) | 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。 |
第2項 | 前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。 |
§104(他の事業又は事務の関与制限) | 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。 |
国家公務員法の副業制限の説明
§103 | 営利企業役員× 営利企業を営む× |
第2項 | 人事院の承認→○ |
§104 | 内閣総理大臣等の許可がない⇒ 報酬を得て役員× 報酬を得て従事× |
(言い換えると) 報酬を得て役員または報酬を得て従事⇒ 内閣総理大臣等の許可が必要 |
「営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体」とは、商業、工業、金融業等利潤を得てこれを構成員に配分することを主目的とする企業体をいう。会社法上の会社のほか、法律によって設立される法人等で、主として営利活動を営むものがこれに該当します
「自ら営利企業を営むこと」とは、職員が自己の名義で商業、工業、金融業等を経営する場合をいいます。
なお、名義が他人であつても本人が営利企業を営むものと客観的に判断される場合も該当します。
国家公務員は、営利企業等の役員等との兼務及び自ら営利企業を営むことが制限されます。
ただし、国家公務員法第103条第2項で「前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない」とされており、人事院の小児を得た場合には 営利企業等の役員等との兼務及び自ら営利企業を営むことができます。
そして報酬を得る営利企業以外の団体等の役員等との兼務、事業・事務への従事には内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可が必要です。
つまり副業が制限されています。
地方公務員法
地方公務員法 | |
§38(営利企業等の従事制限) | 職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない |
地方公務員法の副業制限の説明
§38 | 任命権者の許可がない⇒ ・営利企業役員になる× ・営利企業を営む× ・報酬を得て従事× |
(言い換えると) 営利企業の役員になる、営利企業を営む、報酬を得て従事⇒ ・任命権者の許可が必要 |
地方公務員は、任命権者の許可を受けなければ、営利企業等の役員等との兼務若しくは自ら営利企業の経営または報酬を得る事業・事務への従事が制限されます。
つまり、副業が制限されています。
承認または許可がなくてもできる副業はあるか?
人事院の承認または任命権者の許可がなくてもできる副業は、 自ら営利企業を営むことに該当しない場合と報酬を得ない場合です( 営利企業等の役員等との兼務については別に考えます。)。
ただし、それぞれに細かい制限があります。
自ら営利企業を営むことに該当しない場合
まず、投資は自ら営利企業を営むことに該当しません。
株式、FX、先物等、これらは大丈夫です。
ただし、不動産投資は不動産賃貸として取り扱われるため、一定規模以上の場合には人事院の承認または任命権者の許可 が必要です。
営利を目的としない小規模農業等、一定規模未満の太陽光電気の販売も自ら営利企業を営むことに該当しません。
自ら営利企業を営むことに該当する規模
一 農業等 | 大規模に経営され客観的に営利を主目的とすると判断される |
二 不動産賃貸 | 次のいずれかに該当 |
1不動産の賃貸 | 次のいずれかに該当 ・独立家屋の数が5棟以上または区画の数が10室以上(いわゆる5棟10室基準) ・土地の賃貸契約の件数が10件以上 ・劇場等の娯楽集会、遊技等の設備がある ・建物が旅館、ホテル等特定の業務用途 |
2駐車場 | 次のいずれかに該当 ・建築物または機械式 ・駐車台数が10台以上(いわゆる10台基準) |
3賃貸料収入 | 年額500万円以上 |
4その他 | 1,2と同様の事情にあると認められる |
三 太陽光電気の販売 | 設備の定格出力が10キロワット以上 |
(詳細は「 人事院規則 14―8 (営利企業の役員等との兼業) 」及び「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」)
報酬を得ない副業
次に、報酬を得なければ承認または許可は不要です。
法文上報酬の定義はありません。
この点、行政法の通説的には、報酬とは、労務、労働の対価として支給あるいは給付されるもので、経常的なものであるものと一時的なものであるものを問いません。
ただし、たとえば講演料、原稿料、布施、車代等のように謝金、実費弁償に当たるものは報酬に含まれないとされます。
講演料や原稿料、お布施を得る分には許可がなくても副業ができそうですが、あくまで謝金、実費弁償の範囲です。
セミナーの講演料やライター業の原稿料は謝金とはいえませんから、報酬に含まれます。職業作家の原稿料も謝金ではありませんから報酬です。
宗教家以外がお布施を受け取ることも報酬になるでしょう。
継続して生業とするにはこれらは力不足でしょう。
許可がなくてもできる副業
結論として、許可がなくてもできる副業に値するものは、
- 投資(一定規模以上の不動産投資を除く。)
- 営利を目的としない小規模農業
- 一定規模以下の不動産賃貸経営(不動産投資を含む。)
- 一定規模以下の太陽光電気の販売
だけです。
副業の承認または許可は得られるか
条文を読む限り、副業をするなら人事院の承認または任命権者の許可を得ればいい、と読めます。
では、その承認または許可は得られるでしょうか?
承認または許可されるのはあらかじめ決められたものだけです。
次の表に掲げる事業については、表に掲げる規模以上のものであっても、申請することによって 承認または許可を受けることができます。
自ら営利企業を営むことに該当する規模
一 農業等 | 大規模に経営され客観的に営利を主目的とすると判断される |
二 不動産賃貸 | 次のいずれかに該当 |
1不動産の賃貸 | 次のいずれかに該当 ・独立家屋の数が5棟以上または区画の数が10室以上(いわゆる5棟10室基準) ・土地の賃貸契約の件数が10件以上 ・劇場等の娯楽集会、遊技等の設備がある ・建物が旅館、ホテル等特定の業務用途 |
2駐車場 | 次のいずれかに該当 ・建築物または機械式 ・駐車台数が10台以上(いわゆる10台基準) |
3賃貸料収入 | 年額500万円以上 |
4その他 | 1,2と同様の事情にあると認められる |
三 太陽光電気の販売 | 設備の定格出力が10キロワット以上 |
(詳細は「 人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業) 」及び「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」)
国家公務員の場合、人事院の承認は「職務の遂行に支障がないと認められる場合であって法の精神に反しないと認められる場合として人事院が定める場合のほかは、法第103条第2項の規定により、これを承認することができない。 」となっており、表に掲げるもの以外の承認は極めて限定的です。
地方公務員の場合、自治体にもよりますが国公準拠ですから、同様でしょう。
将来公務員の副業が解禁され、規則等が改正されば別ですが、現時点では許可を取ることはできません。
少なくとも某自治体ではありえないことです(照会済)
公務員が合法的にできる副業
以上から、公務員が合法的にできる副業をまとめると次のとおりです。
- 投資
- 謝金としての講演料・原稿料しかもらわない講演家・作家
- 農業等(営利目的の大規模農業等は要許可)
- 不動産賃貸経営(不動産投資を含む。一定規模以上は要許可)
- 太陽光電気の販売( 一定規模以上は要許可)
どうでしょう?現実的にあなたが行えるものがあるでしょうか?
【思考実験】ばれない公務員の副業はあるか
普通の公務員ができる副業はない、で終わらせてもいいのですが、もう一歩思考実験を進めます。
公務員がやってもばれない副業は何か?について考えます。
副業がばれるルート
公務員に限らず、副業がばれるルートは大体決まっています。
- 税務署ルート
- 内部告発ルート
- 自己申告ルート(口を滑らした場合も含む。)
の3つです。
官庁や自治体の独自調査でばれることもありますが、普通に勤務していて当局にマークされていない職員が調査されることはほとんどありません。
当局はそれほど暇ではありません。
ばれないようにする方法はなくはない
内部告発と自己申告は慎重に行動すれば避けられます。
残るは税務署ルートで、これもしっかり対策をすれば避けられます。
こうした対策をすれば、副業をばれずにすることができます。
また、一部のアフィリエイトであれば副業にならない状況を作ることも不可能ではありません。
もちろん、こうした思考実験的な「グレー」なやり方を押し付けるつもりはありません。
本業あってこその副業ですから。
公務員の副業解禁をただ待つのか
時代の趨勢は副業解禁の方向にあるのは確かです。
しかし、1、2年で公務員の副業が解禁される状況ではありません。
やりたいのは公益かつ無報酬の活動ですか?
公益的かつ無報酬の活動が副業に認められただけで騒いでいるのが「公務員界」です。
報酬が得られる副業解禁がすぐにやってくると見るのは楽観的にもほどがあります。
むしろ揺り戻しが起こるおそれすらあります。
基準が明確になった以上、これまでグレーであった部分の取り締まりを強化する団体だって出てくるでしょう。
幕末だって、開国が時代の趨勢であったにもかかわらず、蛮社の獄やら安政の大獄やら逆行する動きがありました。
長期的な流れの中で起こる短期的な揺り戻しは歴史の必然です。
「お利口さん」であれば、公務員の副業に手を出すのは解禁されるまで待ちましょう。
今までと変わらない生活を送るべきです。
変わらない生活は本当に続くのか?
でも、今までと変わらない生活は本当に続くのでしょうか?
公務員の生活保障は確実に、どんどん無くなっていきます。
昇給カーブもどんどん抑えられます。
退職金だって今の支給率が維持される保証はありません。
年金に至っては70歳支給、場合によってはそれ以降になるかもしれません。
福利厚生だって毎年のように削られていきます。
安定の生活を本当に信じられますか?
怖いのは制度破綻後の副業解禁
最も怖いシナリオは、公務員の生活を保障する制度が破綻して、それと引き換えに副業が解禁されることです。
ある日突然自分で稼いで来いと放り出されるのです。
あり得ないシナリオだとお思いですか?
高々140年ほど前の日本でも実際にそんな事件が起きました。
明治9年(1876年)の秩禄処分です。
士族という名は残りましたが、わずかな一時金と引き換えに多くの武士が失業しました。
一部は軍人や官公吏になることができましたが、約2/3の武士が没落したといわれています。
黒船来航(1853年)からわずか23年後の出来事です。
動き出すなら早いほどいい
実際、もう準備をはじめられている方がたくさんいます。
周りに気がつかれないように、ばれずに副業をしています。
慎重に準備をしているのです。
「お利口さん」が、解禁されてからあわてて副業をはじめるのを見て、彼らは嘲笑うでしょう。
「何をいまさら」と。
少々脅かしすぎたかもしれません。
確かに、いきなり明日すべての生活保障の制度が破綻することはないでしょう。
でも、10年前に比べて生活保障の制度が充実したかと言われればどうでしょう?
少しの保険くらい持っていてもいいでしょう。
公務員の副業を「福業」に
まずはアフィリエイトの仕組みを理解してみてはいかがでしょうか?
学ぶことは悪いことではありません。
役所以外の世界を知れば本業にも役立つこともあるでしょう。
副業は人生に彩りを与えてくれます。
副業が「福業」になるのです。